魔王軍とはどのような存在であろうか
今回はかなり短めです。
「――――我が同朋がこの世を去ったようだ」
――――暗く暗く、全ての者が見捨てて諦めてしまった世界、その名もムスペルヘイム。
その王にして神、《魔王》アマデウス・ノーニーズは深い言葉で声を出していた。
「《埃神官》ユーリ・フェンリーは自分の演目を達成し、彼を倒せし者にとって丁重に葬られた。
そう、彼の望みであるあらゆる者に読まれると言う――――《忘れらない》という想いを胸に秘められてな」
素晴らしい、と感嘆の声を放つアマデウス。
彼が率いる魔王軍。
全ての人間を巻き込む、大きな事件を引き起こすために結成された者達。
魔王軍に所属する者全員が全員、事件を起こしたい想いがあり、その筆頭たる彼は仲間の死を残念がらない。何故なら、それこそが我々の組織の存在理由なのだから。
「とは言え、四天王の一角たる《埃神官》ユーリ・フェンリーが消えた事は嬉しい事ばかりとは言えないな。今回、彼を倒した者はなんと言う名だ?」
『ジェラルド・カレッジと言う名の騎士です。とは言え、彼は人形の魔物に宿っていますが』
《魔王》の問いに答えたのは、黒い影のような丸い球体のような身体の男。
その男は身体と同じような丸眼鏡をクイッと上に上げながら、《魔王》にそう進言する。
「ジャラルド・カレッジ……どこかで聞いた名だな」
『はい、この間《蒼炎》が魔法……いえ、能力を使って奪い取った身体の持ち主です。
次に落とす国がその者の彼が必要だからと言う理由で、奪い取っていたはずです。とは言えども、あまりにも熱血すぎてまだ騒動を起こせていないようですが』
「熱血な男は止めておいた方が良いのは、今後の教訓にすべきだな。今後は《蒼炎》に注意さすべきだろうな。
……だけれども今回の件では、ジェラルド・カレッジのおかげで《埃神官》の目的が果たせたようだし、彼は我々の救世主になりそうだ」
彼らは魔王軍。
普通の魔王のように世界征服や人類滅亡などを企まず、ただ自らの存在を証明するためだけに存在する者達である。
その一方で魔王軍と《魔王》アマデウス・ノーニーズが注目している、ジェラルド・カレッジ一行はと言うと、《埃神官》ユーリ・フェンリーが消えた後に残った本を図書館に寄贈した。
そして新たな仲間としてインヴィディアを加えた彼らは言うと、その足でヴォルテックシアの王都へと歩みを進めていた。
「うふふ、今度は王都で王国相手に何かするのかな?
このインヴィディア……いや、ユーリ・フェンリーは楽しませて貰いたいですね」
まさかインヴィディアの中に、ユーリ・フェンリーの精神が宿っていると言う事態に陥っているとは、この時の彼らは知る由もなかった。
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