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3話: トイレ確保とぼっち確定



「レイラさん遅いですね」



飛び出して行った姉管理官のレイラはいつまでたっても戻って来ない。



「ああ、多分輪廻の輪の管理官と由理さんの魂の取り合いをしているのでしょう。一度入ってしまったらたとえ神様でも取り出せ無い事は承知している筈なのですが、自分のミスを何とかしたいのでしょう。まあ無駄な足掻きですね。その後は由理さんが転生する筈だった世界の神様にお叱り、お仕置等の教育的指導を受けているのでしょうね」



ニコッと笑って予想を口にするレイン。怖い…ねぇ何かあったの?お姉さんと何かあったの⁉



「姉はまだしばらく戻って来ないでしょうから、次は悠里さんに贈る能力ですが、何か希望はありますか?大概の事は叶えますがあまりにも危険だと思われる能力は無理ですが」



はっ!そうだチート!チート能力一番大事‼

僕はゲームやラノベの知識を片っ端から脳内検索して考える。


まず異世界で自分はどう生きたいか。

危ない事はしない。

目立つ事もしたくない。

テンプレフラグは極力避けたい、立てたくない。

ひっそり静かに平穏に……


これって生前の僕と変わらないじゃん…

ま、まあトラブルに巻き込まれるのはもう勘弁してほしいから、この路線で大丈夫だと思う。トラブルマグネットの由理はいないのだから、うん、大丈夫な筈。

それでも最低限身を守る力は欲しい。

という事で


魔力たくさん

全属性欲しい

危険察知とか索敵?

隠蔽、隠密出来ればステルスあったらラッキー

怪我や病気が怖いから治癒と状態異常無効

他には、鑑定か

後は……



「あの、空間創造って出来ますか?」


「空間創造?それはどのような事を意図した質問ですか?」


「異世界ファンタジー小説とかであるんですけどマジックバックといって収納した物が異空間に保存されて見た目以上の容量を持ち運び出来るという便利なバックを創る能力で、他には空間と空間を繋げて転移出来たりとか…です」


「異空間収納ですね。ふふ、僕も少しゲームを嗜んだ事がありますから解りますよ。それは大丈夫ですが転移はちょっと姉と要相談案件ですね。多分あの世界ではまだ発動出来た魔法士はいないと思いますから」


管理官もゲームやるんだ…どうやって手に入れたんだろう。じゃなくて!

空間創造を使えるならばアレをお願いしなければ‼


「あのですね、ご存知の通り僕は生前地球の日本で暮らしていました。つまり日本人です。日本人という民族はとても清潔好きで衛生管理も徹底していてその為の設備も整っていたんです。そんな環境で生きていた僕は異世界に不安しか無くて、ぶっちゃけトイレやお風呂とかどうなっていますか?」


「残念ながらご想像の通りです。ああだから空間創造なんですね。言いたい事は理解しましたが、具体的にはどうしたいのですか?」


レインは苦笑しながら、それでも少し真剣な顔になった。



レインの態度が少し硬いものになった事は気が付いたがこちとら死活問題だ。絶対にポットントイレ、拭く紙が無いとか体を洗うのはたらいの水だけなんて受け入れられない!


「空間創造で異空間に自分の部屋を創りたいんです。そこに現世の科学と文化の結晶であるウォシュ〇〇ト付きトイレとシャワー付きバスルームを設置したいんです!これは僕にとって絶対に必要な物です。いや一心同体と言っても過言ではありません‼だからお願いします!現世からこれらを持って来て下さい!お願いします!お願いしますっっ 何でもしますからお願いしますぅぅ‼」



「で、ですが現世の物を持ち込むと言うのはいくらなんでも無理だと思いますよ」


僕の勢いにレインは引き気味になりながら、それでも良い返事はくれない。



やっぱりダメかダメなのかポットンなのか自然回帰なのか…無理だよ、子供の頃田舎のキャンプ場のポットントイレに入って覗いた暗い穴…結局2泊3日僕は我慢し続けて便秘になった。またアレなのか…死にたい…死んでるけど…


「そこを何とか!」「いや無理ですよ」


「いいわよ!」



突然現れたレイラさんは腰に手をあて、胸をはって仰った「いいわよ」と!

女神降臨です‼



「姉さん!お話合いは終わったのですか?」


「まあね。ムカつく輪廻の管理官とは交渉出来たわ。次に由理が転生して天寿を全うしたら間違いなく渡してくれる約束よ」


「脅したんですか?」


レインがため息混じりに聞いている。



「失礼ね!ちゃんと交渉したわ。ただちょっと知り合いだっただけよ。昔話をしたら快く約束してくれたわ!」


「脅したんですね…」


レインの小さな呟きはレイラには聞こえ無かったらしい。それにしても昔話ってなんだろう。聞いちゃダメなやつなんだろうなうん。



「それであちらの神様とは?」


「ああ、うん…何とか次回まで待って下さるって。それに双子の片割れの魂も受け入れてくれるそうよ…」



良かった!僕はホームレスにならずに済みそうだ。それにトイレやお風呂の事もレイラは良いって言ったよね。出会いは最悪だったけど今は後光が見えるよ。



「そうですか。悠里さん良かったですね。それでも現世の物を持ち込むのは良くないのでは?姉さんほんとに良いんですか?バレたら…」


「大丈夫よ!どうせ異空間の中だけなんだし、私もこの子の世界の文明や文化は知ってるから確かにあっちの衛生環境じゃ大変よ。それに少しは悪いと思ってるしっ!それでっ付与する能力は決まったのかしら⁉」




