第31話 流れ星に、笑顔を願う
くぅも帰り、一人になった頃。俺はまた、ドラゴン退治について考えていた。
エルに聞いた話だと、俺が倒れた後、ドラゴンはどこかへと去ったらしい。原因は不明で、兵も不思議に思いつつも命拾いしたことを喜んだとか。
まあ、その反応が当然だろう。あのドラゴンは、モンスターの中でもずば抜けている。
急所はいっさいなし。いや、目を攻撃すればさすがのドラゴンでもやられるかもしれない。でも、その目をドラゴンに見つかる前に正確に攻撃するのは不可能だ。
もう、完璧にラスボスだと思う。二回もあのドラゴンに襲われて無事だなんて、我ながら悪運が強い。
ドラゴンが去ったのは、多分くぅとナオの手柄だと思う。……ほとんどはナオだろうけど。
俺はエルによってすぐに救護所に運ばれ、アランの力で一命を取り留めたらしい。後で、アランにもお礼を言っとかなくちゃな。
いや、それよりも今は、ドラゴン退治についてだ。
「俺はあのドラゴンを殺したくない。二人が悲しむから。それに、俺たちがドラゴンの巣を壊した非もあるしな」
エルも、そこは感じているんだろう。
「でも、エルの立場上、ドラゴンを殺さないってのは不可能だ」
分かってる。ドラゴンはもう何人もの人を殺したことも、俺の考えが甘すぎるのも。
でも。
どうしても、あの二人の泣き顔を見たくなかった。嫌われたくなかった。だけど、俺の自分中心の勝手な考えで、ドラゴンを殺さないなんてことは出来るはずもない。
現実は、無情だ。
俺が決断すればいい。そうだ。エルだって、俺がドラゴンを殺したくないのを知ってるから、ドラゴン退治に渋ってるんだ。
「くぅ、ナオ、ごめんな……」
どれだけ悩んだって、答えは一つなんだから。
窓の外で流れた、流れ星に思わず願う。
「くぅとナオが、笑ってられますように」
笑っていてくれたら、俺が悪者になろうと構わないから。
どうか。人間を、嫌わないでほしい。




