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巨大パフェ 2

 4人の視線がこの場所て唯一自称ジャーナリストを名乗ったピエロに集まる。

 ピエロは1つ肩をすくめて見せてから解説を始めた。

「ここは元々が観光地です。さっきも言ったように巨大なドライアイスの塊を地球に落とす計画が実行されようとしています。先程の掲示板に張り出されてるのでみんな知っていますし、もっと間近で観るための観光ツワーまであります。この作戦を阻止しようとする勢力がここに来れば宇宙大戦争の幕開けになるかも知れません。敵となる勢力が来なければ地球の青い海が大陸を飲み込んで行く光景を目の当たりにして、その後ドライアイスの熱量で全てが凍っていく様子を見る事ができるでしょう。どちらにしても千年に一度あるかないかの宇宙一大イベントになることには間違いないですね」

 アイリーンは冷ややかな目をしてピエロの顔を眺めている。

「アイリーン辛でしょうけど我慢して下さいね」

 新月さんが目に涙を溜めて話し掛けてきたけどアイリーンの表情は変わらないまま、首を横に振った。

(新月さんの涙は悔しいからなの?悲しいからなの?違うのよ新月さんうちは悲しくも辛くもないの、心の中で『ああそうなのね皆死んじゃうんだ』としか思わないのよ、ママもウオンさんも死んでしまうのに悲しくならないし怒りも湧いて来ないわ)

「アイリーン聞き分けるんだ今回は戦闘以外の対応策を考えよう」

 アイリーンが首を横に振ったのを見た九論が新月さんの言葉を否定したと思って優しく諭す。

「昴くんあまり泣かないのよ、アイスクリームを一口でも良いから食べなさい気持ちが落ち着くから」

 新月さんがアイリーンの横でポロポロと涙を流している昴くんに見かねてこれ以上は作れないだろうと思われるくらい優しい声を掛けてた。

(今のは誰かしら口調がママに似ていたかも知れないわね、それでも何も感じないのうちどうかしちゃったのかしら)

「アイリーン落ち着くんだ、ブレインが悲鳴を上げているぞ」

「ブレイン?」

(そうだった、迂闊にテレポートしないようにブレインで感情抑制しているんだったわ)

「てへへありがとう九論もうちょっとで危なかったわ」

((何が危なかったのだろう))

 九論と新月さんはアイリーンの発言に度々ドキッとさせられている。

「あのーピエロさん、あの張り紙はいつから張ってあったのでしょうか」

 涙を拭き終えた昴くんが聞く。

「あれは1年前から張ってあったです。隅のほうに日付データが入ってますけど」

「1年も前からなの、どうして誰も教えてくれなかったのよ」

「アイリーン1年前に我々は何処に居たと思うかね、そして喩えその情報がもたらされたとして私たちは信じていただろうか」

「そうよねそんな突拍子もない計画なんて目の当たりにしない限り本気にしなかったでしょうね。でも連絡はするべきだと思うわ、これじゃまるで焼討ち?いや、闇討ちよ」

 アイリーンは言葉を選んで言い換えたけど新月さんが更に訂正してきた。

「いいえ仇討ちってのが名目なの」

「先生誰が誰に仇討ちするのですか」

「昴くんいい質問だけどその前に、先生はもう先生ではないから先生とは呼ばないで、新月さんと呼んでもらえますか『愛さん』でもいいですけど愛鈴さんとダブってしまいますからね」

「新月さんって愛さんって名前だったの、うち全然知らなかったわ」

「フルネームで名乗ってなかったでしょう」

「うっ、そうよねうちが知らなくて当然か」

「そうですよ、まだまだ知らない事がたくさんあるんです」

「それで宇宙人が地球人に仇討ちするんですか『天誅』って言いながら」

 昴くんが涙声で喋っている。

「『天誅』とかは言わないでしょうね」

 新月さんが困ったわねって表情をして言う。

「『月に代わって……』ってアニメなら面白かったけどうち達が『お仕置きよ!』ってされるのは面白くないわね、なぜこうなってしまったのよ」

 昴くんが口を閉ざすと直ぐにアイリーンが口を開く、まるでエサをねだる雛鳥の様だと九論は眺めていたがそろりと口を開いた。

「特盛パフェも半分くらいになったな、そろそろ出た方がよくないか」

 しかし、みんなの前に置かれているカップには本体パフェの半分の量が分散されて残ったままになっている。

「私も同感です。私達5人組は少し目立ってしまいましたね」

 ピエロが同調した。

 この店へ来た時はほぼ満席だったのに今は離れた席に数人が座っているだけだ。

「はっ、そうようち達はスター戦隊5人ジャーって名乗らない」

 アイリーンがまた訳の分からないことを言いだしたのを聞き流し新月さんも提案する。

「みなさん席を立ちましょう……」

「ちょっと遅かったみたいですね」

 ピエロが肩をすくめたところでアイリーン達のテーブルにやって来たのは正真正銘のエイリアンと亜人だった。

「スターキッドのキャプテンアイリーンさんですね、私達はイカロス共同通信社の者ですが地球防衛基地の地球への攻撃に対してアイリーン陣営はどのような対処をされますか」

(わぁ、イカ頭なんて本当に居たのね初めて見たわ、ここで『イカ頭だー』って笑ったら宇宙大戦争の前にレストラン大騒動が始まってしまうわって…昴くんダメよ我慢して)

