間話 その後の戦場 ~ヒロインとチビドラゴン、一人と一匹の絆~
「高良っ!?高良ーっ!?」
高良が動かなくなってしまったことで気を取り乱したエルは、もう一度迫り来る尻尾に気づかなかった。
ビュオン、と風を切る音。
兵たちが叫ぶ音。
それら全てを、エルの聴覚はシャットダウンしてしまっていた。
「危なっ……」
エルがその声を認識した時には、エルは吹き飛ばされていた。
動かなくなった高良も高く宙を舞い、地面に激突する。
エルは、脳がぐらぐらとしているのを感じていた。
「あぁ……」
高良もきっと、痛かったんだろうな。
せっかく、助けてもらったのに――。
そう思いながら死を覚悟したエルは、しばらくして自分は大丈夫だと気づいた。
高良のおかげで衝撃が半減していたらしく、頬を少し擦りむいて頭を強く打っただけのようだ。
「……あーあ」
意識を失っていても、高良は私を助けてくれた。
きっと、三日前から様子がおかしかったのもそのせいだろう。
私がドラゴンに攻撃されることを、高良は知っていたのだろう。
知っていても何も不思議じゃない。だって、高良は――
「神様、なんだもんね」
苦笑すると、エルは立ち上がり、剣を構えた。
手作りの愛剣だ。気に入っている。
ドラゴンの皮膚は堅いから、折れてしまうかもしれない。
でも、高良をこんな目に合わせた奴に対して、躊躇なんかしてはいられなかった。
「うあぁぁぁぁぁぁ!」
雄たけびを上げて、飛び掛る。
コートに仕込んでいた拳銃を取り出し、撃つ。弾はあっけなく跳ね返り、ドラゴンは弾に気づいてすらいないようだった。
なら、目はどうだ。
目なら鱗に覆われていない。そう気づいたエルは目を潰そうと試みるが、その前にドラゴンに攻撃されてしまう。
何度も叩きつけられ、とうとう足が少しおかしくなってしまったようだった。
「あぁ……」
手は動く。
エルは、必死に手で体を支え、攻撃をしようとしていた。
その時。
「ナオっ……」
その声が、やけに響いた。
「高良のペット……?」
あれは、ごつごつして強そうな方だ。
「ナオ、ナオナオナオ」
チビドラゴンが一体何を言っているのか分からない。でも、ドラゴンは納得した様子で、一つ頷くとそのまま森に消えた。
「どういう、こと……?」
モンスター同士話せるので、戻ってくれないか頼んだ、ということだろうか。
「えらいわね……」
エルがナオの頭を撫でると、ナオは嬉しそうに目を細めた、かに見えた。
アリシアがこの戦場に駆けつけ、高良が救護所で目覚めることになるのは、もう少し先の話だった。




