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マゼルの勇戦戦争  作者: モルモラ
第三章 魔王軍編
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第四十七話 祝福の勇戦戦争

「『戸田輝とだあきら』って俺のことなんだよ」


「えっ!」

「ってことは眼鏡をかけた女の子がラズラってことか……」

 まさか、あのときいじめられていた女の子がラズラだったとは思わなかった。

「本当に輝くんなの?」

「本当だよ!」

 ラズラは微笑みを浮かべていた。対して俺は驚きを隠せず、顔がポカーンとしてしまった。


「じゃあ私、マゼルに恩を返さなきゃいけないね」

「もう恩は返してもらってる。俺は異世界に来てからフランコさんもそうだけど、ラズラには優しくしてもらった。本当にありがとう」

「私なんて助けてもらってばっかりじゃん! なんでそんなに人のことだけ考えて自分のことは考えないの。私はマゼルに恩を返したと思ってないからね……!」

 そうだ。俺は自分のことはそれほど考えたことはなかった。

 生き続ける為に高校生と嘘をついてバイトをして、ホームレス生活。

 そこで異世界に転移されたら殺されかけるわ、チート魔法と呼ばれる時空間魔法は使えないという散々な目にあってきた。

「そうだろ? 俺は馬鹿人間だ」

「違うよ。私は輝くんのことが大好きだよ。一番大事な人……なんだよ」

 一番大事な人……か。

 今までに俺はそんな言葉貰ったことはないな。


 ようやく風呂から上がってきた俺は心が晴れた気がする。

 心の暗闇が全て光に変わった。

「マゼル、顔が清々しいじゃないか! ラズラとなにかやったのか?」

「やってませんよ、フランコさん!」

 三人とも笑顔で露天風呂から上がってきたところで夕食が始まった。

「お食事はこちらでございます」

 ブルコビルに案内されたのは小さな個室だ。

 机と椅子は木製で木のぬくもりが感じられる。


「こちらがお鍋です、熱いので注意してください」

 ブルコビルが持ってきたのは、熱々のお鍋だ。

 蓋を開けると白い湯気が出てきた。いい匂いがする。

 そして沢山の野菜が現れる。

「いただきます!」

 横のお肉をしゃぶしゃぶして食べる。

 赤いお肉が色を変え、すぐにごまダレをつけた。

 口に入れると、お肉の甘みが広がりとろけていく。

「おいおい、これは俺の作る料理より美味いじゃないか!」

「フランコさん、そんなこと言わないでくださいよ。フランコさんの料理も十分美味しいですって」

「そうかなぁ」


「それよりもどうやって俺たちの居場所がわかったんですか?」

「マリーって奴に場所を教えてもらったんだよ」

「マリーさん……ですか」

「マリーを知ってるのか?」

「はい、一度助けてもらったことがありまして……」

「お、そうか。俺がマリーを捕まえたら、勇者軍なのにすぐにマゼルの居場所を教えるとか口が軽すぎなんだよな」

「マリーさんは決して悪い人じゃないです! 俺のことを助けてくれたんですよ!」

「そう言っても勇者軍だぞ、お前を殺そうとしているのはわかってるだろ?」

「はい、そうですけれども」

 確かにマリーさんは勇者軍。だとしても悪い人ではない。

「マゼル、食べないの?」

 そういえば話に集中しすぎて全く食べていなかった。

 急いで肉をしゃぶしゃぶしてゴマだれにつける。


 少し雰囲気が悪くなったが、この後ラズラのおかげでフランコさんと楽しい話ができた。

 その時間 は楽しくて、とても嬉しくて。

 今日は俺の願いが一つ叶った日だった。


「フランコさんと食事したい」という俺の小さな願いが。

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