❄❄ エピローグ ❄❄
いつも通り、窓の外では雪が降っている。
細かく上下に揺れる車内で、エルシーは静かに小首を揺らす。
「――だからさぁ、アタシは言ってやったわけ。この馬鹿兄貴がしゃきっとしないからだってさ」
「うるせぇよ。なんだかんだ、ケツ拭いてやってるのは俺なんだぞ?」
「あーっ、はいはーい! センセー、それセクハラですぅー!」
「……うーわ、その顔くっそムカつくな。今すぐ叩き下ろしてやろうか⁈」
……ちなみに、車に乗ってから聞いた話だが、この騒々しい二人は兄妹らしい。名前は『ケイジ』と『ハナ』だそうで、仲はまぁ――なんだかんだ良いのだろう。
一方のエルシーはといえば、流石に疲れもあったのか、今はウトウトとまどろみの中。髪に付けた蝶の飾りも、心なしかくったりとしている気がする。
「なんだよー、やれるもんならやってみろー! ていうか何で窓開けてんの? 雪入ってくんじゃん」
「お前の香水で猫クンが可愛そうだろう? こうして換気してやってんの!」
「なんで? 最アンド高にフローラルじゃん。……うわっ、何今のデカいバイク、めっちゃイカついんだけど。ハンパない煙臭ぇし」
「ゲホゲホッ……さ、流石にいったん閉めるか」
そう言って、ケイジがすべての窓を閉めてゆく。
ボクも何だか今妙に寒気がしたので、閉めてくれるのは有難かった。それに、一瞬鼻に感じたあの手の煙の臭いは、昔からどうも苦手なのだ。
「それにしてもさぁ、『エルシー』って面白い名前だよねー」
「お、おいっ! 本人の前でそんな……って、寝てるか」
「えー、別に起きてたってイイじゃん? 馬鹿にしてる訳じゃねーし。外人なのー? って聞いてもなんか違うっぽいし。なんていうか、『ハコイリ』っぽいよね」
「お前、箱入りって意味わかって言ってんのか? まぁ、不思議な雰囲気はあるよなぁ」
……確かに。
エルシー自身よく分かってないことだろうし、彼らに説明するのも難しいことだが、彼女は『外国人』ではない。
でもまぁある意味、『異邦人』ではあるだろう。
――それだけ、あの村は異質な存在なのだ。『魔女の日記』の記述から察するに、だけど。
まぁその本当の意味は、きっとこれからボクらも旅をするうちに、段々と分かってくることなんだろう。
最終的な行き先は、全くわからない。
でもきっと、これからしばらくエルシーは雪を連れていくだろうし、ボクは嫌と言われても必ずついていく。
行く先々の人々に、こんな雪と猫の旅人が受け入れられるかは分からないけれど――。
「……ボクらなら、なんとかなるでしょ」
幸せそうな彼女の寝顔を見ると、そう思う。
そして、少しだけこの旅が楽しみになってきている自分に気付きながら、ボクは彼女に合わせて目を瞑った。
願わくば。
どうか彼女が、幸せな未来の夢を見ていますように――。
これにて、エルシーとアウロラの「最初の物語」は幕引きです。
次の場所では、果たして何が待ち受けているのか?
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