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生命の代償  作者: 林海
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第9話 賭博(Reckless bet)

 ここまで行動し、考えて、俺は次の疑問に行き当たった。

 ぎりぎりで俺が運命に乱入して、美子さんの身替りになる。

 その俺の意思はいいとして、彼女はそれを予知するのではないか、ということだ。もしくは、俺が乱入しても意味がないからこそ、彼女は死ぬのではないかということだ。


 時の流れが、すべて詳細にプログラムされていて一点も揺るがせにできないものだとしたら、俺の行為もすでにそこにはプログラム済みで、俺の意思は無為に終わるということになる。

 つまり、運命の前に努力はなんの意味も持たないということだ。


 となると、彼女の命を救うには、2つの前提が必要になる。

 俺の行為によって、未来は変えうるものであること。

 俺の行為が彼女に予知されないこと。

 そして、理系の俺は、この前提を確認するためには次の問題をクリアする必要があることが想定できた。

 それは、時を観察するためには、時の外から観察する視点を持たねばならないこと……。


 簡単なことだ。

 実験を行う時、実験者は実験対象に影響を及ぼしてはならない。

 実験系は隔離されて、外界の影響を受けないようにしなければならない。

 そもそもさ、実験というのは対照区も含めていくつかの区が必要だけど、実験系の中にいたら、つまり時の流れの中にいたら区を設けることはできないし、再実験もできない。

 となると、あてずっぽうの一回勝負しかできないし、その一回勝負に賭けるのは自分の命で、そのオッズはかなり悪い。

 これじゃダメだ。


 少なくとも時の流れの外の存在にアクセスする方法を確立しないと、俺は美子さんを出し抜けず、その生命を救えない。

 そこからの俺の発想は単純だった。


 課題は、時を超える存在へのアクセス。

 そして、時を超える存在を想定したら、俺に思いつくのは美子さんたちのコミュニティの人間か、神と呼ばれる存在か、悪魔と呼ばれる存在しかなかった。

 とはいえ、神だの悪魔だのが絡む事件は、集団幻覚とか集団催眠とか、普通に科学で説明がつくことの方が遥かに多い。


 でも……。

 現代科学が巨額の予算を使い、人類の最高の知能をつぎ込んでもパラレルワールドの一つも見つけられていない中で、一介の高校生が出し抜くためには、あやふやな切り口でもそれに賭けるしかなかった。

 そう、自分の中の、未来を見てしまった力を信じて、だ。


 ただ実際に調べだしてみると、厳密な科学的検証に耐える神や悪魔に対するアクセス方法はほとんどなかった。いや、まったくなかったと言っていい。

 事象としては科学的検証に耐える謎の事件は残ったけれど、あまりに偶発的すぎるものだと一人の人間としては再現ができない。


 わかりやすい例で例えるのならば……。

 UFO現象を神の出現としよう。それを不特定多数の人間が見ることはできる。集団催眠ではないってことも実証できるかもしれない。

 だからといって、もう一度、決められた時間に同じ場所に来て欲しいっていう望みはかなえられない。

 でも、俺の望みはそういうことなんだ。

 だって、相手との交渉が必要だし、会えない相手とは話し合いができないからだ。

ネット接続が不調でしたが、ようやく復帰です。


引き続き、よろしくお願いいたします。

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