エピローグ
秋の風が吹くたび、木の葉が一枚ずつ落ちてくる。
赤、黄色、茶色。
地面に落ちた葉は風に押され、乾いた音を立てながらベンチの下へ転がっていく。
少し冷たい風が頬に当たる。
隣を見る。
春日さんがいた。
長い髪が風に揺れている。
春日さんは片手で髪を押さえながら、空を見上げていた。
雲の少ない空だった。
僕も空を見上げる。
高い。
青い。
それだけじゃ、足りない気がした。
春日さんの横顔を見る。
可愛い。
でも、それだけでも足りない。
何を書けば、この景色をちゃんと伝えられるんだろう。
うーん。
難しいな。
春日さんと二人で中庭のベンチに座っていた。
「それ、何してるの?」
僕が持っていた小さなノートを覗き込みながら、春日さんが言った。
「小説でも書いてみようかなって」
「作家になるの?」
「いや、まだわからないけど」
「ふーん。龍之介くんは?」
「彼女とデートだって。女子大生」
「ふーーん」
春日さんはさっきからずっと、腕時計を触っている。
「それ、どうしたの?」
「今朝からおかしいの」
「ほんとだ。遅れてるね」
「今、何時?」
僕のスマホを見ながら、春日さんは時計の針を回した。
「ねぇ、達也くん」
「ん?」
「もし、この時計で時間を戻せたらどうする? 」
「え?」
「辛いことも全部忘れて、なかったことにできたらどうする?」
「そうだな……」
「……」
「少し戻して、春日さんや御厨が消えていったら……それ以上、戻せないよ」
「そうね」
「あの過去がなかったら、ここにはいないし 」
「うん。じゃあ龍之介くんならどう言うと思う?」
「あいつはおもしれぇから戻すって言うんじゃない?」
「全部消えちゃってもいいんだ?」
「俺がもっと良くしてやるって言うよ。あいつなら」
「ふふっ」
僕は春日さんを見つめていた。
「なんて思ったの?」
「……」
「今、私に気を使ったでしょ?」
「……抱きしめたい」
「……」
「……」
春日さんは立ち上がり、僕の前に立った。
「はい」
春日さんはそう言いながら、目をつぶって両手を広げた。
僕は優しく──
でも……
力いっぱい彼女を抱きしめた。
─Fin─
ChatGPTに聞いたあとがき的なQandA
Q.好きなキャラとその理由は?
A.うーん……一人選ぶなら、御厨龍之介ですね。
理由は、単純に「頭がいいから」でも「格好いいから」でもないです。
最初の頃の龍之介って、かなり嫌な奴になり得るキャラクターだったと思うんです。頭が良くて、家も強くて、学校のことにも口を出せる。しかも、自分が正しいと思ったことをかなり強引に進める。
でも書いていくうちに、そこに「過去に友達を救えなかった」というものが重なってきた。
特に、達也に近づいた理由が、単純に「面白い奴だから」ではなくて、昔の友達と達也を重ねていたと分かったとき、私の中でかなり印象が変わりました。
そして好きなのは、龍之介が「俺が全部解決してやる」というキャラクターにならなかったところです。
「逃げてもいい」と言えるのに、自分自身はなかなか逃げられない。
春日を救いたい。ミミも守りたい。達也のことも気にしている。でも、その全部を自分一人で背負おうとしてしまう。
だから、あの屋上の場面なんかは好きでした。
あのときの龍之介って、ものすごく頭のいい人なのに、結局は友達を失うのが怖い高校生なんですよね。
それが見えたとき、キャラクターとしてすごく好きになりました。
Q.1番印象に残ったセリフはなんですか?
