004 インストール
「い、いたの?」
「うん。深呼吸して、スコープに車が入ったら撃って」
「うん……」
窓から、黒髪メガネの少女はロケット・ランチャーを取り出す。そして、その弾丸をパコンッという音とともに吹き飛ばす。
結果、
装甲車が揺れて、路肩に逸れていく。
「うわ」
「まだまだ壊れない。ただ止まったから、撃ちやすいはずだよ」
「わ、分かった」
辺りが騒然となって、玉突き的に事故が起きる中、リタはなおも冷静だ。
そして、
再び、弾丸が直撃した。背面の扉が開き、ゲホゲホと咳き込みながら兵隊が降りてくる。
「アイツらも撃って。強化兵なのは間違いないけど、弾丸に耐えられるほどじゃない」
的確かつ冷酷に指示を出していき、少女は3発目の弾丸を放つ。
〝強化兵〟と呼ばれる、重武装の兵士の腕や足が吹き飛ぶ中、リタは車を停めて装甲車へと走っていく。
「く、クソッ……。テメェ!!」
リタはなにも言わず、ダルマのようになった強化兵の頭を拳銃で撃ち抜く。
そのままリタは、装甲車の中にある〝サムライ・スピリット〟へ向かう。
むき出しにされた野球ボールほどのサムライ・スピリットは、傷ひとつもついていない。リタはそれっを回収し、車へ戻っていく。
「良い? これを心臓部分に当てるんだ。そうすれば、サムライ・スピリットがインストールされる」
「う、うん」
リタは、なんら躊躇なく野球ボールほどのそれを心臓部分に当てる。
すると、
ひどく泥酔したときのような、そういう不快感を覚える。頭はクラクラと回って、口から唾液を垂らす。
「ぐ……ッ!!」
インストールにかかる時間はそれほど長くない。せいぜい1分足らずだ。しかし、ひどく苦しい状態の中では、1分が何十分にも感じてしまう。
「はぁ、はぁ……っ」
それは、仲間の少女も同様だ。セダンの後ろでのたうち回り、高熱を出したかのようにうなだれる。
そんな中、緊急事態を嗅ぎつけたラセツ・カンパニーの兵士が、ヘリコプターで高速道路へ降りてきた。強化兵が続々と降りてきて、アサルトライフルを構えている。
「お遊びはおしまいだ!! クソガキども!!」
その合図とともに、銃弾が雨あられのごとく飛び交ってくる。普通の人間なら、蜂の巣のごとく穴だらけになっていることであろう。
だが、
次の瞬間には、強化兵のひとりの首が手刀で跳ねられていた。
「……ッ!?」
唾液を垂らし、青白い顔色をしながら、リオは宣言する。
「強化兵〝ごとき〟で、お遊びは終わらせられないさ……!!」
リオは、チーターのような速度で次々と強化兵の首を跳ねたり胴体に穴を開けたりと、虐殺を開始する。
「く、クソッ!! 司令部!! 敵性はサムライ・スピリットと適合した──ぎゃあぁ!?」
応援を呼ぼうとした指揮官の首を撥ねたところで、リタは敵がいなくなったのを知る。
「はぁ、はぁ……。さすがにまだ慣れないな」
かなりの銃弾を喰らっているはずなのに、痛みひとつ感じない。むしろ、適合し切れていないことのほうが苦しみを増幅させる。
とはいえ、このままむざむざと逃がすほどラセツ・カンパニーも甘くない。更に言えば、七王会にもケンカを売っている以上、どこかへ逃げるべきだ。
リタは、先ほどリタ以上に苦しんでいた少女の元へ向かう。
「大丈夫?」
「なんとか……」
「なら良かった。さて、逃げるよ」
「うん……」
いつバンカケされてもおかしくない、ボロボロのセダンで、リタと少女は逃げおおせるのだった。
*
大前提として、どこへ逃げるか、だ。スラム街にいても安全なわけないし、比較的安全な隠れ家が必要なのは否めない。
ただ、こちらにも交渉材料がある。サムライ・スピリットを持っているリタと……未だ名前も知らない少女なら、汚れ仕事のひとつやふたつ攻略できる。それを元に、隠れ家を提供してくれる者の元へ迎えば良い。
リタは、古臭い家の前に車を停めた。すっかり落ち着いた少女を引き連れ、この街屈指の情報屋〝ハル・チカヒロ〟との接触を図る。




