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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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命の重み 2

 ということで、盗賊が出没するという近くの街道をお散歩して(おび)き出す事にしたよ。

 主に狙われるのは、護衛の手薄な隊商って話だけど、少人数の旅人も標的になりやすいらしいからね。


 少人数の旅人かぁ……確かに狙いたくなる気持ちも分かるよ。


 例えばカルラ達三人がトコトコ旅してたら、金銭的な価値とか関係なく身ぐるみ剥ぎたくなるもの。

 それで、とりあえず放置して「これからどうしたらいいのっ!?」ってあたふたする姿を観察したり、暴漢に襲われる様子を――――。



「よお姉ちゃん、こんなとこを一人でうろついてたら危ないぜ?

 俺達が安全な場所までエスコートしてやろうか?」


「あ、ああ、そいつはいいなっ。ナイスなアイデアだぜ相棒……!」



 ほら、そんな妄想してたら簡単にテンプレ雑魚みたいな二人組が釣れたよ。

 いつものフード付きの外套は脱いでるから、一目で僕が女だって分かったみたいだね。


 でも、左腕にはバックラー着けてるし、腰にはダガーを装備してることも分かるはずなのに、そこは警戒しないのかな?

 まあいいや。目的通り釣れたんだから、早く聞き出そっと。



「警戒しなくても大丈夫だぜ。俺達は何も――」


「<チャーム>」



 情報を聞き出す方法といえば様々な手が考えられるだろう。

 前にカルラがやっていたような暴力によるもの、何かしらの材料を用意して交渉するもの等々。


 けれど、相手を殺してしまう可能性や、手っ取り早さ。それに嘘の可能性もあって、どれも面倒な方法に思えた。


 そこで便利な魔法の登場ってわけだよ。

 魅了状態にしてしまえば、相手はこちらをかなり親しい間柄だと認識するから、知ってることはほとんど話すようになる。


 ……ただ、効果時間が短いらしいから、そこは注意みたいだね。

 "らしい"っていうのは、対象との魔法関係のステータス差や耐性スキルも考慮して決まるみたいで、使ってみないと分からないんだよ。



 さてさて、どれくらい持つのかな?

 数分くらいあれば大体の場所は聞き出せるし、その近くでまた捕まえればいいよね。



「んと、これなら二百年はいけるかな……え? 二百、年?」



 どうやら雑魚の盗賊程度だったら、一生涯魅了状態に出来るみたいだね。

 完全に杞憂(きゆう)だったよ。



「んあ? ああ、お前か。どうしたんだ、こんなところで?

 うちのアジト割と近いんだがよお、寄ってくか? てかそうだよ、お前もうちに入れよ。

 (かしら)には俺から話通すからよぉ、な? いいだろ?」


「あぁ、ああ。いいな、それはいいなぁ。(かしら)も喜ぶし、俺らも嬉しいなあ!」


「うげ……。えぇと、じゃあ入ろうかな?

 そのアジト? って場所に連れてってくれる?」


「おう!」



 ごつい顔には似合わない、やけに人懐っこい笑顔が返ってきたよ。

 とりあえず怪訝そうな様子も皆無だし、拠点には案内してくれるから目的達成ってことになるね。


 でも……うん、長期間この状態は絶対に嫌だ。むしろ今すぐに解除したくなってきたよ。




 ***




「おい、交代の時間には早くないか? サボってるとまたお(かしら)にどやされるぞ」



 街道の脇に生い茂る林を抜けた先、岩山に空いた穴から盗賊の仲間が出てきた。

 入口は人一人がやっと通れるくらいだが、マップ情報を見れば中は意外と広いようなので、ここが拠点で間違いないのだろう。


 まあ広いと言っても、コボルトの坑道と比べたら一畳間みたいなものだけど。



「しかも女連れ込む気かよ……殺されても知らねぇぞ? マジで」


「ダチが仲間になりたいってんだから固いこと言うなよぉ」


「はあ? ダチって、その女のことか? ……何でもいいけどよ。

 今は冒険者が攻めてくるってピリついてるんだぜ、ってのに――」


「いいじゃないか。ちゃんと見てみろよ、こいつはお目にかかったこともないくらいの上玉だぜ?

 それにお頭だって、捕まえた女冒険者でお楽しみ中なんだ。俺らだって息抜きくらいさせろっての」



 話しを聞いていたらしい盗賊が、もう一人洞穴から出てきた。

 この二人が見張り役ってところかな。


 いや、そんなことよりも"捕まえた女冒険者"って、もしかしてリーゼのことかな?



「あの、その女冒険者って。

 ピンク髪でツインテールの、何かこう……守ってあげたくなるって感じの美少女ですか?」


「あ、あぁ。俺はちらっと見ただけだが、そんな風? だったような…………」



 おっと、正解っぽいね。

 拠点に先回りして待ってようと思ったら、もう捕まってたか~。


 よし、なら彼らはもう要らないね。早く片付けて会いに行こ~。



「おいこいつ、冒険者の仲間なんじゃ――」


「はい、案内はもういいよ。ここまでありがとねー」



 感謝の気持ちなんてこれっぽっちもない言葉とともに、腕を一振りする。

 それだけで鮮血が飛び散り、辺りを赤く染め上げた。


 四人くらいだったらダガーでも同時にヤれるもんだね。

 騒がれてないし、ゆっくりと探索できるかな。



「<クリア>。えっと、盗賊の数は全部で三十くらいか。

 それで、リーゼはどこにいるん、だろう…………あれ? 今、サラッと重大な事しなかった?」



 改めて状況を確認すれば、動かなくなった肉塊が四つ転がっている。

 何気に人を殺したのって初めてじゃないかな? は、ハハハ…………。

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