 アイリーンは今にも吹き出しそうに 真っ赤になって我慢している昴くんの太ももをつねりあげた。


挿絵(By みてみん)


「痛っ!」

「どうかされましたか?」

 新月さんが心配そうに声を掛けてきたけど目が笑っている。

「アイリーンさん何も答えてはいけませんよ、何を言っても言わなくても明日のトップニュースに写真付きで載るのですから」

 ピエロさんがすかさず助言を出す。

「あんたフリープラネットのスネーク新田じゃないか」

 イカ頭が甲高い声で指差しする。

 やって来たエイリアン3人組はちゃんとしたインタビュアーらしく、マイクを持ったイカ頭人間とカメラを回しているゴリラ人間と強力ライトを頭に掲げ持っているコウモリ人間でゴリラさんがイカ頭の悲鳴に近い声を聞いた途端、胸ポケットから黒メガネを取り出して掛け、他の2人をゴリラさんの陰になるように後にピッタリ並ばせた。

「蛇眼の新田、まだ能力は使ってないようだけど…」

 3人組はマーチングバンドの様なきびきびした動きで隊列を組み三歩下がった。

「えっ?能力って何?」

 3人組の統率の取れた一瞬の行動を面白く見ていたアイリーンが質問する。

「こっちの質問に答えてもらったら教えてもいいが…」

 背広を着たイカ頭が青いツナギを着たゴリラの陰からいかにも怪しい素振りをしながら提案してきた。

「そうねぇうち個人の考えでいいのよね」

 アイリーンは新田と呼ばれた自称ピエロとゴリラの陰に隠れてほとんど見えなくなったイカ頭を交互に睨みながら返事する。

「戦争なんて絶対にあってはならないものよ、それをうちが引き起こすなんて想像するのも許されないわ、だからうちは『奴らには手を出さない』これが答えよ明日の見出しは『アイリーンは平和を守る』にしなさいよね」

 アイリーンは吐き捨てるように言うと涙目になった。

(悔しい、何も出来ない自分が情けない)

「そうですかこちらとしては残念です。ここ最近低迷しているゴシップネタの起爆剤になってもらえると期待したのですが仕方ないです」

「いいから早くピエロの能力について話しなさいよ」

「蛇眼の新田と呼ばれフリープラネット同盟の特殊工作員、その目で見詰められると一瞬で洗脳され、どんなに屈強な戦士でも仔犬の様に腹を上にして降参すると言われています。あなた達も仲良くしている様に見えますが既に洗脳されているという自覚を持って下さい」

 震えるマイクだけ突き出しているインタビュアーの声もまた震えていて真実であることを語っている。

(今のピエロさんからは震え上がる程の怖い波動は感じないんだけどな)

「ねえピエロさんそれとも新田さんと呼んだほうが良いのかしら」

 アイリーンは平然とピエロに問いただす。

「私は最初に『ピエロ』と自己紹介してます、そして私は真実しか話さないように心掛けています。アイリーンさんとは敵対せず仲良くしたいのですから」

「よく分からないけど分かったわ、これからも本当の事だけを話してくれると信じるわね、それでもううち達には洗脳の術を掛けているのかしら」

「今までもこれからもあなた達には使うつもりはないです。う~ん、一つ教えておきますこの能力は同じ遺伝子を持つ者に対しては掛からないか掛かりにくいですね」

「うちと九論はあなたの蛇眼の影響を受けないと思っていて良いのね」

 TVクルーがざわめく。

「お、同じ遺伝子を持つとはどういう事ですか、もしかしたらアイリーンさんは…」

「ちっ、口が滑ったのでーす」

 アイリーンが茶化す。

「ちっ、喋ってしまったか…」

 珍しくピエロが狼狽えている。

「知らなかったですわ」

「3人は兄弟なの?」

 みんなが思い思いの事を口にした時、ピエロの瞳が一瞬だけ金色に光るのをアイリーンは見逃さない。

(蛇眼だ!使ってるじゃない)

 シャキッとしていたインタビュアーがナヨッとしたようにアイリーンには見えた。

「そうですよね人類みな兄弟なんだから同じ遺伝子を持っていてもおかしくない。そもそも地球出身で普通人の新田さんが蛇眼なんてアニメみたいな能力を持っている分けないですよね、忙しいところお邪魔しました。明日のトップは『キャプテン・アイリーンは平和の使者。戦争は起こさせない』にします。ありがとうございました失礼します」

 TVクルーの3人組はペコペコ頭を下げながらレストランから出ていった。

 アイリーン達5人も足早に席を後にする。

 誰もいなくなったテーブルの上には『ちょっと席を立ってます』的な状態のカップが5ついつまでも残されていた。

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