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俺が主人公になる話  作者: あんぷ
第二章:王都ビアラム
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17/17

同窓会

 ***

 

 

 さてと、立ち上がってきたジャームを見て対処法を考える。

 対処法、と言っても、今回もシンプルに俺は殴るしかない。

 俺は殴り合いを始めたのなんて、最近も最近。

 技といえるようなものはもっていない。

 対して相手も殴りメインの能力のため、経験が違いすぎる。

 拳の質は向こうが上だ。

 見ていた感じ、速さも相手が上。

 俺が上回っている要素といえば……。

 (硬さか……)

 どっしり構えていたジャームを殴って飛ばせた、ということは、単純な硬さは俺が勝っているということだ。(硬さってえってぃな意味じゃないよ)

 拳を合わせることができれば俺が勝つ可能性は十分ある。

 向こうも呼吸を整え、、と思ったら、いきなり飛び向かってきた。

 (はや……!)

 俺は咄嗟に身を守る。

 「むぅ、やはり硬い。神力量が半端ないな」 

 俺はその場で拳を防ぐので手一杯、反撃できず守りばかりでいた。

 相手の拳は、素早く、この眼がなければすでに何発も直撃して負けていただろう。

 しかし、俺は神眼で数秒先の未来が見える。

 何とかこれでスキを見つけ一発拳を……と思うが、

 (はやすぎんだろ!)

 マジで防御しかできない。

 さっきみたいにべらべらとなんか喋ってくれよ!

 マジ顔で拳をオラオラ連打してくる。

 助けてフルトさん!

 と思っていると、フルトさんが技を打つ未来が視えた。

 俺は後退すると、ジャームが構える。

 「ファイヤー!」

 フルトさんは技を、ジャームの後(・)方(・)に打ち込む。

 「あ?」

 ジャームさんは思わず一瞬振り向く。

 それは神眼で見ていた。

 拳に力を込め、こちらに視線を戻したジャームにアッパーを決める。

 「ぐぅッ!」

 ジャームが唸り反撃してくる。

 俺は、それを地面を蹴り遠く後方へよける。

 空振り、そしてフルトさんが再びジャームに炎を投げつける。

 「ガァラ!」

 「よしっす!」

 ジャームの身体が燃え、悶えている。

 ジャームは常に能力を発動しているわけではないようだ。

 スキを作れば、フルトさんの攻撃も通る……!

 「この調子で……、いける……!」

 そう思ったのも束の間、焼け焦げたジャームの皮膚が再(・)生(・)していく。

 「はぁ!?なんだよ、それ!」

 「なにって、見ての通り、”再生”だが?こんなのある程度の能力者なら使えるぞ」

 ジャームはなんら大したことのなさそうに言う。

 「まぁ、服の再生は無理だがな」

 そういってジャームは服をびりびりと破く。

 ごつい筋肉があらわになる。

 鍛えぬかれた身体。

 数か月しごかれただけの俺のものとはけた違いの威圧感を放っている。

 「そんなの聞いてないですよ」

 「あれ、言ってなかったっす?」

 フルトさんがぽかんとしている。

 どうやら本当に常識なことらしい。

 「まぁ使えるのなんて、こっちの方じゃせいぜいザムさんとダーフさんくらいっすけど」

 「あんまし聞きたくない情報ですね……」

 なんとも非常識な常識だ。

 実力でいうならジャームは五大羊会並み、もしかしたらそれ以上……ってか?

 「再生ってのは神力の消耗がでかいんす。だから、使うこと自体はレイラさんとかもできるっすけど、何回かが限界っす。まともに使えるのがその二人ってだけっす」

 「つまり、あいつは神力量に相当の自信ありってことですか?」

 「そういうことになるっす」

 ”再生”を使えること自体はそこまで驚くことではないらしい。

 問題は、相手がどれだけの回数行えるか。

 「今みたいのを繰り返せば、そのうち、いつかは神力切れを起こすはずっす」

 「なら、それを狙っていく形で決定ですね」

 そうして、俺はジャームに殴りかかる。

 避けられ、再び反撃される。

 (やっぱ速さは向こうが上か……)

 なんとか神眼で耐えしのぐ。

 が、ここで俺は違和感を覚える。

 (なんで、攻撃の時は神眼で追えず、防御では追えるんだ?)

 俺の神眼は常時発動している。

 しっかりジャームの避ける姿も見えており、それに合わせた攻撃をしている。

 それらは全てかわされるのに、守りに入ると全てに対応できてしまう。

 (こいつ、俺への攻撃の時は手加減している……!?)

 俺は、ジャームの攻撃に耐えているのでなく、ただ、耐えさせられているだけ……!?

 だが、なぜだ?

 俺の攻撃を避けるときのあのスピードなら、とっくに決着はついているだろう。

 こいつにはなにか、目的が……?

 だが、そんなことどうでもいい。

 こいつは俺を完全になめ切っている。

 なら、それを利用させてもらおうじゃないか。

 こいつは、俺への攻撃の時は手を抜く。

 俺が攻撃するときは、警戒し、スピードを上げる。

 俺が攻撃すると気づかれずに、さっきのような不意打ちならこいつに攻撃できるのだ。

 だが、フルトさんを使った不意打ちはもう難しそうだ。

 同じ手が二度通じるような相手には見えない。

 なら……。

 (俺が攻撃を悟られずに、攻撃するしかないか……)

 殺意を感じさせず、殺すのと同じ感じか?

