第四十九話 朝の勇戦戦争
朝飯を食べに行ったが、そこにはフランコさんはいない。
いわゆる「二日酔い」だ。
ラズラと一緒に柔らかいフレンチトーストを食べていたそのとき、ブルコビルが話しかけてきた。
「お食事はどうでしょうか?」
「美味しいです!」
「そうですか……よかったです。しかしマゼル様、一つお願いがあります」
「なんですか?」
「実はここは魔王軍の総本部なのです。ここに来てもらった理由は、貴方が魔王となればこの世界の多くの人々が救われます。是非私たちと共に戦おうじゃありませんか」
ここが……魔王軍総本部……か。
「俺は沢山の人を殺してきた。そんな奴が世界を救えるのか? どうせラズラやフランコさんを人質にする気だろ? 俺は今すぐここから出ていく」
「いいえ、人質にする気は決してありません。この世界を救うためです。お願いします!」
「俺に悪魔暴走の呪いをかけたからこうなったんだ。全てお前たちのせいだ。こうなっていなかったら……」
「申し訳ございません。ではせめて、貴方が悪魔暴走の呪いをかけた理由を伝えるだけでも……」
「そんなの聞きたくもない! どうせ理由なんてないんだろ?」
「フランコ様は元勇者軍四天王の一人で、あの方の力を借りることができればこの世界を救えるだろう。と……」
「ほら! 結局フランコさんの力を借りるためじゃないか! 俺に悪魔暴走の呪いをかけた理由にもなってない。ふざけるな!」
「そう言われましても……私じゃございませんし」
「お前らのせいで俺がどうなったか知ってのか!」
「本当に申し訳ございません……」
「さっさと俺に悪魔暴走の呪いをかけた奴を殺してやる!」
マゼル様は近くにあった魔法書を持って入口の扉を開け、走っていってしまった。
「マゼル様!」
私はマゼル様を追いかけることも出来ず、ただ見つめることしかできなかった。
「私、マゼルのこと追いかけてくる!」
「すみません、私があんなお願いしてしまったのが間違ってました……」
「ブルコビルさん、大丈夫ですよ。心配しないでください」
ラズラ様も外に出ていってしまった。
それよりもフランコ様はまだ起きてない。昨日はお酒を大量に注文していたからなぁ。
それよりも私もマゼル様を追いかけなければ……!
「あー、酒、酒が飲みたい……」
どこかから聞こえる男の声。しかし、朝から酒なんて飲みたいとか言う奴はきっとおかしな人間に違いない。
そう思いながら、私は斧を片手に外に出ていったのである。




