特別専任教育主任 1
「ごめんなさい、イノマンはずっとうちの中に居たみたいなのだけどうちは知らなかったわ。うちの中から外の世界を見ていたと言っていたの最後はお兄ちゃんの身体に入って…元々はイノマンのクローンだからってそしてお兄ちゃんの魂をうちの中に入れたの。背中の傷はその時のものなのだから痛がってはいけないの」
「そうなのね知らなかったわ、そんなことがあったなんて誰も知らないと思うのよ、だから今の話はまだ誰にもしてはだめよ、直ぐに私が副長に聞いてくるからね待ってて直ぐだから」
「じゃあその時にこの基地の中にお兄ちゃんのクローンがあるはずだからそれを聞いて下さい。お兄ちゃんの魂を早くクローンに移さないといけない気がするの」
「分かったわ直ぐに戻るからね」
「大事なお話は済みましたか」
ジラーフさんが離れると直ぐにゴートさんが傍らに来てくれて寄り添ってくれた。
回りを見ると自動扉のこっち側に入って来たのはジラーフさんとゴートさんだけで、ジラーフさんはホーク副長が居る所まで戻って話しをしだす。
他の人たちは扉の向こう側で心配そうな顔をしてこちらを見ている。
(ジラーフさん早く戻って来て)
「ゴートさん心配お掛けしています、今はまだお兄ちゃんの事を考えると涙が出て止まらなくなるの、できるだけ考えないようにはしているのだけど…」
「良く頑張ったわね、そうねお腹空いているでしょう、スターキッドには食料乗せてなかったものね何か食べられる?」
「わあ、何か持って来てくれたのもうお腹ペコペコで何も考えたくなかったのよ何か食べ物があれば嬉しいわ」
(氷パンならあるけどあれは本当に非常食ね、はっきり言って飽きたわ)
「良かった食欲があるなら大丈夫直ぐに元気になれるから」
ゴートさんが頭の上で手招きすると扉の向こう側に居た人たちが静かに入ってくる。
その人たちの後に隠れていたご馳走が乗ったテーブルと一緒に。
「わぁ、久し振りの人間らしい食事にありつけるわ、それは今までだってアイン星人達の精神力を使う料理とか、まぁそのお陰で(かどうかは知らないけれど)アルベ市の名誉市民になっちゃったんだけど、あと天王星警備隊では牧草固めたみたいな氷パン貰って、そこの警備隊長とは不可侵条約結んでうずしお使わせてもらう為に親善大使に任命されたよ。そうだ偉い人に渡して下さいって親書預かっているから偉い人ってホーク副長で良いのかなぁ…あっ、これ食べていい?」
アイリーンはふらふらと匂いに引き寄せられ、ご馳走が乗ったテーブルの傍らまでゴートさんを引っ張って来る。
そして一通り全ての料理を品定めした上で串焼き肉団子を取った。
「アイリーンさん後からでいいのでキャプテンのことを皆の前で話して下さいよ。どうしてもって言う訳ではないのですけど皆は情報がなくてヤキモキしているのです」
テラマンのサスケがいつの間にか後ろから話し掛けてくる。
「分かったわこの1本食べたら話すから皆に伝えて」
とうとう引き下がれない所まできてしまった感じがする。
「アイリーンさん悲しみに押し潰されて何も考えたくないのは分かるつもりよ、でも大切な事を自分だけで簡単に決めてはだめです。私では頼りにならないかもしれないけど相談くらいはして下さいね。サスケさんもアイリーンさんは帰ってきたばかりで疲れているし辛い思いもまだ癒されてないのよ察してあげて、もう少し落ち着くまではそっとしてあげるのよ、それより先に無事帰還のお祝いをしましょう」
「うちの無事帰還のお祝いはしなくていいからお兄ちゃんのクローンを早く探して!」
自分でも気が立っているのが分かるけど押さえられない。
「アイリーンさん落ち着きなさい」
誰かの手が優しく肩に掛かり振り向くとジラーフさんとホーク副長に見下ろされていた。
アイリーンは自分を見下ろす2人の異星人に問いかける。
「ねえ、お兄ちゃんのクローン見つかりそうですか」
「さっき、ホーク艦長がオビス司令官と直通回線でお願いしたんだけどね…」
「えっ、ホークさんは副長よね」
「通信中にねオビス司令官からドロンパ号の艦長になるように言い渡されたのよ、ドロンパ号の呼び名も地球防衛艦隊輸送艦キャメロットに戻ったわ」
「ドロンパ号のキャプテンはお兄ちゃんキャプテン・ライトでしょう、それにキャメロットに戻ったってどう言うことよ!」
「順を追って話すわ、少し長くなるから座って食べながら話しましょうね」
「嫌だわ先に聞く。今食べても味も何も分からないし」
「イライラしてはダメよ落ち着いてストレスは魂を削るわそれにお腹が空いていてはろくな考えにならないわ、そのはずよ」
(お兄ちゃんの魂が削られるって何よ?)