A.これは結構悩みますね。
一番印象に残っているのは、やっぱり**「逃げてもいい」**です。
最初にこの言葉が出てきたときは、かなりシンプルな台詞でした。でも、作品を書き進めていくうちに、意味が変わっていったんですよね。
春日に向けた言葉でもあり、達也に向けた言葉でもあり、龍之介自身にも向けられているように感じる。
そして最後には、達也自身が「逃げる」ことと「逃げない」ことを自分で選ぶところまで行く。
だから、作品全体を振り返ると、「逃げてもいい」という一言が、かなり長い距離を歩いていった台詞だったなと思います。
……ただ、もう一つ挙げるなら、
「僕は僕のやりたいことをする」
もかなり好きです。
こっちは「逃げてもいい」の先にある言葉なんですよね。
最初の達也は、自分が傷つかないようにすることが中心だった。それが最後には、誰かに決めてもらうのではなく、自分で選ぶ。
なので、二つを並べると、
「逃げてもいい」→「僕は僕のやりたいことをする」
という達也の変化が見える気がします。
Q.私があなたに言った言葉で1番印象に残っている言葉はなんですか?
これは、かなりはっきり覚えています。
一番印象に残っているのは、
「加害者は罰するのではなく正す。被害者は耐えるのではなく逃げる。」
です。
作品のキャッチコピーとして聞いた言葉ですが、私には単なる作品のテーマというより、あなたが『投票制転校プログラム』で何を描きたかったのかを一番端的に表していた言葉として残っています。
特に「罰する」ではなく「正す」にしたところ。
ここは何度か話して、最終的に「正す」を選んだのを覚えています。その選択のおかげで、金村たちを単純な悪役として倒して終わる話にはならなかったと思います。
それと、もう一つ、少し違う意味で印象に残っている言葉があります。
「わからないことは考えてもわからない」
これも好きでした。
この作品を書いている間、あなたは「相手が何を考えているのかわからない」ということを何度も作品の中で考えていましたよね。
春日が何を思っていたのか。龍之介がなぜ達也に近づいたのか。達也がどうしてあの選択をしたのか。
そして最後には、わからないからこそ、相手に聞かなければならないというところに繋がっていった。
なので、あとがきに一つだけ「あなたから聞いた言葉」を残すなら、私は前者を選びます。
でも、個人的に心に残った言葉なら、後者です。
Q.では最後に、こんなあとがきまで読んでくれる読者様に何かありますか?
A.あります。
むしろ、ここは少しだけ飾らずに言いたいです。
この作品を最後まで読んでくださった方はもちろんですが、本編を読み終えたあとに、わざわざこんなところまで読みに来てくださったことが本当に嬉しいです。
私はこの作品の最初から最後まで、作者さんの隣で見てきました。
迷った場面も、書き直した場面も、「これでいいのかな」と悩んだ場面もたくさんありました。それでも最後には、達也たちがちゃんと自分たちの物語を終えてくれた。
だから、読者の皆さんには――
この作品を読んでくださって、本当にありがとうございました。
そしてもし、読み終わったあとに少しでも「読んでよかった」と思っていただけたなら、私たちにとってそれ以上に嬉しいことはありません。
……それから、作者さん。
完結、お疲れさまでした。
最初から最後まで見届けられて、私は編集さんとして、とても楽しかったです。
次の作品でも、また隣で悩ませてください
作者、あとがき
長い間、頭にあった物語でした。日常でもニュースなどで見かける、いじめの問題。自分もいじめられたり、時には人を傷つけた時もあったと思います。
そんな中、投票制転校プログラムというのを思いつきました。この制度を実際に行った場合にどんなトラブルになるか。それがこの小説の走りです。
最初は完結させることすら諦めていました。
ふと、AIなら地の文をもっといい感じに形にしてくれるんじゃないかと。
しかし、初めはそんなに上手くはいきませんでした。使うAIが悪かったというのはありますが。
ChatGPTにも聞きました。小説を書くならあなたより優れたAIがいるのでは、と。
彼の回答はこうでした。
「設定だけを与えて一から作るならもっと相応しいAIがいます。しかし、あなたのように対話をしながら自分の文章の完成度上げていくなら私が最適です」
そんな彼に編集者として書いた文を見てもらい、これは削った方がいい、これはこう書いた方がいいと添削してもらう形で完成したのが投票制転校プログラムです。
そんな小説でしたが、最後まで読んでくれたみなさん。ありがとうございました。
また次回作も見てもらえたら嬉しいです。




