聞きたくないおまけ
「ところで紅蘭ってどうしてお相手に難航しているのですか?あれほど情熱的な方なのに。」
婚約が正式に決まって、色々なお披露目が済んだ日。
そういえば、と思い出した。
向かいに座っていたノルンは、不満を言う。
「レミィ、僕の前で男の話なんて、もう浮気するつもりなの?」
私は首を振る。
「だって皆秘密にするんですもの!気になるじゃありませんか!」
隠されなければ気にならないけど、あんなに意味ありげに隠されると気になって仕方がない。
「それにどうしてノルン様が紅蘭に厳しかったのか気になるもの。」
私が隣に座ると、ノルンはあーとか、うーんとか抵抗する様子を見せつつ、最後には折れてくれた。
そして、妙に前置きをしてくる。
「これはあくまで噂だから、そういうことだからね。いい?決して口外しちゃだめだよ?失礼に当たるかもしれないし当たらないかもしれないから。」
でもそれが何だか曖昧なのは、どうしてだろう。
「仙渡の接待のことは…レミリアは知っている?」
仙渡といえば、夜の歓楽街が有名な小さな国。
要するにいかがわしい接待のことだ。
犯罪の温床で、関わってはいけないと聞かされる。
「アルガーデンでは関与することは禁じられているけど、西側ではそうでもない。だから、古群に声が掛かることがあったらしいんだ。特にあの国は…その、結構積極的な国だから。」
こちらでは仙渡は悪いものというイメージだけど、他国ではそうでもないんだ。
文化の違いだ。
「仙渡の接待の役人が紅蘭に、接待のための女性の要望を聞いたことがあるらしい。夜の相手のね。紅蘭は乗り気で、要望を答えたらしい。」
恋人は居なくても、遊びは乗り気ということなのかな。
その辺りも、文化の違いなのかもしれない。
「何て答えたの?」
ノルンは苦笑いを浮かべながら、続きを話す。
「『50時間続けられる体力が良い』と答えたと言われてる。」
50時間……?
それは人間?
「えっ、どうなったんですかそれ…」
はしたないことだけど、つい好奇心が勝ってしまう。
まるでかぐや姫の難題みたい。
「もちろんそんな人間は居ない。役人が恐怖して逃げたとか、紅蘭は怒って仙渡の入国を拒否するように兄や父に強いたとか。だから西側で唯一仙渡と国交が認められていないらしいと言われているよ。噂だけど、紅蘭は否定していないらしい。」
紅蘭は体力宇宙人だったんだ。
全然知らなかった。
「いずれにしても、紅蘭が君を夜の相手として狙っていたのは間違いないし、僕としては彼が良くて僕とは嫌だって言うのは結構ショックだった。僕と婚約するくらいなら死んだ方がマシって言われているみたいで。50時間は死ぬし。」
確かに、50時間は死ぬと思う。
でも、紅蘭は、私に夜のお誘いをすることはなかったし、多少誤解はあるんじゃないかと思う。
もしくはそれ以降反省しているとか。
紅蘭もソルトも、幸せになって欲しいな。
「全然、知りませんでした。そういう目に遭うこともなかったので。」
ノルンは頷いて、私を抱きしめる。
「うん、ちょっと安心したし、焦りもした。案外うまく行っちゃうんじゃないかって。ああ、良かった……。」
それはちょっと、嫉妬してくれてたのかな。
「レミィは僕のだから、もうその話はいいでしょ?」
考え込んでいると、不満げな翠の瞳に捕まった。




