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俺様、神様、創成主!?~いいえ、人間です~  作者: 慧斗
第1章 捕縛、実験、地下牢監禁、そして神様に
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第2話 衝撃の事実


「はい、これは今日の飯よ」


「おう……」


 じめじめとした、暗くて狭い牢屋。俺は、手足に鎖を付けられた状態だった。

 もう、この牢屋に入れられてから三日が経つ。飯は、毎日黒コートが運んでくれてる。一応ちゃんと寝れるし、トイレまである。モンスターに食われそうになるよりも良いんじゃねぇかって思えるほどだ。まぁ、それも食事を見るまでの浅はかな考えだったけど。


「ありがとよ……」


 差し出された飯を受け取る。ひび割れた皿の上には、腐りかけのりんごが一つだけ。このままじゃ俺、餓死しそうだわ……。


「今日は、お前に聞きたいことがあるの」


 黒コートが、牢屋の前にどかっと座る。


「おう。なんだ?」


 りんごにかぶりつきながら答える。おえ、まず……。吐く……。


「あんたの正体はなんなの?」


「またそれかよ……。黒コート、お前しつけぇぞ」


 黒コートは毎日毎日会うたびにこの質問をしてくる。しつこい。俺は何回も同じ答えを返してるのに、まったく信じてくれねぇんだ。


「何度も言ったろ?俺は人間だって」


「人間は私たちみたいな人の事を言うのよ。ちょっと人間に似てて人語が喋れるだけのあんたと一緒にしな

いでほしいわね」


「あー、そうかよ。どうしても信じねぇってのか、この頭でっかち黒コート」


「信じないわよ、あんたの言う事なんて!あと、黒コートはやめてくれない?私には、エレオノーラっていう立派な名前があるのよ!」


「そうだな、立派だな」


「ふふん、人間もどきでもこの名前の立派さが分かるのね」


「名前負けもいいとこだ」


「あんたケンカ売ってんの!?」


「ああ、絶賛大セール中だ。今ならポイント五倍だぜ?」


「ああ、それはお得ね。っておいっ!」


「何だ、黒コート」


「エレオノーラだって言ってるでしょ!」


「嫌だ。その名前、長くて覚えるのめんどくさい」


「私の名前にいちゃもんつけるんじゃないわよっ!」


「じゃあお前、何て呼びゃ良いんだよ。そんな長い名前なら、俺は黒コートって呼ぶぜ?何かカッケーし」


「んー…………。じゃあ、エルって呼びなさい。仲の良い友達や家族はみんな、その名前で呼んでるわ」


「え、別に俺とお前仲良くねぇぞ?」


「あんたは特別よ」


「ふぅん……。あ、じゃあ俺も、人間もどきとかモンスター(仮)とかじゃなくて高良って呼んでくれよ」


 高良は俺の苗字だ。下の名前は、陽。でも、まだそれは言わないでおこう。


「たから?それがあんたの名前なの?変な名前ね」


「そうか?普通だと思うけどな。んで、そう呼んでくれんのか?」


 まぁ、ここの世界の奴がみんな、エルとかあのおっさんみたいな名前なんだったら変なのかもしれない。


「あんたが私の事、ちゃんとエルって呼ぶなら」


「分かったよ、……エル」


「うん、そう!これからは私の事、エルって呼ぶのよ!」

 にこやかに笑うエルを横目に、俺はある事が気になっていた。

 エル……。エレオノーラ……。どっかで聞いたような……。なんか、ごく最近。どっかで聞いた。絶対に。でも、どこで聞いたんだっけ……?


「エル!ここ、どこなんだ?」


 それを聞いたら、なにかが分かるかもしれない。そんな予感がした。


「な、何よ、いきなり……」


「いいから!」


 俺の勘は、大概当たる。実際、この世界に来た時もそうだった。


「ここは、地下牢だけど……」


「そうじゃなくて!この土地の名前!この、国の!」


「……?この国はアーヴィンだけど」


「アーヴィン?」


 やっぱ聞いたことがある。えっと、なんだっけな……?もう喉まで出かかってるのに……。


「昔は平和だったけれど、今はモンスターが現れて大変なのよ。バードン国王も心を痛めていらっしゃっ

て……」


「……バードン国王?」


「ええ。アーヴィン王家第三十一代国王、バードン様よ。まあ、モンス……じゃなくて、高良には分からないでしょうけどね」


 バードン、バードン……。どっかで聞いたことが……。


「あああああーっ!」


「なっ、なに?」


 いきなり叫びだした俺を、エルはビクビクしながら見ている。でも、それどころじゃない。

 アーヴィンという名前の国、そこの第三十一代国王バードン。モンスター、エレオノーラっていう兵士、ジェラルド博士……。これ全部、俺が書いた小説に出てくる名前だ!あの、大学ノートに書き上げた、冒険ファンタジーものの。


