第18章:湯けむり魔界外交
「魔界温泉・極楽の湯」の噂は、風よりも速く魔界全土に広がった。
「ここが噂の温泉か!」
「俺も入りたいぞ!」
連日、長蛇の列ができている。
俺は嬉しい悲鳴を上げながら、拡張工事に取り掛かった。
「日帰りだけじゃ捌ききれないな。宿泊施設を作ろう」
魔界樹と石材を使って、巨大な和風旅館『魔王殿』を建設。
さらに、食堂や土産物屋も併設した。
「いらっしゃいませー! 名物『地獄ラーメン』はいかがですかー!」
リコが指導した魔族の店員たちが、元気に働いている。
真っ赤なスープの激辛ラーメンは、刺激を求める魔族たちに大好評だ。
「ふん、ヴォルグが骨抜きにされたと聞いたが……」
新たに現れたのは、氷、風、土を司る残りの四天王たちだ。
彼らもまた、最初は警戒していたが……。
数時間後。
「カッカッカ! この『サウナ』というのは良いな!」
「肌がスベスベになるわ……」
「ラーメンのおかわりを頼む!」
全員、浴衣姿で大広間の宴会に参加していた。
リリスも上座で満足げにフルーツ牛乳を飲んでいる。
「どう? 人間と仲良くするのも悪くないでしょ?」
「うむ。人間と戦うより、ここで酒を飲んでいる方が有意義だ」
四天王たちが頷く。
こうして、歴史的な「湯けむり不可侵条約」が結ばれたのだった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、帰還の日がやってきた。
魔王城の前には、多くの魔族が見送りに集まっている。
「ケンタ、本当にありがとう」
リリスが俺の前に進み出る。
「貴方に、このメダルを授けるわ」
渡されたのは、魔王の紋章が刻まれた黄金のメダルだ。
「称号『魔界名誉建築士』よ。これがあれば、魔界のどこでも自由に通行できるし、資材も使い放題だわ」
「ありがとうございます。光栄です」
「……また、来てくれる?」
リリスが上目遣いで聞いてくる。
「もちろんです。メンテナンスも必要ですしね」
「うん! 待ってる!」
転移魔法陣が輝き、俺たちはココノエ村へと戻ってきた。
懐かしい村の空気。
「おかえりなさい!」
留守を任せていたアリス嬢やトマスさんが出迎えてくれた。
村は相変わらず活気に満ちている。
「ただいま。魔界もいい所だったけど、やっぱりここが一番だな」
俺は大きく伸びをした。
ボロ家から始まった俺の異世界生活。
気づけば、領地経営、ダンジョン運営、そして魔界リゾート開発と、随分遠くまで来たものだ。
「さて、次はどんな物を作ろうか」
俺の【DIY】スキルがある限り、このスローライフ(?)はまだまだ終わらない。
もっと便利で、もっと楽しい世界を作るために。
俺たちの物語は、これからも続いていくのだ。




