極寒の地、色々と無理です
誤字脱字などのご指摘を頂きましたら順次直していきたいと思います。
楽しんで頂けると幸いです!
「誰だ?ここには用があるもの以外入るなと言っていただろう?」
ほぼ素に近い口調で書類を睨んだままの彼は地獄の底から聞こえるようなドスの効いた声で凄む。
「えっと・・・」
(帰っていい!?帰っていいよね!?殿下こっわ!無理無理!マジで無理!・・・・・・パニクって素が出る!マジでヤバい!令嬢らしさ?ドブに捨てた!)
彼女の声に反応したのか彼はバッと顔を上げ扉から顔だけをのぞかせていた彼女を穴が空くのではないかと言うほど見つめる。
「・・・・・・とうとう幻が見えるようになったのか?」
「多分ですが・・・ち、違いますわよ?」
少しの気恥しさと多くの恐怖に震える彼女を彼は未だに見続ける。
「こっちに来い」
「へ?」
「いいからこっちに来い!」
「ひゃい!」
彼の突然の命令に戸惑いながらもその気迫に押され、返事をする。
そして、扉を開けきちんと部屋の中に入る。
「ここだ。ここに来い」
そう言いながらも彼は自身の膝の上をポンポンと叩いている。
それは彼の膝の上に乗れという催促なのだろう。
「へ?」
(無理!本当に無理!恥ずかしい!怖い!どこの少女漫画?どこの恋愛小説?膝抱っことかマジ無理!死ぬ!羞恥死できる!)
ゆでダコのように真っ赤な顔になった彼女は未だ入口でプルプル震えている。
それに痺れを切らしたのか彼は椅子から立ち上がり彼女の元までづんづんと歩いて行くとヒョイっと抱き上げまた椅子に戻っていく。
そして勝手に彼女を膝上に乗せ、後ろから抱きしめていた。
(ふぇぇぇ!?膝抱っこからのバックハグ!?どこのヒーローなわけ!?無理無理無理!もちろんこういうシチュエーションは乙女(?)として好きだよ!?でもね?私の場合は2次元限定でときめくの!リアルでやられたらキャパオーバーよ!死ぬ!控えめに言って死ぬ!無理です!無理だよな!?・・・・・・キャパオーバーだよぉ〜)
「はぁ〜・・・ルーニャが足りない」
「そんなこと言われましてもコレはないのではないんですか?」
「無理だ、片時も離したくない。お前は本が全てで俺の元からいとも容易く逃げていく。婚約者などという縛りもお前からしたら無いに等しいだろ?俺はお前が好きなんだ。アレから実感したんだ。お前を失う気は無いしお前から離れることも出来ない。なのにこんな長期間離れてしまって・・・・・・・・・お前は俺のものだろ?」
(言ってること理不尽だな!誰が殿下のものですか!私は私のものですぅ!殿下のバーカ!最後の甘えた感じにはキュンとしかけたけど知らない!これまでで散々学びましたもん!甘い顔したら飲まれる!殿下の雰囲気に飲まれる!本当に、私が誘拐未遂にあった日からベタ甘なのよ!ギャップなんてレベルじゃないわ!ドS?ないない!俺様?入ってはいるけどそれもなんか違う!どちらかといえば好みなのがいけ好かないわ!私は本を読む時間が欲しいのにこのまま行けば無理よね!?)
「俺を無視して考え事か?・・・許せんな」
1人百面相をする彼女を彼は不快そうに眺め、その顔を彼女の長いハニーレモンの髪にうめる。
そこで、彼女の記憶はプツリと途切れた。
完全にキャパオーバーであった。
「・・・・・・・・・・・・これで気を失うなら先が思いやられるな。手放す気は一切ないから覚悟しろよ?」
彼は気絶した彼女の髪をひと房とり、それを口元に待っていくとそれに口付けをするのだった。
ルーニャ「無理でしゅ_:(´ཫ`」 ∠):_」
レイル「大丈夫、大丈夫」
ルーニャ「誰のせいだと思ってるんです!?」
レイル「俺( ・´ー・`)」