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南京町の悪役令嬢は、高級菓子の毒(マトリ)を嗅ぎ分ける  作者: 水前寺鯉太郎
第2部『ロンドン・壊滅・ティーパーティ編』

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第21話:激突、猟犬対2匹の小型犬

サンチカ、第4エリア。地下街の最深部、空調ダクトが複雑に交差する薄暗い配管室で、無線越しに狗巻の警告が響いていた。

「……お嬢様! 逃げろ! エドワードの野郎、広島の『ジャック』なんて比じゃねえ、ロンドンの軍事用強化猟犬ケルベロスを放ちやがった!」

 その直後、金属製のキャットウォークを軋ませる、重圧な足音が近づいてきた。

 ズシン、ズシン……。

 闇の向こうから現れたのは、全身を黒いチタン合金のアーマーで覆われた、超大型のマスティフ。その瞳は、ザッハトルテの底に沈んでいた『毒』と同じ、濁った緑色に発光している。

「……あら。エドワード(あの方)の趣味、相変わらず悪趣味ですわね。……芸術アートというよりは、ただの『廃棄物』ですわ」

 私は、膝の上で小刻みに震えるダリアを抱き上げ、奥の部屋で休ませていたマックスを呼び寄せた。

 トイプードルのマックス、チワワのダリア。対する、強化猟犬のケルベロス。体格差は、赤子と大人。だが、私の瞳には、この泥沼のような広島と尼崎を潜り抜けてきた、二匹の『バディ』の絆が宿っていた。

「……マックス。ダリア。……退くなよ。デカいだけが『猟犬デカ』の仕事じゃねえ」

 私は、二匹のリードを解き放った。

 ガルルルルッ!

 ケルベロスが、地響きのような咆哮と共に跳んだ。その巨体から放たれる圧迫感。だが、マックスは姿勢を低く保ち、螺旋を描くように相手の死角へと潜り込む。

 一方、ダリアは、私の肩から飛び降り、配管の隙間を縫うようにケルベロスの頭上へと駆け上がった。

「……マックス! そのまま押さえろ!」

 バキッ、ボリボリッ……!

 マックスが、ケルベロスの後脚のアーマーの隙間へ、その鋭い牙を叩き込んだ。チタン合金が悲鳴を上げる。

 同時に、ダリアがケルベロスの眉間へと着地し、その大きな瞳で、相手の視神経を直接刺激する超音波を放った。

 キャンッ! ワンワンッ!

 ケルベロスがバランスを崩す。マックスは、その隙を逃さず、さらに深く牙を食い込ませ、相手の動きを完全に封じ込めた。

「……ダリア! 終わらせなさい!」

 ダリアは、ケルベロスの首元――そこに隠されていた、強化剤の注入バルブを嗅ぎ当てた。

 ペリッ、……。

 バルブを剥がす。溢れ出したのは、嗅覚を麻痺させる強烈な『興奮剤ブースター』。

(……! あのバルブ、直接『ブラッド・マリア』の濃縮液を詰め込んでやがるのか)

 私は、手元にあった『オレオクッキー』を一枚手に取り、その端を強引に噛み切った。

 パキッ、ジャリッ……。

 漆黒のココアが脳を叩き、情報の断片を鮮明に浮かび上がらせる。

「……なるほど。……ショコラティエ。……あんたの『芸術』は、ここで終わりだ。……三宮の地下、全部吐き出させてやるぜ」

 私は、新しいオレオを一枚口に放り込み、ガリッと力強く噛み砕いた。

 漆黒のココアが、脳内にショコラティエのラボの正確な位置を描き出す。

 サンチカ、第4エリア、最深部。

 エドワード。あなたの『城』、もう目の前ですわよ。

「……さて。マックス。ダリア。……お口直しに、ロンドンの『偽物の芸術家』を、丸ごと検食(ガサ入れ)して差し上げましょうか」

(第21話・了)

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