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昴くんは縁日気分

 月の裏側地下に造られたルナ・ターミナルはいつにない熱気に包まれている。

「かなり混んでるわね、着陸時に何か管制官と揉めてたみたいだけど何だったのよ」

「着陸位置が一番遠い隅に指示されたもんでAIの奴が切れてな、諸肌脱いで脅しをかけてゲートに一番近い隙間に着陸させたのさ」

 アイリーンはスターキッドAIに質問したつもりだったけど返事が返ってきたのは九論からだった。

(Aちゃん何かイライラする事でもあったのかしら)

「諸肌脱いでね…なんだか目に見える様でおかしいわね」

(スターキッドAIの話だよね)

 昴くんはAIが諸肌を脱ぐってどんなんだろうと想像してみたけど無駄骨に終わる。

「何はともあれ歩きませんか、せっかくピエロさんとおっしゃる地元の方が同行して下さるのですから、いろいろ案内してもらいましょうよ。最初は換金所へ案内お願いしますわ」

 新月さんは端から歯牙にも掛けてない。

「換金所ならこの宇宙港から出る時の入場審所の隣にもありますからそこが安全で良心的だと思いますよ」

 ピエロが言う。

(前に来た時もあったんだろうけど気付かなかったわね、あの時は入場審査もしなかったように思うけど光一兄さんどうしたんだろう)

 アイリーンは換金所から出てきた時スキップをしながら皆の周りを回る。

「ねえ、九論に新月さんうちはすごい大金持ちになっちゃったよ、普通に持ち歩けない金額だからってミルキーウェイ・バンクカードまで作ってもらっちゃった。ほら、こんなにキラキラした新品のカードをタダで作ってくれるんだから太っ腹だね」

「オホホホ、アイリーンさん、あの程度の金額で大金持ちになったなんて思ったら駄目ですわ、お金はね魔法が掛かってるみたいに減っていくの、増やそうとしても中々増えないのにね、それで沢山あると思い込んで大盤振舞をして身を滅ぼした人は山程いるのよ、だからどんなに大金を手に入れたとしても、まだ足りないと常に思っていないといけないの『もういいよ』なんて言ったらそこから破滅への道を歩み出すことになるわ」

(サロメが言いそうな事を言うのね、少し思い出してしまったじゃない、今は忘れなきゃ…)

「それで商品を高値で吹っ掛けるコツは分かったかな」

「そうね大体ね、まずサンプルを用意したのが良かったのよね、それと何故だかは分からないのだけどお酒のボトルにうちのサインを入れただけで価格が倍になったわ」

「次にお金が必要になった時にはイノマンのサイン入りボトルを持って行くと良い、言い値で買い取ってくれると思うぞ」

「あんまり荒稼ぎし過ぎますと一部の人から妬まれてあらぬ悪名を着せられますよ、ほどほどにして下さいね」

(ピエロさんはうち達が既に悪名を着せられているのを知っているでしょうに)

「それにしてもすごい人出ですわね。数もすごいですけど本当に亜人さんが多いのですね、エイリアンタイプも何人か居ますわね。昴くんが怯えてないか心配です」

(ずっとうちの側にくっ付いている昴くんは可愛いけどさ、ちょっと近付き過ぎじゃないかしら)

 アイリーンが歩調を緩める度に後ろを歩く昴くんはぶつかってきてる。

「昴くん大丈夫だからうちが守っちゃるけんね」

「僕は別に亜人とかエイリアンが怖いんじゃないよ、皆お面被って縁日みたいで楽しそうだなと思っていればいいもんね。あのね、さっきの買い取り屋さんの壁の掲示板に愛鈴さんの顔写真が貼ってあったよね知らない人のもあったけど、それと同じものが所々に貼ってあるんだけど愛鈴さんてアイドルか何かしてるの?」

「昴くんも気付いたよね、まあ目の前に貼ってあるから誰でも気付くか、うちも初めて見たけどもう少しアイドルっぽく可愛い写真にしてもらいたかったな、でもあの写真はどうしたんだろうエム78での録画データーから切り抜きでもしたのかなぁ、写真の上にWANTEDって書いてあったけど読めなかった」

「文字はダブって見えて読めないんだ、ウォンテッドって何で愛鈴さんは指名手配されてるの? アイドルみたいに追っかけられてるんじゃなかったんだよね」

「アイドルになれますよって言われたことはあったわ昔の話だけどね、そのせいかも知れないけど今回は誰かさんが掘った落とし穴に落ちたみたいなのよね、言い訳するタイミングを逃したら知らない間に地球人側のスパイにされていたんだよ、うちのことを妬んでやったのかは分からないけどね、それでうちは宇宙連盟から追われているのさ」

「今からでも言い訳したら許してもらえるんじゃない」

「昴くんは優しいねありがと、でも情報を集めて分析してみるとうちも大人にならなくっちゃと思うの、昴くんは地球上で宇宙人だろうと言われてハントザETに捕まろうとしたでしょう、今までに多くの宇宙人が捕まって地上の宇宙人拠点とか地球防衛基地と取引されてたらしいわ、それにうちが加担してたと思われてるの」

