021 ギャンブルスタート
「ふん。良い度胸をしているな。だが、度胸だけで生き残れる街ではない。せいぜい気張れよ、お嬢さん」
コガはそう言い残し、自身のサムライ・スピリットを用いてワープしていった。場には、白い紙切れが一枚残される。
「これに電話しろってことか……」
おそらく、七王会は万全な準備を整えた上で、リタたちに強盗を丸投げする気だ。まるでリタたちの実力を推し量るように。それで有用なら使えば良いし、失敗したのなら関係ない振りで乗り越えられる。
それはつまり、
「気に入らねぇ……。あたしらを試してるわけだろ? あのクソ野郎は」
「そうだね。使えるか否かを見極めようとしてる。でも同時に、新世界同盟へ大きなダメージを与えられるチャンスが来た。タカハシ・ミサキとの接触は行うけど、その前にこの仕事を片付けよう」
思わぬ展開だが、好機なのには変わりない。生き延び、そして成功するには、どちらにしても壁を何度も乗り越えなければならないのだから。
「いってェ……」
腹部を抑えながら、コウタが起き上がる。
「あの野郎、とんでもねェ〝闘志〟を放ってやがる……。気に入らねェ」
コウタは負けず嫌いだし、しかし現実を理解している者でもある。彼が〝闘志〟という、いわば魔力のようなものに呑み込まれていたのも事実だった。
「なぁ、闘志ってなんだ? オマエら、最初から知ってるような口ぶりだけど」
ユリは、なんてことのない──ただ非常に重要な質問をしてくる。コウタが未だ腹部を抑えている以上、リタが説明するほかないだろう。
「闘志は要するに、可視化できないエネルギーみたいなものだよ。サムライ・スピリットを持つ者が練り上げ、放つ力。〝攻撃闘志〟と〝防御闘志〟の大きく二種類に分かれる」
リタは椅子に腰を落とし、説明を続ける。
「攻撃型闘志は文字通り、攻撃能力を大幅に増幅させる。防御型はその逆。サムライ・スピリットを極めた者にのみ使えるものだけど、当然強弱がある。さっきの場合、コウタの防御がコガの攻撃に負けたってだけさ」
コウタが歌うように言う。「……そういうこった。クソッ、やっぱそう簡単に天下は取れねェな」
「いやいや。あたしなんか、サムライ・スピリットすら持ってねぇんだぞ? 土俵にすら上がれてない。それなのに、サムライ・スピリットを持つ連中とケンカなんかできるのかよ?」
(そういえば、コウタと出会った時点だとユリはサムライ・スピリット──〝SSP〟も持ってないのか。これは困ったな……。実質〝おれ〟とコウタ、それにユウだけで攻略できるか?)
「どうした? リタ。考え込んで」
「いや、強盗するのなら相応の作戦を考えよう。まず、メンバーは4人。私とコウタが新世界同盟の兵隊をのけて、ユウが金塊を確保する。ユリは金塊をヘリで七王会が用意するだろう隠し場所へ運ぶのと、その指揮を取ってほしい。多勢に無勢だけど、やるしかない」
「あ、あぁ。任せておけ」
「ユウも〝カタナ〟を手に入れたとはいえ、まだ使い慣れてるようには見えないからな」
(あの子、いつの間にかカタナを発現させたんだ。まぁ、戦力として数えるのは酷か)リタは心の中でそう呟く。「よし、七王会から指示が出たらすぐ動けるように、君らもお酒禁止。下手すれば二日酔いで挑む羽目になるし、それで死んでも責任とらないけど、自業自得だね」
コウタとユリは、口を尖らせる。非道い言い草、とでも思ったのだろう。それでも、このネオ・トーキョーで酒に呑まれてしくじるようなヤツは、端から存在にも耐えられない。それに、リタだって相応の覚悟は決めている。スクランブル的に始まる、ストーリー外での強盗劇を攻略するための覚悟を。
とりま第2章お終いです。
次章『HEAT──ニール・マッコーリーによろしく』をお楽しみに!!
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