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誰が船長なんだって! 1

 水縄山地から飛び立った移民船は幾つかの避難所へ向けて移送船を下ろし、同行を希望する地球人の救助活動を行いながら暗い宇宙へと上昇して行く。

 アイリーンの仲間たちと認識されている翔と宣子さんは殺風景な広い個室に招かれロボットタヌキの姿に戻った案内役より細かな説明を受けていた。

「ここまで上昇すると日本列島が一望できるのね」

 信子さんはロボットタヌキの発する言葉の内容を理解するのが難しく、これから更に長くなりそうな説明を聞きたくなくて、そっと立ち上がってトイレに行く素振りを見せ丸い窓から地球を眺め一人呟く。

(どうしても夢を見てるとしか思えないのだけど、タヌキが喋る話しを聞きながら宇宙船の中から日本列島が海に削られ沈んでいく様子を眺めてたり、翔ちゃんがロボットタヌキの意味が分からない話を真剣に聞いて相づちを打っているのって何か落ち着かないのよね、夢なら早く覚めてくれないかしら)

「今の高度は1435㎞です。国際宇宙ステーションの3.5倍の高さです」

 ロボットタヌキは質問された訳ではないのに、話を聞いてくれなくなった宣子さんに対して返事をする。

 中学校のグラウンドで翔と宣子さんの両親が一緒になって他の皆に『この宇宙船に乗って安全な場所へ避難しましょう』と説得して回ったのだけど誘いに乗って来たのは18世帯63人しかいない。

 グラウンドには200人からが集まっていたので半分以上の人が残ることになった。

 残留者の主だった理由は、地元を離れたくないが一番多くて次が宇宙人のところへは行きたくないとか、自衛隊の救助を待った方が絶対安全だの順になっている。

 水縄山地の移民船は遥か昔、この地に定住することを決めた宇宙人が遠い未来に地球を離れる時のために建造して人類から隠すようにカムフラージュしていたものだから『管理ロボットはいるけどエイリアンはいないよ』と言っても聞いてくれる人はいなかった。

(地球上の何処にもエイリアンは住んでいないって説明したのだけど、誰も信じて貰えなかったのは悲しいことよね)

 そんな理由で水縄の移民船は格納していた12隻の移送船で日本中の避難所を回り23の避難所から誘いに応じて来た3032人とそれぞれの地区担当支部員40人が乗船しているけど定員8000人に対しては半数にも達していない。

「宣ちゃん日本列島沈没って映画かあったよね、こんなんだったかなぁ違うかな…」

 翔は宣子さんの傍へ歩いていき一緒に小窓を覗き込みながら話し掛ける。

 翔と宣子さんはだだっ広い部屋の中央に置かれたリビングセットのソファーに座ってロボットタヌキから話を聞いていた。

 そもそも地球人が今回の事態に陥った根本的理由から今後宇宙人として宇宙で生きていくための心得に至るまで中学2年生の2人にとっては、あまりにも哲学的に難しい内容で話し出されたので直ぐに宣子さんが離脱する。

 翔はいつもの授業と同じ要領で分かった振りをして頷いていたのだけど、今はリタイアして宣子さんと手を繋いで窓辺に一緒に立っている。

 今いる部屋は正面の壁1面がモニターになっていて、日本列島の映像がリアルタイムで映し出されているらしい。

『らしい』と表現したのは見るのも無惨な状況なので正直には信じたくないからだ。

「津波による日本列島の破壊が行われています。このあとも引き続き大陸の方まで破壊と浸水を…」

 ロボットタヌキが手を繋いで立っている翔と宣子さんの前に回り込んで聞きたくもない説明を始めた。

 宣子さんのすすり泣く様な声が聞こえたので説明を中断する。

 そのまま前方を向いて置物の様に2本足で立ってるけど笠と一升瓶は持ってなく、その代わり手にはリモコンが握られていた。

「このリアルタイム映像はお2人の精神衛生上あまり好ましいものではないと判断されますので切り替えますね」

 モニター画面が地球の全体像に切り替わり破壊の詳細は見えなくなる。

 その代わり太平洋の真ん中にポッカリと黒い穴が空き海と陸の境界線が筆タイプの修正液で擦った様にあやふやで白い。

 その光景を見て考えを巡らすと今までの映像以上に恐ろしくなり2人は同時に身震いをする。

 ロボットタヌキがお節介な程2人の会話に割り込んできて煩わしいのだけど『これからはナビゲーターとして、片時も離れる事なくお側でお仕えさせて頂きます』と挨拶されているので半分くらい諦めていた。

