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9-7 業界人、オヤジとして命ずる



会議はいつもよりも少し早めに終了した。

私は久しぶりにヘリで清山へ帰った。


「遅くまで待たせてすまないな沢木」


「そんなの全然です!師匠大臣のお役に立つのが仕事です!」


「俺の役に立つのは仕事じゃないのか?」


「そんな! トミー副会長へのお仕えももちろん重要な任務ですよ!」


「それやめろな」


「あー! ほんの数日ぶりだけどやっぱり帰れるのは嬉しいよ」


「みんなも楽しみにしてますよ! まだ起きて待ってるんじゃないかなあ」


会話を楽しんでいたらすぐに清山へ到着した。


ヘリポートではメグと軍団が出迎えてくれた。


「「「「「「「オジキ大臣、お疲れ様です」」」」」」」


夜中なのでいつもよりかなり小声だった。

ちゃんとしてるな。


「夜中に出迎えありがとうな。訓練で疲れてるだろうに。でもその呼び方はヘンだからな」


軍団にエスコートされながらタワーのリビングへ向かう。

みんなそこで待ってくれているそうだ。



「うきゃーーー! ハージーメー!!!!!」


エレベーターを降りるとダッシュでヒカリが飛び込んでくる。

あーなんてかわいいやつだ。存分に抱きしめた。

もうボケットに入れて持ち歩きたいわ。


「お帰りなさい! ふたりとも大活躍っすね」

「お茶漬けでもどうです? あ、とりまビールですかね。ツマミ作ってきますね」

「リアムも会いたがってたんですが寝ちゃったんですよ」

『アンジーもアンナに預かってもらってるんだ。

タクスケ! オレも飲むからウイスキーくれ!』   

「モンスター図鑑アプデしときました!」

「あとで新しいひみつ道具を見ていただきたいのでりますよ」

「明日は自分がお送りする番ですよ! 曲芸飛行楽しみにしててくださいね」

「いや、それは危険だからやめとこうな」


あー楽しい。和む。安らぐ。

ここが、我が家だ。


―――――――


「へえ。マイクはそんな凄腕のスナイパーだったんだな」


「レジェンドって呼ばれてたらしいですよ」


「隊でも聞いたな。レジェンドスナイパーが復帰したって。マイクのことだったのか」


「昔の話だよ。復帰してないから訂正しといてくれよトミー。でも狙撃班は伸びたぞ。かなり使えるチームになった」  


「頼もしいな! 回廊も機能しそうだな」


「凄腕といえばリアム! あの子すごいわよ」


「ゴローとアンナが謙遜してただけっすね。アレはもう立派な整備士っすよ」


みんなとワイワイ楽しく話す。

タワーにしたのはそういうことか。

外のキャンピングカーではうるさすぎただろう。


そこで大事なことを思い出した。


「みんなごめん、ちょっとだけ外すわ。メグ、少しいいか。外に来てくれ」


―――――――


驚いたことに廊下には軍団が立って並んでいた。

いや、中に入ればいいだろ。次から誘おう。 


「どうしたんですか、オジキ」


「大事な話だ。……今日、広島が歪んだ」


「………そうですか」


「明日、芳田さんを迎えに行け」


「……いや、無理ですよ。会長は来ません」


「組が心配だからか?」


「いや、会長は代を譲ってから一度も組に顔を出してません。会長職も固辞して完全に組とは縁を切ってます。私たちが勝手に会長と呼んで付きまとっていただけです」  


「ならいいだろ。家族があるのか?」


「ひとりです。でもあの街が好きなんですよ」


「……芳田さんはそれでいいんだろう。メグ、それにお前たちはどうなんだ。あの人がひとりで死んでもいいのか」


全員が俯く。 

やがて肩を震わせだした。


「…………」


「どうなんだ」


「…………いいはずないですよ。いいはずないじゃないですか!!」


「……よしわかった」


私は少し息を吸って、それから伝えた。


「部隊に命ずる。芳田さんを誘拐してこい。殺されてでもここに連れてこい」


「「「「「「!?」」」」」」  


「聞こえないのか? 芳田さんを拉致してこい。手段は選ぶな。………これはお前たちのオヤジとしての命令だ」  


「………オジキ?………いやオヤジ!」


「人選はメグに任せる。沢木を貸すからヘリで行って来い」


「「「「「「はい! オヤジ!」」」」」」 


全員が返事した。泣きながら。


「じゃあ今日は解散な。早く帰って備えろ。

……あとこれからは外で待つな。中に入れ」


「「「「「「はい! オヤジ!」」」」」」 


「いや、やっぱりオヤジは……」


「無理ですよオヤジ。盃はいま交わしました」


そう言ってメグは軍団を連れて引き上げていった。


ひとりでリビングに戻るとみんなは私を待ちわびていたようだ。


「ツバメおそーい!」

「ツマミできましたよ!」

「なんか、揉め事っすか?」

「師匠大臣! 冷えたビールです!」

『ツバメもそろそろウイスキーを覚えろよ』

「タモそれもうぬるいだろ、師匠大臣、私が注ぎます!」 

「図鑑を」

「ひみつ道具を」


騒がしいけど、幸せだ。


浸っているところに冨川がささやく。


「大人気だな、オヤジ」


聞こえてたのか……。恥ずいぞ。

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