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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
氷姫と悪夢と紫の書

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72/90

氷の城になにが潜むのか

 暑い日差し、熱い熱、それが砂漠の醍醐味や趣とでも、代表作とでも言うべきか。

 けれども現在(いま)の水の国シュトルーデルカは砂漠の国ではなく、氷の国とでも言うべきだろうか?


 氷。

 吹雪。

 北風。

 白。


 今、俺達は一瞬にしてそんな世界に変えた《氷姫》の元へと向かっていた。


「け、けどけど! あそこに要るんでしょうか……さっきの白い姫さんが?」


「確かに居るかどうかは別として、あんな大仰な場所が用意されているんです。さっきのお姫さんの居城としては、可笑しくないと思います」


 女死神が指差す先に見えるのは、大きな真っ白い城。真ん中には大きな館、そして東と西に高い塔がそびえ建っていた。

 建物全てが氷で出来た、透き通った真っ白い城である。

 あそこに《氷姫》が居るかどうかは定かではないが、あんな如何にも怪しげな城に何か状ような人や重要な物が居るのかは確かである。


「少なくとも、あの城は行ってみる価値はあるだろう。砂漠の真ん中にあんな城があり続けたと、考えるのは変だろう。

 ならばこの氷の国を作った主がこの地に居続けるために作ったと考えるのが、一番筋が通る話である。あの女にこの前会ったのは、気味悪い博物館の価値が高いとされる高級調度品(アンティーク)が並ぶ場所だったからな。そう言うのが本当に、心の底から好きなんだろう」


 自分の好きな場所になるよう、あの女なら氷を作り変えられるだろう。


「けれどもあの女が居るかどうかは別として、重要な施設なのは確かみたいですよ」


 「ほらっ」と、女死神は城の前を指差す。城の前には沢山の、氷の狼達が警備していた。他の施設よりも厳重に警備してるとでも分かるばかりに、沢山の氷の狼がそこには居た。


「うぅっ、あの狼がいっぱいぃぃ……」


「今、あの狼達と戦うのは無意味だ。氷で出来た狼を氷の上で倒したとしても、また氷を吸収して復活するだろう」


 何度倒しても意味はない。

 ここで倒しても警戒されてしまい、警備網をさらに強化されてしまって逆に城の奥へと行きづらくなってしまう。


「……氷を焼いて、穴を開けて内部に侵入するか」


 俺はそう言って、炎を操る事が出来るウルフヘズナルの腕へと付け替える。


「――――お願いします、私の炎ではあまりにも目立ってしまいますので」


「気にしなくても良い。これは俺の仕事だ」


 うっすらと剣に炎を纏わせて、氷の城の壁に剣をなぞって行く。

 四角く縁を取り、切り取った氷の箱を雪の上に押し倒した。今はまだ氷の箱の薄い水色が見えているが、すぐに白い雪が氷を覆い隠してくれるであろう。


「さぁ、行くぞ」


 俺がまず剣を持って先陣を切り、その後ろに女死神。女死神の服を掴んだアケディアが続いていた。


 氷の城の中に入ると、そこには仮面を付けた兵士の門番達が槍や剣と盾などの重装備を持って徘徊していた。彼らには下半身はなく、床や壁に張り付いて動いていた。


「あの兵士さん達……腰から下が……」


「えぇ、床や壁をナメクジのように動いていますが、恐らく足は必要ないんでしょう。氷はあの人達の、化け物達の領域だ」


 この氷の城は、あの化け物達にとっての領域だ。領域の範囲内ならば、どんな所でも行ける。

 ……こいつは厄介な相手ばかりだ。


「とりあえず、この城を探るぞ。あの門番を倒すのは先程と同じく、やるのは後だ。見つからないように気をつけるぞ」


 あの仮面の兵士達も、門の前に居たような氷の狼達と同じく倒しても、倒しても意味がない。

 見つからないように、城の奥へと向かおう。


「何手にも別れるのは危険だ。何手にも分かれた結果、一手が見つかった時点で他の奴らも見つかってしまえば本末転倒、意味がないからな」


「その意見には賛成ですね。特に、この臆病な龍人さんが一番見つかる可能性が高いです」


 女死神はそう言い、アケディアを見る。

 確かにその意見には俺も、なんの違和感もなく受け入れられる。


「え、えっと……それについては (大丈夫) (です)


 アケディアは小さく、聞こえるかどうか分からない声で、「大丈夫」と言っていた。そう言うと共に、パチンと指を鳴らすと共に、俺の胸の真ん中の穴に小さな渦が生まれる。その渦に吸い込まれるように、彼女(アケディア)の身体が吸い込まれていく。


「……収納魔法と空間魔法を合わせた、収縮魔法ですか。いや、収縮技術と言うべきでしょうか?」


「どちらにもせよ、これで問題が一つ消えたな。アケディアが見つかるというリスクだけは避けられたみたいだな。

 ――――さぁ。女死神、行くぞ」


 そう言うと、フードから少しだけ見える口元から笑みがこぼれていた。


「久方振りの騎士のあなたと冒険が出来るのは、嬉しい限りです」


「この胸の真ん中の穴に1人、怯える龍の者が居るが?」


「それでも――――です」


 少し笑みをこぼした後、女死神は前を向く。


「この城の奥には、《氷姫》が確実に居るのでしょう。その気配がこの城に入った後から、徐々に大きくなっているのを感じています。

 ――――氷の城の前ではこの氷の壁が邪魔して、気配を察知出来ませんでした。けれども氷の城内ではその気配がきちんと察知できます。こっちです」


 と、指を差して左の豪勢な装飾が施された扉を指差す。


「あっちだな、了解した」

よろしければご意見、ご感想をくれると嬉しいです。

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