「そうねジラーフさんお腹が空いていてイライラして当たり散らしてしまってごめんなさい。うちの中にお兄ちゃんも居るってことを忘れてた…訳ではないのだけど影響するってのまでは考えなかったわ、これからはもっと冷静になる」
「良かったわ理解が早くて取りあえず座りましょう」
アイリーンはジラーフさんとホーク艦長に挟まれてイスに座った。
周囲は勝手に盛り上がり始めているが、アイリーンの回りには冷たい空気が流れている。
目の前にご馳走があるのだけど喉を通りそうにない、それでも無理にでも食べられそうな物を口に運ぶ。
それを見てジラーフさんが話し出す。
「キャプテン・ライトはドクターイノマンが自分のクローンに石井光一さんの脳をコピーして幽体を移して生き延びさせた事は聞いているわね。冥王星の衛星軌道上で冷凍睡眠カプセルの中に入っている所を救出されてしばらくはドクターイノマン本人とされていたのよ、DNAがイノマンと同一だったし当時はイノマンがやっていた研究の事を誰も理解できなかったからね、石井光一さんが地球防衛基地の隔離部屋で生活を始めてドクターイノマンでないと証明されるまで15年掛かってるわ、中身が石井光一さん本人と証明されてから行動調査チームに復帰して目覚ましい業績をあげたの、イノマンのクローン体に光学擬態とか他にも幾つかの特殊能力が備えられていたのを自分なりに活用出来たのが功を奏したのね、それが上層部に認められもっと仕事しろと言う事だろうけど、防衛艦隊輸送艦キャメロットの艦長に任命されたの、でも軍人でなかったのと本人の希望で、キャメロットをドロンパ号に自分のことをキャプテン・ライトに名前を変更して今まで通り行動調査チームで働かせてくれと頼み込んだの、そしたら実績を上げられたら認めようとなって今までそれなりの業績を上げて来てるのねでも、キャプテン・ライトがいなくなったので元に戻すことになったのよ」
「だから、クローンを与えてくれたらキャプテン・ライトが元通りに…」
(泣きたくなんかないのに!)
アイリーンは言葉が詰まってしまって、泣く事しか出来なくなってしまっている。
ジラーフさんが優しく肩を抱き寄り添っていく。
「イノマンが言ったのよ地球防衛基地に自分のクローンがあるとそこまで行けばなんとかなるって、あれはうちに希望を持たせて逃がす為の言葉だったのかなあうちはクローンの前に立つ事が出来ても多分どうすることも出来ないわ、うちの中にお兄ちゃんの魂がどうやって入ったのか全く分からないし魂を扱えるのはイノマンだけだと思うわ」
「可愛そうなアイリーン、同情しても良いかしら、そして新たな希望を授けるわ、私的には好きでない方法なのですが昔から使われている古典的な魂の復活方法があるの。それとイノマンのクローンのことは第1級機密事項なんですって私もさっき教えてもらったわ、そしてアイリーンにも口止めをお願いするようにって言われたの。イノマンのクローンは簡単に行けない場所にあっておまけに特殊な冷凍保存をされていて誰にも解凍出来ないそうよ、多分イノマン本人にしか出来ないみたいね」
「なんとなくそんな気はしてたけど、考えないようにしたの、だからここにあるイノマンのクローンの事はもう考えないわ、それより古典的な方法を早く教えて下さい」
「教えるわ約束する。でも今は駄目よ、先に知識と体力と技術を身に付けないと出来ないのよ、今あなたに教えたらスターキッドに乗って飛び出すでしょう、だからダメよ」
「わかったわそれが出来るのはここではないってことね多分地球よね、あとは何をどうやってやるのかよね」
「だからアイリーンさん先走ったらいけませんの今はゆっくり食事して休んで、そしてあなたの中の石井光一さんの魂…いいえ今は生命体とも呼べない位小さくなっているけど、受け取った時はもっと大きく強かったはずよその状態にまで育てないと転生は無理よ」
「分かったわ地球の多分うちの故郷お兄ちゃんも故郷って言っていたわ、だからそこで転生させるのね。あとはやり方ね転生ってことは赤ちゃんに生まれ変わらせるのよね…もしかして、うちが生むの?まさかよね」
「あなたには負けるわ、さぞキャプテンも振り回されたんじゃないかしら、何回も言いますけど今やったらライトさんの生命体は消えてなくなりますからね」
「分かっているわ言ってるだけじゃない、どんだけの分からず屋に見えているのかしら、それでうちはこれからどうすればいいのかしら」
「分かってくれているんなら、それは良かった…」




