3ー11
琥珀色の瞳と目があった。
この瞳の色は、間違いない。
瑠璃が置き去りにし、逃げ出した男だった。
カイラスの瞳に映った自分の顔は、なぜ、ここに、カイラスがいるのか、と焦り、問うた表情をしている。
それを察したのか、カイラスが表情を和らげ瑠璃に愉快そうに言った。
「これで、おあいこだな。
ルリ、お前が、わたしのもとを逃げ出した時。それを知ったわたしの顔は、今のお前と同じだっただろう。
さて、ゆっくりといろいろと、ルリにはわたしに聞いてほしい話があるようだから、ナオは下がってよい。
ふたりきりにしてくれ。」
瑠璃が茫然としていると、ナオは静かに退室し、応接室には、ふたりきりとなった。
ナオが退室し、ふたりきりになると、カイラスが瑠璃に手招きした。
瑠璃が理由がわからず、立ち上がろうとしないでいると、カイラスが瑠璃に近づいてきた。
瑠璃の左手をとり、瑠璃を立たせた。
瑠璃はカイラスと向かい合うかたちで立っていた。
瑠璃よりも、長身のカイラスに見下ろされて。
「わたしが与えた、金環をしていないな。」
その声音に、瑠璃を責めるものが少なからず含まれていた。
なにもつけられていない左手の手首を、カイラスが触れる。
瑠璃も、自分のなにもつけていない左手の手首を見た。
カイラスに顎を捉えられた。
瑠璃を逃さないように上向かされる。
その琥珀色の瞳は、瑠璃になにかを訴えようとしていた。
金環は、瑠璃のポケットに入っていた。
捉えられていない片手で、ポケットのなかを探り、金環を確認すると、カイラスの前に取り出した。
カイラスは少しだけ、口の端をあげると、瑠璃から金環を受けとって、金環を自分の飾り帯に吊られた小物入れに、いったんしまった。
「ルリが、領主としてのわたしに会いにきた理由をまずは聞こうか。」
と、冷静な声で言いながら。




