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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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命の重み 1

 翌日、僕は今日も冒険者ギルドにいた。


 何か用事があるわけでもないし、二人だって来ないのは分かってるのにね。

 少なくなってた食料とか消耗品とか、買い物が終わったら暇になってつい来ちゃったよ。



 というか、もう葬式だなんてせっかちだよね?

 何なら「できれば今日中に埋葬してやりたいが……」って、昨日ニコラが呟いてたっけ。



「やっぱり時間が経つとアンデッド化しちゃうからなのかな。

 それにしても……依頼って、改めて見ると無駄に多いよね」



 一人、依頼が貼り出された掲示板の前でボソボソと呟く。

 大抵の冒険者は朝一で依頼を決めてしまうため、周りには誰もいない。


 なので心置きなく独り言が出来るんだよ。



 でも裏を返せば、依頼を受ける人間もいないというわけで。

 この残された依頼達は放置が決定的だ。


 常時受け付けてる依頼もあるから全てがそうってわけじゃないけど、この暇な時間を使って一つくらい引き受けてみてもいいかもしれない。



「――と思ったけど、面白そうなものはないしなぁ。んー、うん。やっぱりやめた」



 よく考えると金には困ってないし、報酬に魅力を感じるわけがないよねぇ。

 そういえば、フローラとニコラは冒険者を続けるのかな? もし、二人が辞めるんだったら僕も――――。



「あ、あのぉ?」


「へ? えーと……たしか、受付の?」



 頭に浮かんだ事をただボーっと考えていたら、いつも通りおどおどした受付嬢に話しかけられた。


 ギルドの中ではいつもニコラかフローラが一緒だったから、隠密スキルを切るのが癖になってるみたいだ。

 無意識でやっちゃうから、誰にも話しかけられないと油断してたよ。癖って怖いね。



「そ、その、アイリスさんっ、少々お時間の方……よろしいでしょうか?」


「えぇまぁ、大丈夫ですけど……ボク、何かしました?」


「い、いえっ、そういうことではないんです……っ。

 えとその……こ、こちらの依頼にご興味は、ありませんか?」



【討伐:盗賊拠点の探索および制圧】

 必須ランク:F以上

 報酬:銀貨十枚~金貨二枚

 備考:首領の討伐で追加報酬あり。



 渡されたのはこんな依頼書だった。


 ふむふむ、盗賊かぁ。モンスターだけじゃなくて、人間も討伐対象になるんだね。

 いや、もしかしたら獣人の盗賊ってことかも? でもその場合は獣人じゃなくてモンスターになるのかな? ……ややこしい。


 って、そんな事はいいや。それよりも、あっちから依頼を持って来るなんて初めてだ。

 この依頼に何かあるのかな? 変わったところといえば「報酬に幅があるなぁ」って、くらいだけど。



「あんまりないですね。

 これ普通の依頼に見えますけど、何か問題でもあるんですか?」


「い、いえいえっ! 依頼自体に問題はありません!

 ……ただ、先日『輝く花』の方々が受注されたのですが、少々心配で…………」


「はぁ、そうなんですか。えっと、その『輝く花』というのは?」


「え? あ、あの、アルバンさんやカールさん……それにリーゼさん達のパーティ、です……」



 リーゼ? あー彼女達のことね。そういえばパーティ名聞いてなかったよ。

 あるばん? とか、かーる? って名前には聞き覚えないから、会ったことがないかどうでもいいモブの二択だね。



「ギ、ギルド内でも何度かお話されている姿をお見かけしたと思いましたが……親しい関係では、あ、ありませんでしたか?」


「そんなことないです、とっても仲良しですよぉ?

 へぇ、リーゼさんが…………うん、決めました。やっぱり受けます、この依頼」



 この前は逃げられちゃったけど、もう一度こちらのパーティに誘ってみようかな。

 そうすれば、最悪二人がやめる事になっても、リーゼと一緒に続けられるしね~。



「受けてもらえますか!? はぁ、よかった……。ぁ、そ、それでは説明いたします。

 アイリスさん達には盗賊の拠点探索までを担当していただきます。

 その後の制圧は高ランクの方々に担当していただく予定になっておりますので、危険は少ない、のですが……」


「ですが……?」


「『輝く花』は先日のワイバーンとの遭遇戦により、メンバーがまたお二人も変わっていますし……。

 なにより皆さんの雰囲気が、その……あまりよろしくなかったのが心配でして…………」



 こんな感じで、依頼とリーゼのパーティについての話を聞いた。


 他にも色々言ってたけど、重要なのはここくらいのもんだね。

 パーティのフインキが良くない? それは抜け時って事だよ。


 意外と楽に勧誘出来ちゃうかもな~。

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