香水
最近愚かにも私は、仕事中に興奮する事態に陥っている。
これはもはや、顔が緩みきって、人に見せられる風貌ではなくなっている始末だ。
恐ろしくもそのような状態にさせるのは、私のオアシスである、上司たちによるものだ。
彼らはとても高貴な香りを漂わせて、私を惑わせてくる。
いや、もはや私だけではない。
職場全体が、すでにあの上司たちによって魅了されているに違いなかった。
中でも特に神秘的な香りを放っているのが、四人の課長のうち二人である。
やんちゃ系スパルタ、つり目の受け&攻め。
ちょい怖の兄さん、攻めっぽい受け。
このお二人、とてつもなく、いい香りを放っている。
ほどよい香水の香りは私の鼻をくすぐり、妄想を掻き立てた。
先日そんなお二人が、仲良く退社するところを目撃してしまった。
いつも残業で私よりも遅く退社しているにも関わらず、その日に限って二人一緒に、しかも“仲良く、楽しそうに”オフィスをあとにする。
私はそんなお二人とすれ違うことに成功した。
なんともラッキーだ。神の思し召しだ。
「お疲れさまでした」
「おつかれ」
「おう!おつかれっ!」
おいおい。
今やんちゃ系課長は、私に手を振らなかっただろうか。
いや、振った。確実に私に対して手を振ってきた。
私はそんなことをされても動じない。
動じてはならない。
私は冷静さを装ってその場を後にする。
やんちゃ系課長は少しチャラい。そのため誰にでも気さくにそんな態度をとる。
だがそれは、特定の人物を困らせることにもなっていた……。
「おつかれさまです」
「おつかれ」
「おう!おつかれっ!」
課長二人は楽しそうに会話をしながら、車が止めてある地下駐車場へ向かっていた。
しかし途中からちょい怖課長の様子がおかしくなる。
機嫌でも損ねたのか、やんちゃ系課長が話しかけても無視し始めた。
「なに、どうしたんだよ。機嫌悪いじゃん」
「別に」
「言わなきゃわかんねーだろ、なんだよ」
「……さっき女性社員に手……振ってた。好きなの?」
「………え、お前、そんなこと気にしてたの?」
「悪いかよ」
急にちょい怖課長の腕を引いて、自分の車へ押し込むやんちゃ系課長。
少し乱暴に車へ連れ込まれたちょい怖課長は戸惑う。
「ここまでしないと、わかんない?」
そう言って、やんちゃ系課長はちょい怖課長を車の中で……。
私は先に退社したお二人のことで、頭がいっぱいだった。
けれど残念なことに、私の働くオフィスに地下駐車場は存在しない。
お二人は近くのパーキングに車を停めているらしく、そこまで歩いていくのだろう。
そんな人目のつくパーキングでカー◯ックスなど、できるわけもない。
どちらかの家へ赴いてくれることを祈るばかりではあるが、それを確認できないのは口惜しいものだ。




