酒場の看板娘達 9
「はい、お待ちどおさま」
注文した料理をカルラが運んできてくれた。
いつも通りと言ってしまえるくらいには、すっかりと馴染んだ光景。
でも、今日のテーブルは少し寂しく、それは彼女も気になっているようだ。
「あのドワーフはいないのね? ……べ、べつにいなくても構わないのよ?
ただ、最近は毎日一緒にきてるから少し気になったってだけでっ」
「…………うん」
あんなことがあったため、お泊り会は中止。
加えて、フローラのメンタルが心配なのと、葬儀の段取りを手伝うとかでニコラは残ることになった。
僕はいいのかって? フローラが気にはなるけど……正直、メンドーなのが上回ったからパスしたよ。
それと、ゆっくり考えたいこともあるし。
「元気がないわね……、なにかあったのかしら?
あ、分かったわ。ふふん、当ててあげましょうか?
ドワーフがなにかやらかしたんでしょう? どんくさいドワーフだもの、失敗ばかりして――」
「子供……」
「え? こども……? 子供がどうしたの?」
「子供っていいよねぇ……」
「っ!!?」
事切れてもう動かない父親に、縋りついて泣く娘(美少女)。
う~ん、いいよね~。何と言うか、こう「十分生きたんだな」って、それだけで思えるもの。
前にちょっと試してみてもいいかもなーとは思ったけど、これは本格的に考えてみてもいいかもね。
たかだか親ってだけで、あそこまで慕ってもらえるのならお手軽だし。
「とはいえ相手が必要な事だし、誰でもいいは……出来れば最終手段にしたいかな。
ってことで、今は食事にしよう――ん、アレ? カルラがいたような気がしたけど、夢だった?」
心ここにあらずで返事してたから、怒って厨房に帰っちゃったかな?
そうなると、きっと拗ねてるだろうなぁ。
などと考えながら一度店内をぐるっと見回してみれば、アンジェの手を取ってこちらに向かってくる彼女の姿があった。
「いっ、痛いよカルラちゃん!? 急にどうしたの? わたし、次のお料理運ばないと――」
「い、いいから黙ってついてきなさい!!」
何でか知らないけど、アンジェを無理矢理連行してくるみたいだね…………まっ、まさか!?
僕が考えてた事を察して「それならアンジェが適任じゃない!」って、差し出してくれるってコト!?
確かに、現状ならアンジェが一番というか、アンジェ以外に選択肢がないけど、公衆の面前で子作りの相手紹介は恥ずかしいなぁ……///。
「アイリスっ!」
「ひゃいっ!」
「あの、その……ご、ごめんなさいっ!! あやまって済むことじゃないのは分かってるわっ。
でも前にも話した通り、この子も悪気があったわけじゃないのよ!?
ちゃんと責任は取らせるから、お願いよっ! 許してくれないかしら……?」
へ? なに? ……どういう流れ?
何故か、カルラが綺麗な直角のお辞儀をしてるんだけど。
「カルラちゃん???」
「アイリス、赤ちゃんできちゃったのよね? やっぱりあの時……っ。
ううん、言わなくても大丈夫よ!
あたし知ってるもの……キスしたら赤ちゃんができるって!」
「「!!??」」
エルフってそういう繁殖方法なのかと一瞬考えたけど、隣のアンジェも絶句してるからそれはないっぽい。
カルラってば意外と純真なんだね。まぁコウノトリとかキャベツ畑よりは、人から産まれるって分かってるだけマシかも?
それにしてもキスかぁ……あれはブルクハルトでの話だったよね。
色々と勘違いが重なって起きたものだったけど、ここにきて新たな勘違いを生み出してるよ。
さーてと、これはどうしたものかなぁ。
「ほらっ、あんたも頭下げてっ! 」
「え、えっとね? カルラちゃん、キスだけで赤ちゃんはできな――って、えっ!?
アイリスさんに赤ちゃんがっ!?」
「……いいんだよ、二人とも気にしないでいいの。
アンジェにはその気がなかったんだから、責任なんて全然……うん。
この子はボク一人で育てていくからね…………ぅぅっ」
「アイリスさんっ!?」
とりあえず悪乗りしてみた。
やっぱりアンジェはいじられてる時の方が輝く気がするよ。
この後、満足するまで二人のやり取りを楽しんだから、誤解は解いておいた。
そうしたら、カルラが「じゃあ、赤ちゃんってどうやってできるの?」とか疑問を持ち始めてたけど、そういう性教育は誰かに……ん、待てよ?
いっそのこと、アンジェと僕で実演しながら教えるって事にすれば、いいんじゃないかな?
経緯はどうあれ、一度ヤッちゃえば後はなし崩し的にイケると思うんだけど……どうだろう?