「あれ、でもどういうことだ?」


 こんなにも一緒だなんておかしい。偶然?いや、でもそれにしては……。となると、ここは俺が書いた小説の中って事になる。いくらなんでも、そんな非科学的な……。でも、もうモンスターに襲われた時点で俺の脳は科学を信じる事が出来なくなっていた。

 待てよ?

 俺がここにいるのはなんでだ?モンスターに襲われているところを捕まったから。なんでモンスターに襲われていた?いつの間にか丘にいたから。なんで丘にいた?俺の部屋で大学ノートに呼ばれたからじゃないのか?ってことは、やっぱ俺は自分が書いた小説の中にいるってことなのか?


「エル!今日、何月何日だ?」


「今日は七月の二十日だけど……」


 カレンダーは、俺がいた世界と変わらないらしい。

 七月の二十日か……。ってことは、明日……。いや、でも……。

 明日、俺の小説の中では確か……。


「明日……国王が、病気になる……?」


 ありえない。いや、でも今国王は心を痛めてる状態らしい。小説の中では、国王はそのせいで倒れるんだ。七月の、二十一日に。


「えっ、縁起でもないことを言わないで!バードン様はお元気よ!」


「お前、聞いてたのか!?」


 なんつー地獄耳だ。


「不敬罪で逮捕するわよ!」


「もう捕まってるっつーの!それに、俺が今言った事は本当だぞ?」


 俺の記憶が正しければ、だけどな。


「嘘つき!見損なったわ!」


「本当なんだって!」


「じゃあ、百歩譲って本当だったとしましょう。なんで、あんたにそんなことが分かるのよ?」


「分かるさ!この世界は俺が創ったんだから!」


 これも、俺の勘が外れていなければ、だけど。


「話にもならないわ!この大嘘つきが!」

 エルはそう言うと、怒りながら去っていった。本当なのにな……。いいや、明日になったら分かるさ。

 多分、な。



「んで、今日が問題の二十一日なわけだが……」


 国王様倒れたかな?いや、でも国王が倒れるの願ってたらガチで不敬罪だぞ?

 カツーン、カツーン

 地下牢に、誰かの足音が響く。衛兵か?いや、でもさっき巡回で来たばっかだぞ?

 その足音は俺の牢屋の前まで来ると、ぴたりと止まった。


「高良!今日、国王様がお倒れになったわ!」


「ほらな」


 言った通りだ。


「ぐっ、偶然に決まってるわよ!」


「はいはい」


 平静を装ったふりをしてても、俺は内心ものすごく驚いていた。

 また勘が当たったみたいだ。でも、これでこの世界は俺が書いた小説の中だって事が判明した。


「あんたが毒を盛ったんじゃないの?」


「バカ言え!俺はずっと、この牢屋の中にいたんだぞ?」


「それもそうね……」


 それでも、エルは疑わしげな目でこっちを見ている。

 ふん、なんとでも思え。明日も当たったらきっと信じるだろう。


「明日は、天気は雨だ。国王に続きお后も倒れる」


 すっかり自信を持って、ゆっくりと告げる。これで予言が当たらなかったら、ものすごく恥ずかしくないか?俺。


「うっ、嘘よ!」


 エルはそう言って、そのまま去っていった。



 次の日。早くも壁を彫るのに飽きてごろごろしていた俺のところに、エルが汗びっしょりでやって来た。ちなみに、また黒コートを着ている。だから汗びっしょりなんだよ。つーか、何でいつも同じ黒コート着てんの?何着も持ってるとか?もしそれなら趣味悪。確かにかっこいいけど、七月の下旬に着るもんじゃないだろ。季節感がねぇのか?おかげで、俺はまだお前の黒コート姿しか見てねぇわ。


「お后様がお倒れになったわ!しかも、今日の天気は雨よ!まさか、本当なの!?」


「ずっと言ってるだろう」


 うそ、半分想定外です。昨日衝撃の事実が判明したとはいえ、ずっと平凡だった俺にいきなりそんな事言われても理解出来るはずがない。今、脳みそがエラーを起こしてパンク中だ。


