09 作家の罪、読者の罪
「ごめんください。作家です。おたくで起きた殺人事件を取材させてください。それを元ネタにして小説を書きますんで」
「なに言ってるんですか、ダメですよ」
「あと、実名を出してもいいですか?」
「話、聞いてます? ダメですったら!」
「……あーあ、断られた。どうしよう、ネタがないよう」
「先生、大変です」
「なに?」
「奥さんが事故死しました!」
「な、なんだって!? 私が売れないころから支えてくれた妻が? なんということだ」
「お気の毒ですね。お察しします」
「……でも、これでネタができたな」
「……え?」
「いや、妻が死んだのは、マジで悲しいけど、これで次の小説のネタができたよ、君」
「でも先生、それってどうなんですかね」
「なに言ってんの、そのほうが編集の君も助かるだろ?」
「……確かに」
◇ ◇ ◇
「今度の小説、ヒットしたな。でも、葛藤があるよ。ほんとうにこれでいいのかってね」
「何がですか? 先生」
「他人のみならず身内の不幸までネタにして、しかもヒットするわけだからなあ」
「自責の念を感じるのですか?」
「うん……。あ、そうだ!」
「なんです?」
「今度はその自責の念をネタにしよう!」
「……」
(おわり)
※この作品はフィクションです。実在の人物・事件などには一切関係ありません。




