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生命の代償  作者: 林海


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第8話 矛盾(Contradiction)

 100日が過ぎた。

 その間、俺は彼女たちに一切接触せず、徹底して周囲からの情報入手に努めた。

 あれだけの綺麗さだから、名前さえわかればいくらでも噂は仕入れられた。ファンと言えば聞こえはいいけれど、その実ストーカーじみた奴もいて、それなりに詳しい情報も得られた。


 噂にもいろいろあった。

 2人とも、彼氏がいただの、いいやそれは間違いで相手にされていなかっただの、恨まれているだの、それでも崇拝されているだの、そんな下世話な話は掃いて捨てるほど大量に集まった。

 でも、それだけではない。


 謎なエピソードは、美子さんの方が多かった。小学校の時の遠足で、木から落ちてきたシマヘビが、逃げもせずにそのまま彼女の首に巻きついて眠ってしまったとか。

 小学生のことだから、すぐに「蛇女」というあだ名が付いたらしい。ところがそのあだ名、一ヶ月も保たなかった、と。


 その後すぐに臨海学校があって、海中の美子さんの周りに大小様々な魚の群れが海面が盛り上がるほど押し寄せてきて、同じクラスの他の子たちはビビりまくったらしい。蛇の話は見ただけで済んだのだろうけど、自分の体に大量の海の魚が触れるような経験したら、そりゃあそっちに記憶は上書きされる。

 ま、相当にありえないおかしな話ではある。で、あだ名は、集魚灯からサカナランプで、サランちゃんになったそうだ。


 ただ、俺はその「相当にありえないおかしな話」というのを有り得る話と感じた。

 疑うことは理系の俺にとって第二の天性だったけれど、あんな力を見せられたあとでは信じるしかない。

 さらに言えば、個別の事件は作られた嘘だったとしても、俺の手の中で鉛筆が折れ飛んだ経験さえもがトリックだったとしても、そのような話が持ち上がるだけの必然性ってのはあったはずなんだ。

 つまり、嘘というのは、作られた目的があるって問題が付きまとう。真実は人為的に作られはしないけど、嘘の裏には必ず人為的な意思がある。

 ゆえに、嘘自体には意味はなくても、だからといって一顧だにしなくていいということにはならない。


 そう考えればこそ、次の矛盾が露呈してくる。

 ここまでのことがあって、彼女たちが教祖なりに祀り上げられ()()()()ということは、明らかに可怪しなことだ。

 つまり、本人が、自己顕示欲のお化けで、そのために自らこのようなことを仕込んだのだとすると、教祖化の流れに積極的に乗っていたはずだ。なんせ、()()はあるんだから。


 コミュニティの掲示板だって、用心深く二重構造を持つ必要はない。

 そのまま普通に会話をし、教祖として信者を集めればいい。なにも力を隠す必要はない。


 となると、仲間は探していても自己顕示欲という動機がない彼女たちは、本物ということになる。

 つまり……、彼女の予言は成就する。

第9話 課題


に続きます。

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