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怪盗黒薔薇  作者: 杠葉 湖
第6話 三笠家勉強会
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第6話 三笠家勉強会-1

 紅葉が町を彩り、少し冷たい風が吹き抜ける、ある日曜日の昼下がり。

 晴天の元、辺りをきょろきょろと見回しながら歩いていた百合は、ふと一軒の家の前で歩を止めた。

「ここ……ですよね……」

 百合はメモに書かれた地図と、目の前の表札を見比べた。

『三笠』

 石の表札に彫られたその苗字は、確かにそう書かれている。

(言われたとおり来てしまいましたけど……本当によかったんでしょうか?)

 百合は人差し指を口元に当てて、数日前のことを思い出していた。

 それは夕暮れ刻の放課後。帰宅の途につこうとした百合は、突然沙絢に呼び止められた。

「百合ちゃん、ちょっといいかな?」

「はい、なんでしょう?」

「あ、あのね……」

 鞄を背負っているセーラー服姿の沙絢は何かを言いたそうにモジモジしていたが、やがて意を決したように百合を見た。

「あ、あのね!今度の日曜に、百合ちゃんに勉強を教えて欲しいんだけど!」

「勉強、ですか?」

「う、うん。今度の試験、ちょっと自信なくて……ダメかな?」

 上目遣いで見つめる沙絢に、百合は思案気な表情を浮かべる。

(日曜日ですか……予定は特にありませんが……)

 やがて百合は、温和な笑顔を浮かべて沙絢を見た。

「はい。いいですよ」

「本当!?やったー!!」

 沙絢は飛び上がるほど喜びを体全身で表すと、ポケットから一枚の紙を取り出し、百合に手渡した。

「はいこれ。家までの地図」

「え?は、はい」

 百合は沙絢から紙を受け取る。

「日曜日!絶対約束だからねー!!」

 沙絢は嬉しそうに手を振りながら、百合から遠ざかるようにかけていった。

 そして今日、である。

 もちろん、ニーナには今日のことは言っていない。

 もし言ったら「憧れの通クンと二人きりで密室デート!?ユー、既成事実作っちゃいなYO!」と茶化されるからに決まっているからである。

(少し緊張するなぁ……)

 百合は大きく深呼吸をした。そしてインターホンを押す。


 ピンポーン


「…………」

「……はーい」

 程なくして、インターホンの向こう側から声が聞こえてきた。

「あ、あの。私、本日三笠沙絢さんの勉強を見ることになっている、四阿百合と申しますが……」

「あ、百合ちゃん?ちょっと待ってね」

 インターホンの声が途切れる。

 やや間を置いて、玄関の戸が開いた。

 そこにいたのは、オーバーオール姿の沙絢であった。

「いらっしゃい百合ちゃん。今日はよろしくね。さあ、入って入って」

 沙絢は百合を家の中へと招き入れる。

「それじゃあ、お邪魔します」

 百合は言われるまま、三笠家の中へと足を踏み入れた。


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