推し活したい
視点戻ります
おはようございます。リリアリス様。今日は何をなさいますか?」
マーサが着替えを手伝いながら尋ねてきた。
いや、着替えは一人でできるんだけどね。泣くのよ。泣くの。
マーサめ!泣けば私が折れると学習しおってからに!いいか、サラには伝授するなよ?
「朝食を食べたら街へ行くわ」
「分かりました。ではカイを呼びます」
「あ、私の予算から金貨1枚用意しておいてもらえる?」
金貨1枚は、銅貨千枚だ。銅貨1枚が100円、10枚で大銅貨1枚千円。100枚で銀貨1枚1万円。1000枚は金貨1枚で10万円。
10万円もあればたぶん足りるよね。
護衛係のカイを引き連れ街に出る。
「じゃ、ギルドに行きますか!」
「え?また、ギルドですか?」
カイがびくりと肩を震わせた。
なんで?
彼ぴっぴに会えるから嬉しくないの?なんで、ちょっと気まずそうな顔してるのかな?
まぁ、いいや。
まずは受付のお姉さんのところへ……。
と、ギルドに足を踏み入れた途端、ギルド長につかまった。
「俺に会いに来たのか?」
「え?ギルド長……」
マントも鎧も脱いで、シャツ1枚。
や、やばい。何これ……。
「好き……」
「は?」
思わず、口から心の声が漏れ出す。
この世のものとは思えない、まるで二次元から飛び出したかのような完璧な筋肉を目の当たりにしてパニック。
推せる。尊い。やばい。拝む、拝んでいいですか!
「お、俺が、す、好き?」
「昨日は、鎧を着ていたから気が付かなかったけれど……好き、大好き!」
ぱっと顔を上げると、ギルド長のレッドが真っ赤な顔をしている。
「アリス……お前、俺のこと気が付いたのか?」
はい?
なぜそんなに真っ赤な顔?怒ってる?
はっ!カイという存在がいるのに、好きなんて口説き文句みたいなこと口にしちゃった。
「違う、そういう意味の好きじゃないから!私、レッドに男性に恋愛的な気持ちを向けたりしないっ!好きっていうのは、この筋肉。推せる。鍛え方が好きってことっ!」
慌てて否定する。
「は?」
すんっと、レッドの顔が無になる。
「だって、そうでしょう?これだけの筋肉を付けるためには、並大抵じゃないと思うの。それに、無駄がないつき方をしてるわ。ねぇ、カイもそう思うわよね?素晴らしい筋肉よね?」
熱弁をふるいながらカイに同意を求める。
「あー、はい……あの、本当に……ギルド長を好きになることはないんですか?」
あら?心配してるの?
「もちろんよ。大丈夫よ。安心して。ぜーーーーったいに、好きになったりしないから!絶対の絶対よ」
カイの恋人にちょっかい出したりしないからね!と、こぶしを握り締める。
「はぁー、もう、やめてくれ、そこまで強調されると……」
レッドが受付カウンターに両手をついてうなだれている。
あ。男として魅力がないと、主張してるみたいなものになるのか……?
「ほ、ほら、だから、私は人妻だしね?夫以外の男性を好きになるわけないでしょ?」
レッドがこっちを見た。
「じゃあ、夫のことは好きなのか?」
う。それを言われると辛いな。何とも言いようがない。まだ会ったこともないなんて……。
そっと目をそらす。