僕はさっきまで考えていた能力を話して、レイラは「欲張りねっ」とちょっと顔が引きつっていたけれど許可してくれた。さらにレインが躊躇していた転位もあっさりOKが出た。何だか僕には絶対必要なんだとか。良く分からないけど嬉しい。そしてもう1つ。



「あんたは防御ばっかり気が行ってるけど、好むと好まざるとに関わらず戦わなきゃならない場面は絶対あるわ。でも精神的にも肉体的にもあんたには無理よね。だから警護を付けてあげる。あっちの世界の知識も教えてくれるし、何より強いから常にそばにいなさいよ!」


「えっ警護ですか?あの、知識は有難いんですけど僕はゴツい男の人苦手なんで遠慮したいなと…」


警護というからには強くて冒険者だろうか。知らない世界で知らない人と常に一緒はキツいかも。



「人じゃないわ。いえ元は人だったんだけど、生前あまりにも強かったんで英霊に招かれたんだけど敬われるのが嫌だって言って断った魂がいるのよ。それで神様も困って、どうしたいんだと聞いたら権力欲の無い子供のそばでのんびり仕えたいって言うから貰って来たわ!」


ドヤ顔で言うけど貰って来たって犬猫じゃないんだから。


「それにね、その魂の器はフェンリルなのよ‼ずっと一緒に戦って来た相棒なんですって。死ぬ時も一緒だったらしくて魂との相性もバッチリだったわ!」


フェンリルですと⁉



「モフモフですか⁉」


「モフモフよ!」


ありがとうございます‼大好物です‼



「あんたの住む場所も決めてきたわ。家も建ててあげる。近くには聖泉もあるし森もあるから食べ物には困らないわ。もちろん魔物なんかいない場所だから安心よ!」


「本当ですか!何から何までありがとうございます!」



「姉さん…」


「な、何よ」



「そんなに至れり尽くせり細かい事まで姉さんがするなんて、何かあるんですか?あるんですね、無ければおかしいですよね」


レインが何だか怖い。不吉な事言わないで欲しい。レイラにはほんとに感謝してるんだから。…何にも無い、よね?



「ま、まあね。実はあちらの神様が仰るには、自分が欲しいのは由理の魂なのだからいくら双子だと言っても受け入れたくは無いと。なぜなら転生者というのはやたらに目立つ行為が多く目障りだ。由理が活躍するのを楽しみにしているのだから絶対に目立つ行為はするな。本来来る筈の無い魂なのだから極力静かに目立たず、人との関わりも避けろと。友人になったりして記憶に残ってしまうとどこかで因果律が狂うかもしれないから、ひっそり暮らすなら許すと…」


「えっ他にも転生者がいるんですか?」


「そこっ⁉」



いやいや大事でしょう。目立たず静かにひっそりと生活するのは僕の希望と一緒だからかまわない。友人を作れないのはちょっと悲しいけど。あれ?ちょっと待って!僕って一生ぼっちなの⁉恋人とか結婚とか無理なの⁉



「あんたね…転生者はいるわよ。ただ輪廻の輪で浄化された魂だから前世の記憶持ちはいないわ。だけど他所から転生してくると何故だか分からないけど身体能力とか魔力とかの数値が高いのよね。だから冒険者になっても結構目立つし、魔法士としても大成する事が多いのよ」



ふんふん、お気に入りの由理が目立たなくなるからじっとしてろって事ですね。了解です。むしろ願ったり叶ったりです。



「でね、仮にも由理の双子の片割れなのだから潜在能力も高かろうと。だからなるべく人と関わらない様にあんたの住む所は人里から離れた所に設定しないと許可しないって」



「具体的にはどこになるんですか?」


「姉さんまさか…!」


レインが慌てているけどなんだろう。魔物もいなくて食べ物にも困らないならそんなにヤバい所じゃ無いと思うけど。



「とにかく極力あんたの生活環境は整えてあげるから。異空間にトイレバスルームだけじゃなくて、あんたの住んでた家ごとコピーして復元してあげるわ。備品は現状維持の魔法を掛けておくから、何か食べても使っても翌日には元の量に戻っているわ。その代わり絶対にその異空間の部屋から現世の物を取り出してこっちの人間に見せたりしてはダメよ!わかった⁉」



「はい分かりました。まさかマンションの部屋ごと異空間に置けるなんて思っていなかったから本当にありがとうございます!食材も調味料も使えるなんて嬉しすぎます。絶対現地の人には見せたりあげたりしません!」


「知識やレシピもダメよ!わかってるわね?」



「はい!ところでそんなに厚遇してくれるって事は住む所はどれだけ僻地なんですか?」


さすがにこれだけ至れり尽くせりだと逆に不安になってくる。レインもさっき慌てていたし。



「……よ」


「はっ?」



「だから!あんたの家は大樹海の真ん中、テーブルマウンテンの上よ‼」



何だってぇぇぇぇー!







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