「そ、そうね……。じゃあ、明日は?」


「明日はなぁ……。山にモンスターが出て、ケガ人がたくさん出る。軍とかの隊長にも言っとけよ」


「でもっ、信じてはくれないだろうし……」


「でも、明日当たったら信じるだろう?」


「……分かった、言ってくる!」


 そう言って、エルは去っていった。信じてくれて、良かった……。でも、俺ですら信じきれない話を信じきるなんて、何て単純な奴……。



 次の日。昼寝をしてた俺の耳は、牢屋に近づいてくる足音を捕らえた。何だ?また、エルが来たのか?

 今日は何の話をしに来たのかと思っていると、知らないおっさんが牢屋の前にどかっと座った。おっさんが着てるのは赤いマント。目立ちすぎだろ……。


「おい!エレオノーラが捕まえた変種のモンスターというのはお前か!」


「はっ、はい!」


 条件反射で思わず返事する。変種のモンスターじゃないっての。まったく、エルもこのおっさんになんて説明してんだ。

 んで、このおっさん誰だ?


「ん?私が何者なのか知りたそうな顔をしているな!私は軍隊長グスタフだ!」


 グスタフ……。ああ、そんなキャラもいたな。エルの上司か。んで、その軍隊長が俺になんの用なんだ?


「お前か、今日のことについて予言したのは!」


 予言?昨日、エルに言ったやつか?……あぁ、そういや軍をかの隊長に言えって言ったような言ってないような……。


「お前の予言は本当に当たるのか、試しに来た!お前がモンスターを操っている可能性もあるのだからな!

さあ、明日は何がある?」


 おっさん……じゃなくて軍隊長が、顔をぐぐっと牢屋に近づける。えーっと、明日って七月の二十四日か……。二十四日には何が起きてたっけ?


「明日は……天気は雨、城に雷が落ちます」


「本当か?」


「はい」


 それで、たびたび続く異常が気になった主人公勇者が冒険に出るんだ。あれ?そういや、この世界が小説の中なんだったら勇者もいるよな?


「では、明日を楽しみにするとしよう」


 軍隊長がにんまりと笑う。そのまま、目立つ赤マントを翻して去っていった。



 次の日。


「変種モンスターよ!お前の予言、本当に当たったぞ!」


 軍隊長が、走ってやって来た。赤マントが邪魔そうだ。あと、その変種モンスターってのやめてくれねぇかな?俺は人間。こればっかりは、いくら信じられなくても言わせてもらうぜ。


「お前は、本当に予言者なのだな!」


 軍隊長が年がいも無く、目を輝かせる。予言者……?まあ、いいや。

 ついに軍隊長が俺の事を認めてくれた。これで予言を盾にしてこの地下牢から出してもらえば……はっ!ダメだダメだ。帰り道が分からない間はここにいた方が安全だ。腐りかけとはいえちゃんと飯が出るし、ここならモンスターも襲って来ない。でも……。久しぶりに太陽の光を浴びて、腹いっぱい飯を食いたいなぁ……。育ち盛りの俺としては、今の飯は正直キツいしな……。

 俺の葛藤も知らずに、軍隊長が目を輝かせながら言う。なんなの、その目?ビーム出そうで怖いんですけど。





「にしても、なぜそんなに当たるのだ?」


「それはですね、軍隊長。この俺が、この世界を創ったからですよ」


 前にやったゲームの決めゼリフっぽく、カッコつけて言ってみる。うわー、気持ちいー。


「な、なんと!」

 

軍隊長もノってくれる。ああ、なんて良いキャラなんだろう!こんなキャラを創った俺に拍手を送りたい!


「では、お前……いいえ、あなた様は創世主、つまり神なのですね!」


 軍隊長の口調が改まる。神……?


「うん、まあつまりそういうことだな」


 嘘はついてない。って、あれ?何か、考えてたとこから脱線してるような……。脱線しすぎて大破してるような……。


「ははーっ」


「ちょっ、別に土下座しなくても」


 この人ノりすぎだろ……。


「創世主様!私、国王様にお知らせしてきます!」


「……え?」


 軍隊長はそう言って一礼し、そのままどっかに走っていく。


「ちょっと、待て……!」


 どうしよう……!嫌な予感しかしない……。

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