 自分で考えたはいいものも、どうやってそんなことするんだよ……。

 俺もノエルみたいに、時間を止められたらなぁ……。

 いや、考えろ、俺。

 攻撃を受けている間、時間だけはいくらでもある。 

 なにかないか……。

 なにか……。

 「ファイアー!」

 考えている間にフルトさんがジャームに炎を投げ込むのが見えた。

 (あ……!)

 まさか、攻撃するまいと考える瞬間に攻撃すればいいんだ!

 そうして俺はジャームの方に炎も構わず突っ込む。

 熱い。痛い。

 皮膚がどんどんはがれていく。

 何やってんすかー!というフルトさんの声が聞こえる気がする。

 こっちだって割と真面目に考えた結果やってんだ!

 炎でジャームからはこっちが見えない。

 「炎は効かないって……!」

 俺の攻撃にジャームが気づく。

 だが、それは、俺が攻撃した後のことだった。

 みぞおちに一発ぶち込む。

 「ルガァ!」

 ジャームが思わず唸る。

 「フルトさん!」

 「お、おーけーっす!ファイアー!?」

 俺はまた、炎とともに攻撃する。

 もはや感覚はない。

 だから、痛みなんて気にせずに、思いっきし打ち込める。

 「うがぁぁぁ!」

 「おっらぁ!」

 燃えているジャームを俺は全力で殴りこむ。

 「これで終わりだぁぁぁ!」

 そうしてジャームを吹き飛ばした。

 壁にジャームがすっ飛ぶ。 

 息が苦しい。

 できてるのか……、息。

 「や、やったっすね!」

 おい、フルトさん!

 それは、フラグ……。

 「あ、ルーファ!」

 そうして俺はジャームの状態を確認する前に、倒れた。



 ***



 「る、ルーファ!しっかりするっす!」

 重症のルーファのもとへフルトは駆け寄る。

 大丈夫そうだ。

 火傷はなかなかのものだが、本部に戻ればどうってことのないものだった。

 これなら治る。だが、応急措置はしておこう……。

 まさか、こんな無茶ができるとは。

 ルーファの神力量は膨大だ。

 しかし、まだこいつそれを使いこなせていない。

 ザムを倒した、新人が来ると聞いたから、どんな天才がくるのだろうと思った。

 こいつは、天才というより、ただひたすらに一生懸命なのだと思った。

 力を振りかざさず、ひたむきに。

 こいつは自分が弱いことを知っている、強さを持っている。

 (だから俺は、こいつを気に入ったっす……!)

 あ(・)い(・)つ(・)はどうしてルーファを気に留めるかは知らないが、せめて自分のできる範囲で”先輩”を務めようと思った。

 「まさか……、そいつがそんな無茶できるとはね……」

 声をする方を向くと、ジャームが全回復した状態で立っていた。

 「俺もびっくりっす……、お前が変態趣味だったなんて……」

 ジャームは裸だった。

 「しょうがないだろ、服は直せないんだから」

 やれやれとジャームは言う。

 「時間をたっぷり稼ごうとしたのに、こんな形で終わるとは……全く予想外だ」

 「やっぱり、手を抜いてたんすね」

 「おいおい、それは、お(・)互(・)い(・)様(・)だろ」

 そうジャームが目を向けてくる。

 「お互い様なんて、俺は全力でやったっすよ」

 「あーあーそういう芝居はいいって。こっちとしてはもう覚悟できてんだからさ。ホントはもっと時間を稼ぎたかったけど」

 「安心するっす。レインには手をださないっす」

 「それをどうやって証明できる?」

 ジャームが睨んでくる。 

 「契約、誓約、盟約、指切りげんまん、なんでも”誓い”すればいいっす。この世界には、便利なルールがあるんすから」

 「手を出さないなら、なんでここに来た」

 「レイラさんとルーファは、そりゃあんたとレインを捕まえるためっすけど……、俺は違うっす」

 ひざ元で寝ているルーファを見て言う。

 「俺は最初っから、ルーファのサポートのために来たっす。死なないように、ちゃんと成長できるように」

 「……」 

 ジャームはまだ疑問を持った顔をしている。

 「レイラさんについて行ったら、ルーファがどうなるか見ておくことができない。だから、こっちに残ったっす」

 「このルーキー君は、そんなに重要なのか?」

 「ああっす」

 俺はこいつの頭をなでて言う。 

 「この子は俺の、可愛い後輩ちゃんなんすから」

 「……、そうかい」

 ジャームははぁとため息をつく。 

 「で、本当は?」

 再び聞いてきた。

 やっぱり気づいていたか。

 「俺としては、本当のことを言ったっすけどね。もう後は任せるっす」

 そういって俺はあいつに代わった。

 

 

 ***



 後は任せるといったフルトは、見た目がどんどんと変わっていった。

 大国にいたころ、何度も目にしたあの化け物に。

 「やっぱあんたかよ……」

 「そんなひどい顔するなよ、ジャーム。傷つくじゃないか」

 さっきまでチャラい若造だった者が、顔のさわやかな好青年へと変わった。

 「せっかくなんだから、同窓会と行こうじゃないか」

 何度も目にしたこいつはそう。

 「お手柔らかに頼みたいな、フルバ・ドットさんよぉ」

 大(・)国(・)ナ(・)ン(・)バ(・)ー(・)1(・)、フルバ・ドット。

 正真正銘の化け物だ。

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