(確かに日本支部へ無用心で降下したのはうちのミスだわ、でも支部の人達も宇宙人狩りの事を自分達だけで処理して宇宙基地へ報告してなかったじゃない、うちがそんなことを知る由もなかったわ)

「許してもらおうとは思わないんだね、わかったよ」

「本当にごめんねうちが巻き込んじゃって」

「今度はっきり聞いてスッキリするまでは僕も許さないから大丈夫だよ」

(許さないけど仲良く出来るんだね、昴くんはうちより大人かも知れないわね)

「いろんな宇宙人が居るね、ちょっとした店の隙間には露店が出てるけど意味が分からない物や僕には食べられそうにない物ばかりだよ」

「『僕が』食べられないように気を付けるんだぞ」

「九論、無理して怖がらせなくてもいいのよ、せっかくの観光地のメインストリートだしパフェでも食べて行かない。うちが奢るよ」

「アイリーンさんは他人の意見は聞かない人だったのですね、気を付けないと癖になりますよ」

「パフェくらい良いでしょう。話しをしたいしカードの使い方も覚えたいし」

「私は構わないがAIがしびれを切らす前には帰るぞ」

「そうね、どこかに良い所を知らないかしら、ねえピエロさん」

「もう少し先に行くと地球出身者でも入れるレストランがありますよ。最近は地球人のあれのせいで敬遠されてますけどね」

「わかったわうちが先に行って席を取ってるから、行くわよ昴くん」

「ちょっと愛鈴、人が多いから走ったりしたら危ないよ」

「あらあら、アイリーンさんたら昴くんの手を引いて走って行っちゃいましたね、大丈夫なのかしら」

「最近はだいぶ落ち着きましたからいきなり襲われる事はないでしょう。ただ地球出身者もかなり数が減ってますから目立ちますけどね、でもアイリーンさんなら『お前は地球出身者だな』と聞かれた時『うちはアイン星人だ』って言い返しそうですね」

 ピエロは言い終わったあと2人の眼光に気付き青ざめる。

「ほう…」

 九論は思った。

(ピエロはどこまで知っているのかな)

「へえ…」

(アイリーンさんはピエロさんのことを知っていたのね)

 新月さんはアイリーンがふたつ返事でピエロの同行を許した意味を理解できたように思う。

 2人がピエロの正体に疑問を持ち始めても態度には出さず同じような足取りで商店街を歩いて行く。

「歩道からは中が丸見えなのですね、材質はガラスですよね、ルナ・ターミナルの資材は地球から運んで来てるのですよね、物資はそれぞれのお国の物だろうけど、私たちが食べる食材は今でも地球から運んでいるのかしら、地球上にはもう連盟の人間なんて100人程度しか居ないのにマンパワー不足で大変ですよね」

「みんなー、こっちよー」

 3人が見えたのだろうアイリーンが大声を上げて呼んでる。

「愛鈴…さん、恥ずかしいから大声を出さないでよー」

「大丈夫よ」

「アイリーンさん地球の大衆食堂じゃないんですからね、言っている意味が分かりますか」

(恥ずかしいからではなくて目立ちたくないでしょう。地球出身者は私達だけみたいよね)

「ハイハイ分かりましたよ~、それじゃあお話ししましょう。オーダーはうちが勝手にしたわ、何が出てくるのか楽しみにしてね」

「私は甘いものが来たらパスさせてもらうから」

「大丈夫よ何種類か注文したから」

「「 何種類も!?」」

「5人だから5種類よ問題ないでしょう」

「「……」」

「あら、ピエロさんは元気ないのねどうかしちゃったの」

「ピエロさんは何かしら失言をしたみたいで、言い訳を考えていらっしゃるんじゃなくて」

「へえ早かったわね、うちのことを昔から知ってるみたいに言っちゃったんでしょう」

「アンバ隊長と交流があるみたいな事を言ったな」

「私も記者です、アイリーンさんがアイン星人の事を知ってるんじゃないかと思って言ったけですよ。冥王星アイン駐屯所のアンバ隊長とも懇意にしているとは知りませんでしたね」

「ほらまた言った。そういう事は一般の記者さんは知らないのよ、あなたは自分はスパイですと言っているの…分かるかしら」

「いえ普通に調べれば出てきますよ、アイリーンさんは指名手配もされているのですから」

「うちは地球人のスパイとして指名手配されてるだけなのよ、それだけなんだからね」

(アシュラは初期化される前にうち達のデーターを改ざんしてるのよね、その後どんなデーターになっているのか気になるのだけどね)

「20年前のピエロさんはお化粧してたから顔なんか分からなかったのにね、今の貴方は若いし雰囲気も柔らかいので同じ名前の違う人だといいなとも思っていたのよ」

「・・・」

「でも本当に貴方だったのね、年を取らない体質なのかしら、それでうち達に近付いた目的は何なのか教えて下さるでしょう、あの時もはっきりした目的は教えてもらってなかったわね、あなたもサロメと同じくイノマンに会いたかったのかしら」

「アイリーン、サロメの名前は出さないほうが良かったんじゃないか」

(アイリーンは何を焦ってるんだ)

 九論が心配する。

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