★騎士団長視点★
騎士団長視点
数日後、リリアリス様……奥様が騎士たちにお礼を述べに来た後のことだ。
何やら争うような声が聞こえてきて駆け付けた訓練場横の建物の裏。
目をかけている剣の腕が立つ騎士が呆然と立ち尽くし、その前に二人の騎士が膝をついていた。
やらかしたか!
光属性の騎士は、いろいろと言われることもあった。見つけ次第注意をしているが、私の目の届かないところでも嫌がらせがあったのだろう。
耐え切れず、手を出してしまったのか……!失策だ。
「何があった……」
聞かずとも大方想像通りなのだろう。光属性の騎士パルの実力は本物だ。攻撃魔法が使えなくとも騎士の一人や二人瞬殺できる。
「あ、いえ、あの……実は……」
口を開いたのはパルだ。このまま謝罪し退団すると言い出すことを想像し、どうするべきか頭の中で考えを巡らせていると、膝をついた騎士が口を開いた。
「い、言うな!」
「言わないでくれ!」
は?
「な、何もなかった。そうだな?そうだろ、パル!」
どういうことだ?こいつらはパルをよく思ってなかったはずだ。なぜかばうようなことを言い出すのか?
「何が、あった?パル」
強い口調で尋ねる。
パルはぐっとこぶしを力強く握っている。
「……団長……手合わせをしてもらえませんか……」
何かを決意したような表情だ。
訳が分からない。いきなりどうして私と手合わせを?いくらパルの剣の腕が立つとはいえ、まだ私には及ばない。
やはりやめる気なのか?それとも、私に滅多打ちにされることで許しを請うつもりか?だが、膝をついている二人がパルを責める気はなさそうだが?
「分かった。来い。お前らもだ」
膝をついていた二人はよろよろと立ち上がった。なぜかパルが後ろから二人の肩に手を乗せて歩き始める。
仲良くなったのか?
訓練場で場所を開けさせる。
「おいおい、パルが団長と手合わせするらしいぞ」
「ちょっと剣の腕が立つからって、いい気になってんじゃないのか?」
すぐに騎士たちは訓練の手を止めて私とパルの手合わせを見学することにしたようだ。
「魔法もありでお願いします」
向かい合って剣を構えると、パルが口を開いた。
「馬鹿なことを……お前は攻撃魔法が使えないだろう?」
その言葉に答えず、パルが言った。
「剣が団長の体のどこかに触れたら僕の勝ちにしてもらえませんか」
「ん?ああ、分かった。流石に、魔法ありなら、お前にまるっきり勝ち目はないだろうからな……」
攻撃魔法。遠距離から攻撃できるのだ。剣しか使えないパルからすれば、一度距離を取られてしまえばまるっきり勝ち目がなくなってしまうだろう。
「では、3数えたらスタートだ。1,2,3」
すぐに剣を振ってくるだろうと予想。それを薙いでパルがバランスを崩したすきに距離を取り攻撃魔法で終わりだろう。
などと、油断したのが間違いだったのだ。
「【閃光弾】」
目の前が真っ白になって何も見えなくなった。
驚き動きが止まった私の肩に、ぽんっと何かが当たる感触。
「あはは……見よう見まねで……できた……けど、魔力切れ……駄目だ」
パルは私に剣を当てると、魔力切れでそのまま倒れた。
目が、見えない。
暫く呆然と立ち尽くしていると、周りの声が聞こえてきた。
「おい、何があったんだ?パルが倒れてるぞ」
「団長が瞬殺したのか?流石団長だ!」
違う。そうじゃない。
負けたのは私の方だ。
どうやら、周りの人間もあの瞬間は何があったのか見えなかったようだ。
暫くして視力が戻ってくる。
だが、精神はいまだに現実に戻れないでいる。
「まさか……」
光魔法にこのような使い方があったとは……。
魔物相手にどれだけ通用するかわからない。視力ではない感覚で敵の位置をとらえる魔物もいる。が……。
もし、視力に頼っている魔物が相手ならば……!
ぞくぞくと何とも言えない感覚に体が震える。
革命だ。
光属性魔法の革命。
運ばれていくパルを見ながら、リリアリス様の顔が思い浮かんだ。
生地こそ良いものだが平民が切るようなシンプルなワンピースを着て、助けたお礼を言いに来た。
副団長の言っていたような悪役令嬢ではないと、それだけで分かった。
この勝負はそのすぐ後の出来事だ。今、パルは見よう見まねだとつぶやいていた。
谷底から打ち上げられた光。
そして、今の目つぶしの光。
誰だ。光属性魔法は役立たずだと言い出したのは。
なんだ、これは。そう、興奮だ。言い知れぬ興奮が体中を駆け巡っている。
ああ、アルフレッド様。あなたの娶った妻は……悪役令嬢ではありません。
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