「翔ちゃん映画館で見た日本沈没は地震による沈没だったでしょう、あの時に言ったと思うけど私はパニックものとかオカルトものは嫌いなの、でも今は生き残った人の義務として見なければいけないと思うわ翔ちゃんはどう思ってる」

「このライブ映像は録画されて…」

 ロボットタヌキが更に説明を追加してこようとしたとき。

「タヌキさんは少し黙ってて!」

 宣子さんがピシャリとした口調で制止する。

「見てないといけないんじゃないかとは思うけど見たくないよ~、絶対シカウマになってしまうよー」

「トラウマ…」

 タヌキがボソリと素早く言って直ぐに黙り込む。

「ゴホッ、それじゃあタヌキさん他にはどんな映像が見れるのかしら」

 宣子さんは誤魔化しの咳払いをひとつしてから尋ねた。

「ボクのことはミニトレナナハンライダー31と呼んでください」

(一体なんなのよー、このタヌキは名前ばかりにこだわってるくせに毎回違う名前になってるし…31って何かしら)

「わかったわ、サティと呼んで欲しいのね」

「ワンも付けてくらたら大正解でしたのに」

(最初からそう言えばいいじゃない思考回路が中2…いえ、ややこしいロボットなのかしら)

「そう、それでサティワン他にはどんなものが見れるのですか」

「リアルタイムが良ければカメラの投影範囲でとなりますね、その中でお勧めできるものは救助活動の様子とかいかがですか」

「まだ移送船での救助が続いている所があるの」

 宣子さんはまだどこかの国の移民船は救助活動を続けているのだろうかと思う。

「いいえ、どの移民船も救助活動はしてないです。今は連盟艦隊が取り残された人々の救助を行っています。主に飛行中の航空機を丸ごと回収したり地下や高山とか宇宙ステーションの人たちとかをですね、磁気ネットで絡め取って戦艦に回収してます。連盟艦隊のアリオン艦長は助けを求めている人を見殺しにはできないと考えているみたいです」

 画面は単独行動で救助活動をしている1つの艦を映し出す。

 だけどこれをよく見るとゲーム画面宜しく下に[旗艦アリオンLv99日本富士山上空]と説明文が表示されている。

 宣子さんは翔の顔を見て反応を伺っているけど突っ込みを入れるだけの元気が残ってない。

 翔は宣子さんの表情を見て開きかけた口を閉じた。

(ここで期待通りの事を言うとタヌキが嬉々として喋り出すんだろうなぁ、何て言い出すのか聞いてみたい気がするけど、今はこっちを優先させないとダメだよな)

「ねえタヌキさっきから僕たちをここに引き留めているけど、父さんたちの所へ行くことはできるんだよね」

「サーティワンとお呼び下さい。そしてもう少し待って貰えますか、現在当船居住区は3000人からの避難民に対して、40人の支部員で整理と最終説明を行っている最中でごった返しています。空間的スペースには問題がないのですけど皆さんは本能的に密集体形を取っていて危ないかも知れないので遠慮して欲しいです。それからお二人にはここを居住スペースとして使って頂きますからご両親と一緒には住めないです」

「へっ?」

 宣子さんがすっとんきょうな声を上げる。

「今、何て言ったのかな本当にサティワンの言うことは理解しにくいものばかりだわ、翔ちゃんもそう思わない」

 翔は昴と繋がったお陰でなんとなく分かるような気がしたが説明が面倒なので全部タヌキに任せるつもりでいた。

  だから肩をすくめて見せる。

「ご心配なくプライベートは守られるように完全防音パーテーションで仕切りますのでレイアウトを考えておいて下さい、後で図面化しましょう」

「どうしてなんですか?!」

 宣子さんは嫌な予感しかしなくて理由を聞かずにはいられない。

「翔さんにはこの船の船長になってもらいます」

(やっぱりな、ここに通された時点でなんとなくこうなる予感してたんだよな、でも宣ちゃんは納得しないだろうな)

「どうしてなんですか!他の支部員とか適切な人がいるでしょう。翔ちゃんには絶対無理よ」

 宣子さんは何かの間違いでこうなっている筈なのだろうから早目に修正しなければ大変なことになると思い必死な状態になっている。

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