幼馴染み 2
オビス司令官からアイリーンの名前を聞いたアリオン艦長は訝しんだ。
(だいたいアイリーンはスターキッドと共に死んだんじゃなかったのか、何で今このタイミングで出てくるのかな)
『信じたくはないだろうけどさ、でも11年前の宇宙人狩りで地球人の手に落ちたと思われていたスターキッドが突然M78の前に現れてアイリーンと共に天王星宙域で逃げられたのが5年前だ、あのあと直ぐC2に向かったとしたら時間的な都合はつく何故だかは分からないけどな』
『あの時の母船M78のタロウ艦長は報告書に「アイリーンは船内で軟禁状態にありました」と書いてましたよね。さっさと拘束しとけば良かったんですよ』
『アリオンよお前が同じ立場だったらあの可愛らしいアイリーンを拘束出来たかい、私にはとても無理な話しだ拘束して牢に入れるなんてとてもできない。だいたいあの指名手配の理由もかなり胡散臭かったぞ「地球人の工作員で基地の研究施設を破壊して逃亡中」なんて言ってたけど初めて基地に来た時、彼女は4才じゃなかったかなそれでも天才(災?)であることには間違いなかったけど、それから5年間基地で生活してあの無邪気さで立入禁止も何のそのほとんどの施設に入って誰彼構わず話し込んでいただろう、私は彼女がその気になったら基地を乗っ取る事も可能なんじゃないかと本気で思ってるよ』
『それは過大評価なんじゃない、だいたい地球防衛基地メインコンピューター・アシュラの防衛網は…?』
アリオンの表情が固まった。
『気が付いた様だね、そうスターキッドの完全人形外部端末のバイオロイドはアシュラが造ったと言っても過言ではない』
『それはもしかしなくても非常にやばくない、アシュラ、バイオキッド、スターキッド、アイリーンって一蓮托生じゃない本当に危なかったんだね、え~っと今も行方がわからないのはバイオキッドだけか、もしかしてC2の移民船に乗っていたとか』
『多分そうだろう、だから助けに行ったんだと思うよ、幸いなことに人的被害は報告されていないのが救いだな。廃棄処分になってもおかしくない様な老移民船M08と積荷の盗難だ、第一報では墜落したとあったんだが、残骸の確認に行った時に墜落の偽装が判明したらしい。それで積荷の中に何があったかが問題なんだけど分かるかい、ヒントは年代物のM08を廃棄処分に出来ない理由は何だと思う』
『そんなー、なぞなぞみたいな質問は僕は嫌いだね答えたくないよ』
『少しは脳ミソも使わないとシワが無くなるよ、士官学校の歴史で習ってるんだから覚えてるはずだ』
『そんな80年も昔のことなんか覚えてないよ、それも一番面白くない士官学校時代なんか思い出したくもないね、オビスはいろいろな事を考え過ぎだよそんなんだったらあと100年もしない内に髪の毛が1本も残っていないと僕は予言しておくよ』
オビス司令官は遺伝子学的には147光年先で光っているおうし座ヒアデス星団イプシロン星固有名アインにあるM型母船団の出身で、そこの平均寿命は300年である。
アリオンの血筋も同じく246光年先のイルカ座18番星ジムカにある惑星アリオンで平均寿命は350才でオビスより長い。
地球人から見たら2人とも長寿と思われるが、宇宙人にとっては平均的な寿命で地球人の短命さは全てに於いて致命的であると結論付けされている。
一部では欠陥種族とまで言われ人類排斥運動の一因にもなっていた。
『問題は髪の毛の話じゃない。そこじゃなくあの移民船には永久監獄に入れられた『リバイアサン』もコールドスリープされた状態で乗っていたんだ』
『あれはおとぎ話じゃなかったのか東の辺境宇宙連盟が太陽系に進出した時の親睦会で行われた格闘技大会の優勝者海王族のリバイヤサン、優勝者に与えられた賞品のタイムトラベルで過去に行ったのはいいけれど、何故かアトランティスとムー大陸を海に沈めた挙げ句、犯罪者になって大暴れしたと言われた人物だったよな』
