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招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~  作者: 都鳥
第七章

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閑話7 籠居(ろうきょ)の姫/(前編)

「いいなぁ……」

 今日もぼーっと、窓の外を眺める。


 町よりずっと高い場所にある城の、高い部屋の窓からは、町の様子が良く見下せる。

 町の中央にある噴水の周りには多くの人が集まっている。縁に腰掛けていた小さな男の子は、母親がやって来たのを見つけたようで跳ねるように立ち上がると駆け寄っていった。

 その噴水のある広場に面したカフェのテラス席も満席だ。甘いケーキにでも舌鼓(したつづみ)を打っていることだろう。

 反対側にある広い公園では子供たちが遊んでいる。どうやら追いかけっこをしているようだ。


「私も、あんな風に遊びたいなぁ……」

 それを見て、深いため息と一緒に暗い呟きが漏れ出した。


 そんなささやかな願いすら、叶わぬこともよくわかっている。

 自分はこれでも一応身分のある身だ。あのように下町の子供に混ざって遊ぶことなど許されない。

 それだけでなく、純粋な神魔族(しんまぞく)ではない自分のことを、陰で悪く言うものは『化け物』と呼ぶ。そんな自分が子供に近寄っても、怖がられてしまうかもしれない。


 何よりも、自分は軟禁されている身で、許可なくこの城から出ることは許されないのだ。町中(まちなか)のたかが公園でさえ、行くことは叶わない。


 この歳まで同じ年頃の子供と遊ぶどころか、話したこともない。

 きっとそのうちには、そんな望みが僅かでも叶う時がくるかもしれない。そんな一縷(いちる)の望みを抱え込みながら、こうして町の様子を眺めるしかできない。


 その時、部屋の扉を叩く音がした。

「……誰?」

「私です。調合師を連れてまいりました」

 近衛隊長の声がした。そういえば今日からこの城に新しい調合師が来ると言っていたっけ。


「……どうぞ」

 ひと呼吸置いて返事をすると、扉が開く。大柄で体つきの(たくま)しい赤毛の近衛隊長と、彼から一歩遅れて背の曲がった白髪の(おきな)が部屋に入って来た。

 この翁が調合師だそうだ。近衛隊長の紹介に、翁は人好きのしそうな笑みを見せながら頭を下げた。


「これからの働きを期待しています。よろしくお願いします」

 私の言葉に、翁はぺこぺこと何度も頭を下げる。

 挨拶が済むと、二人は揃って退室した。


 近衛の者たちが選んだ者なら間違いないだろう。彼らのことは信頼している。


 先ほどの近衛隊長をはじめ、近衛たちは亡き母が私の為に選んでくれた私直属の部下たちだ。

 彼らだけではなく、この城に居る者たちは誰一人として私を悪くは言わない。父の命令ではなく、私の為にここに居てくれている者たちばかりだ。


 私を大切にしてくれる者たちに囲まれていられるだけでも、恵まれていると思うべきなのかもしれない。でも……


 一人になった部屋で、また窓の外に目を向ける。カフェのテラス席に座るあの二人は恋人同士なのだろうか。楽しそうに、幸せそうに何か話をしている。


「いいなあ……」

 また口からボヤキが出てくる。


 私は大人になったら、王の妃になるのだそうだ。それが一族の為なのだと、その為に私が生まれたのだと、そう言われた。


「……嫌だな。私は自分で好きな人を探したい」

 また深く大きなため息を()いた。


 * * *


 部屋にばかり籠っていては気が滅入(めい)るだろうと、今日はメイドが中庭にお茶の用意をしてくれた。

 料理人が腕を奮ってくれたというケーキを口に運ぶ。いつも通りにとても美味しい。


 庭師が毎日手入れをしてくれている美しい庭園を眺めながら、美味しいお茶とお菓子を頂いて。でも私は一人きりだ。

 何不自由ない時間のはずなのに、物足りなく寂しい気持ちになっている。


 ここに()の近衛が居合わせたなら、私の求めに応じて一緒にお茶の席に着いてくれるだろう。

 別の近衛に見つかると、また怒られてしまうかもしれないけれど。


 その時、近くの植込みがガサリと音を立てる。

「何者ですか!?」


 そばに控えたメイドの誰何(すいか)の声に、黒髪の大人しそうな少年が姿を現した。

お読みくださりありがとうございます♪



次回更新は8月26日(土)昼前予定となります。

が、全く書けていないので、もしかしたらごめんなさい(^^;


がんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします~~

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