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俺様、神様、創成主!?~いいえ、人間です~  作者: 慧斗
第3章 そして神様を中心に、世界は変わり始める
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第35話 仲間の決意、そして脱獄

 そんな時、それは、突然起こった。


「高良!今から逃げるわよ!」


「え?」


 時間はよく分からないけど、まだ飯の時間じゃないと思う。実際、俺も寝てたし。

 なのに、エルが地下牢に入ってきた。

 キィィ……と音がして、鉄格子の扉が開く。


「エル、その鍵、どこから……」


「見張りの兵を、麻酔針で刺したの!」


 怖ぇ。


「で、でもなんで?それに今、逃げるって言ったよな?意味分かってんのか?」


「分かってるわよ。ねぇ高良、よく聞いて」


 エルが、途端に真剣な顔つきになった。思わず、気を引き締める。


「昨日、あんたの死刑が決まったの。死刑執行の日は、二週間後よ」


 やっぱり、死刑に決まったか。


「それでね、私とリオラ、アリシア……じゃ、なかったわね。アランと、一緒に考えたの。あと、あなたと一緒に住んでたっていう狩人の子供とも。高良を死なせない。地下牢から脱獄させよう、ってね」


「てね、じゃねぇ!それがどんだけ危険なことか、分かってんのか?俺は脱獄できても、行く場所がない。それに、俺を助けたって分かったら、お前らも処罰を受けるんだぞ!」


「今の立場とか、金とか、どうでもいいわ。そんなものより、高良の方が大事。みんな、その気持ちは同じなの」


「エル……」


 嬉しいこと言うなよ。俺は、生きるのを諦めてたのに。他人のお前らが、俺のことを俺より大事に思ってくれていたなんて。


「分かった、逃げる」


「OK。でも、ちょっと待って。この足かせ、取れないの」


「はぁ?」


 決意した矢先にそんなことを言われて、力が抜けた。


「えいっ、このっ、おりゃっ!ダメだわ、抜けない」


「じゃあ、お前だけでもさっさと行け!今なら、まだ間に合うはずだ」


「無理よ。私が襲って眠らせた兵に、顔を見られてるもの。もう、後戻りは出来ないわ」


「諦めんなよ!」


 ついさっきまで生きることを諦めてた俺が言うには、あまりにも信憑性がない叫び。

 足に力を入れて、ぐっと立って。思い切り叫ぶ。……て、あれ?足の感触が、ない?


「抜けたわ、足かせ!高良の足が細くなってたから、抜けたのね!」


 おいおい、そんなミラクルありかよ。

 ともかく、こうなった以上。


「逃げろっ!」


 エルの手をにぎりしめて、必死に走る。あ、ヤバい。ずっと地下牢にいたからかな、足が動きにくい。走りにくい。

 なにもついてないはずなのに、足首に何かがついている感触が離れない。あの足かせに慣れちまったのか、こん畜生。


「出口よっ!」


 わずかな光だったそれが、どんどん大きくなっていく。その光の向こうにアリシア、リオラ、くぅ、ナオの姿があるのを、暗闇にすっかり慣れていた俺の目が捕らえた。っつーか、まだ女装してんのかよ。


「もう少しだよっ!早く早くっ!」


「アリシアさん、車の用意をしてください」


「分かってますって!」


「みんなも、早く乗る……。高良が来たら、すぐに出るからね……」


 四人とも、顔が明るくて。


「お待たせー!」


 エルも、まるで友達と約束してたみたいな気軽さで。


「おいおいお前ら、これ大犯罪だって分かってねぇだろ」


 あまりにも場違いなこの空気が、俺の緊張を少し和ませてくれた。

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