『そうだ、太陽系に来て超能力に目覚めた海王族の始祖が最初に起こした事件だし、東域宇宙連盟が最初に犯した大失態にもなっている。おとぎ話じゃないからなそんなんでよく卒業できたと思うよ。彼は最後の力で南極大陸に行き力尽きようとしたところでタイムパトロールに捕まりコールドスリープさせられそのまま冷凍監獄として封印された。C2へ地球人の移民が始まった時に移民船M08に封印されたまま乗せたのはいいがそこで下ろされなかったんだ、それはそうだろうC2を管理するのは私の先祖アイン星人だったのだから。海王族のお荷物は自分達が管理している海王星に持って行けとなったのだが、海王星は鎖国中で近寄れなかったらしくてM08から下ろされないままになっている。他にも諸事情があるけど今は説明の必要はないだろう』
オビス司令官は一気に喋って喉が渇いたのだろう、おもむろに立ち上がると冷蔵庫まで行って中から缶ジュースを2本取り出すと1本はアリオンに投げ渡して自分の手に残ったのを飲み始める。
アリオンは只のジュースじゃないだろうと疑いながら成分表を見てその中にアルコール分1%未満の文字を発見した。
『そのコールドスリープされたリバイアサン?だったかな…幼い頃何かで聞いたような名前だけど、それが移民船ごと消えたと言うんだね…バイオロイド、スターキッド、アイリーン、リバイヤサン、ドクターイノマンの構図が出来上がってしまったよ、ねえこれって凄くヤバくない』
『だから君を呼んだんだ何とかして欲しい』
『ムリムリムリ!こっちはドライアイスメテオ作戦がやっと計画に乗ったところだよ、ギリギリの人員でやってるんだからな、人手なんて割けないのは分かっているだろう』
『基地の守備に2艦隊だけ残して他は連れて行っていいから』
『そんな事をしたらここが手薄になってしまうじゃないか、帰る場所が無くなるのは嫌ですよ』
『だから残すのは不死鳥艦隊と泥亀艦隊にする』
『艦隊随一の特攻突撃艦隊と隠密守備艦隊だねそれなら無敵かも知れない分かったよ、それで攻めるにしても守るにしても行動を起こすのは僕のところに正確な情報が入った時でいいかな僕の方から当てもなく探しには行かない…だよ』
『それで十分さ話は終わったんだが…これから飲みに行かないか?』
『はあ? 君はまだ仕事中だろう机の上に書類が残っているじゃないか』
オビス司令官はそそくさと書類の山を机の引き出しに仕舞い込んだ。
『これで良しっと、君も言ってたじゃないか「仕事の遣り過ぎは髪の毛を失う」って私は年を取ったらロマンスグレーになる予定なんだ、それに滅多に会えない旧知の友が来たんだから今日は早退するよ実は既に予約をしてあるんだ。1件目は昔2人で良く行った居酒屋赤提灯だよ懐かしいだろ』
『いや全く君らしいと言っていいのかどうか、そして1件目と言うからには次つぎとハシゴするんだろうな…昔みたいに』
(いや、まさかとは思うけど酒が飲みたいばかりに僕を呼んだんじゃないだろうな酒は僕より弱かったはずだから後で問い詰めてみよう)
人工惑星の地球防衛基地の居住施設は全て内側にあるためここから直接太陽を眺めることはできない。
2人は建物の外に出て四六時中明るい人工天球の下を歓楽街へ向かって歩き出す。
地球防衛基地の歓楽街は射光調整アーケードに覆われて人工天球の明るさを程好い照度になるように調整されている。
アリオンはオビス司令官に引っ張られて5件目の店を出た所だった。
『そろそろ帰った方が良くないかいオビスは明日…いや、今日も仕事でしょう』
『今度の店で最後にしよう、今度こそ本当に最後にするから』
既に同じ台詞を3回も聞きながら辿り着いたこれで最後と言っている店は階段をワンフロワー下りた地下にあった。
階段の突き当たりにドアノックの付いた古風な木目の扉があってオビスがコン、コン、コンと3回ノックすると『いらっしゃいませ』と低く落ち着いた声が返ってくる。
『おうし座のオビスがイルカ座のアリオンを伴って混沌たるオアシスに苦水を求め来るのを叶えたらん』
(えっ今のは何、アニメを見過ぎてる人が言うような台詞は誰が言ったのかな?)




