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半袖では少し寒いし、長袖では少し暑く感じることもあるという秋の気配がすぐそこにある季節になっていた。
たくさんの実りを収穫して賑やかで楽しい時間を過ごしている。
もう、到底自分たちだけで消費できる量ではなくて、冬の飢えた人たちに配るための準備のようなものになりつつあった。
今年の初め、雪解けの頃から神様のお願いで外壁のない村に外壁を作り回っている。
この国だけではなくて他国にも神様の転移で連れていかれて外壁を作って薪やその季節に撒く種などを置いていく。
神様はその他大勢を助けないみたいなことを言うけれど、実際は自分たちではどうにもならない人たちを助けてやってほしいと私に願う。
そんな神様だからつい手伝ってあげたいと思ってしまう。
外壁を作った村の周辺の山も禿山にして実のなる木を何種類も交ぜて植えているので雪が降るまでに山に入って収穫すれば飢えて死ぬようなことはないと思う。
植えた木の実を狙った獣も現れるので、狩れば保存肉も作れるしね。
『ハルカ!!』
「はいいっ?!」
突然、頭が割れるかと思うほどの大声で神様に呼ばれて飛び上がる。
『赤ん坊が魔獣に襲われそうなの!!』
赤ん坊が? どういう事? と考える間もなく、神様の転移で強制的に移動させられた。
襤褸布で包まれた赤ん坊が声の限りの泣き声をあげている。
魔物の気配は直ぐそばで、その上かなり多い。
私は魔物を引き付けるだけ引き付けてから赤ん坊を抱き上げて上空へと飛び上がり風魔法で魔物の首を落とした。
神様! 言ってなんですが、赤ん坊の世話は流石に無理ですよ!! 私、母乳は出ないんですからね!!
それとも母乳以外に赤ん坊に飲ませるものってあるんですか?!
『もう一人、この赤ん坊ミラシュっていう名前なんだけど、この子のために助けてあげてほしい人がいるのよ。
産んだ赤子が死産で生きる気力を喪っている人なんだけど⋯⋯』
でもこの子⋯⋯ミラシュ? 色素が薄いですよ。普通の人に育てられますか?
『それは⋯⋯一か八かね』
うわぁ〜⋯⋯無責任⋯⋯!!
『いいから!! ⋯⋯ほら、行くわよ!!』
また神様の強制転移で移動した先は物置小屋よりも粗末なボロボロの小さな部屋の中だった。
その中に一つ粗末なベッドが置かれていてそのベッドの上で身体を横たえて生きているのか死んでいるのかわからないような女の人が横たわっていた。
「あの⋯⋯生きてますか?」
女はノロノロとした動作で私を見た。目に生気がなくこのまま息絶えるのを待っているだけの人なのだと感じた。
「あなたにお願いがあってお邪魔したんですけど⋯⋯」
ベッドの上の女の人が私が抱くミラシュを見た途端、目に光が戻った。
「この赤ん坊、ミラシュっていうんだけど、捨て子みたいなんですがお乳が必要で⋯⋯」
緩慢な動作でミラシュへと手を伸ばしてきたのでミラシュを抱けるように女の腕の中に下ろした。
ミラシュは泣いてはいなかったけれどお乳を欲しがっていることがわかったのか、女はミラシュにお乳を与えた。
コクコクとお乳を飲んでいるのがわかる。
ホッと息を吐くと神様が話しかけてきた。
『この人はデェイズという名で、ある男爵家の三男に目をつけられてほぼ強姦に近い状態で妊娠させられたのよ。
お腹が膨らんで体型が変わった途端興味を失った男にこの家? 小屋? に捨てられたのよ』
私が神様から聞いていい内容ですかね? それ。
『デェイズは自分から誰かに話したりしないと思うわ。でも知らなければ何に気を遣えばいいかハルカもわからないでしょう?』
そうかも知れませんけど⋯⋯。
『西隣に住んでいるおばあさんがいい人でデェイズの面倒を見てくれていたの。だから一応連れて行くことだけは伝えてあげてね』
解りました。
言われた通りに西隣のおばあさんに事情を説明してデェイズを連れて行くことを伝えた。
おばあさんは不審そうに私をジロジロ見てデェイズの小屋に入ってくる。
ミラシュにお乳をやっている姿を見て一つ頷いて「デェイズを頼むよ」と言っておばあさんは小屋から出て行った。
私はおばあさんを追いかけて「これで美味しいものでも食べてください」と小袋に入れた銅貨数十枚をおばあさんに手渡した。
おばあさんは一度は拒否したもののもう一度押し付けると嬉しそうに受け取って「ありがとうね」と自分の家へ帰っていった。
ミラシュがお乳を飲み終わるのを待って、私の家に二人を連れて帰った。
これ以上住人を増やしたくないんだけど、ミラシュは薄い紫の髪色。もう間違いなく魔力が高い。
デェイズ一人に子育ては任せられない。
二人を洗浄魔法をかけてから家の中に入れて二階の空いている部屋へと案内した。
デェイズは体力を失ってフラフラになっていてもミラシュを手放さなかった。
ミラシュを落とさないかハラハラしつつ先を歩いた。




