なぜこの小説はこのようなタイトルになったのか
(ともかく……この小剣は厄介だな)
ユーリが生み出す俺の影を剣で斬りつつ、俺はユーリの禁術によって生まれたこの赤い小剣の扱いに迷っていた。
威力は十分、だけれども相手を勝手に食い破るという獰猛性はいただけない。
勝手に動く、どう言う原理か分からない以上はこの左手の赤い小剣を信じる事は出来ない。
「仕方がない、か……」
俺はそう言って右手に持っている剣を強く握りしめ、自分の左手を斬り落としていた。
俺の身体から落ちた左手、そして左手に付いていた赤い小剣はそのまま糸が切れたかのように動きを止めていた。
右手に持っていた剣を鞘へと戻すと、落ちた赤い小剣を手に取っていた。
「――――さて、と。これならどうなる、かな?」
俺はそう言いながら手に取った赤い小剣を振るいながら、迫って来ていた黒い影に刺していた。
するとまるで風船に針を刺したかのように、一瞬にして消え去っていた。
「破壊力は申し分ないし、これなら十分に武器として使えるな。……よしっ!」
俺はそう言って外していた左腕を再び自分の身体として付けて、片手に赤い小剣を、もう片方の手でいつもの剣を装備していた。
少しばかり長さや重さに違和感があるが、これくらいは威力を考えみても仕方がないだろう。
「自らの腕を斬り落とす! それはまさしく喪失を感じ取った人と言う、私が望む面白い展開そのものだよ!
それにも関わらず、なんだその呆気ない感じは! そんなのはこのボクが望む演出としてはリテイクさせて貰いましょう!」
ユーリが怒鳴るように声を出すと、部屋の中から多数の禁書が彼の周りに集まっていた。
「さて、そろそろ終演と参ろう。これ以上君達のために紙を費やすのはあまり得策ではないと判断したからね。それにあまり長々と細かい山場を作るのは作品の質自体を落とす行為だと言わざるを得ないからね。
ここはこのボクのとっておきをお見せしよう。そう、このボクだからこそ出来る最高の技を披露させていただこうじゃないか」
彼の周りで禁書が回りだし、そしてページが1枚、また1枚と本が開いて彼に見えるように現れる。
「複数の禁書を使っての攻撃を受けてみよ。
禁術的連携による持続剣の財産!」
彼が魔力を込めて呪文を唱え終わると、彼の周りに複数の剣が生まれていた。
1本は黒く、もう1本は白といった風に色はそれぞれ違い、炎を纏っていたり雷を纏っていたり、あるいは長かったり小さかったりと、その剣はどれも形こそ違えどその身に秘めた物は一緒だった。
それは明確な殺意――――相手を斬ろうと言う明確な攻撃の意思であった。
「その剣1本は国家を滅ぼす軍隊と同じ、禁書1冊が凝縮されているようなもの! たかが剣と侮って貰っては困るな! これこそが我が必殺の攻撃である禁書の終演!
この圧倒的な力を持って、君達全員の幕引きとさせてもらおう! 行け、我が役者達!」
ゆっくりと剣達は空へ飛んで行き、そしてそのまま俺達全員を狙ってその剣はまっすぐ落ちて来た。
「さぁさぁ踊れ、我らが役者達よ! 我が力に驚き、そして最後の輝きを見せつけろ!」
くそう! 数があまりにも多い!
檻の中に居るインヴィディアは無事として、それからインヴィディアの近くに居るラースも問題ないと言えるだろう。だけれどもアケディアは……まぁ、良いだろう。
「1本1本が国を滅ぼすだけの力を持つ禁書と同じ存在だとは……。だけれども1本1本を着実に相手しておけば、勝てない力ではない! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺は2本の剣を両手に掴んで迫って来る剣を1本1本処理していく。
長剣、小剣、サーベル、ナイフ。
火、水、毒、雷、土。
上から、下から、斜めから、そして背後から。
俺を狙って来るその剣達は1本1本が確かに彼の言う通り、国家級の力を持っていると言える。
だけれども、ただ迫って来るだけで騎士団に迫る強さとは言えん。
「……なにが国家を滅ぼすだけの強さだ! こんなの、国を守って来ている騎士団よりも弱いぞ!」
たかが1本、されど1本。
国を滅ぼすほどの力を持っていようとも、意思がないたかが剣ごときではこの俺は倒せん!
――――そして、それを操っているのがただの脚本家と言う戦士ではない以上、倒すのは簡単だ!
「わざわざ剣の形にした事が一番の失敗だと言ってやろう!
剣術心得、千手観音!」
剣術心得、千手観音。
これは別に剣を特定の形で振るなどはなく、相手の技を跳ね返すと言う概念から入る技である。
相手の技を利用して、力を使って、相手にそれを返すという心得なのである。
「1本1本が国を滅ぼすだけの力を持っているのならば、それを何本も跳ね返して与えればいくらなんでも死ぬだろうよ!」
そうやって俺は向かって来る剣を、2本の剣を使って振ってユーリに傷を与えていた。
1本1本、ユーリを逃がさないように狙いを付けて力を変えながらユーリに向かって攻撃を返す。
自分に迫って跳ね返される剣を見て、ユーリは焦るどころか、どこかご満悦な笑みを浮かべる。
「あぁっ! 良いねぇ! 禁書の副作用が効かないこの私が! 禁書の力を体現させた剣で追い詰められるとは!
炎の能力者が炎で追い詰められたり、毒の能力者が毒でやられたりとね!
あぁ、自分がそう言った立場になっていると考えるだけでもそそられるシチュエーションだよ! さて、次はどのような面白い行動をしてくれるかと考えるだけでも嬉しいよ!」
「うるさいぞ、この変態野郎めが!」
俺はそう言って最後の1発の銃弾を、ユーリの胸元に叩きこんでいた。
胸元に叩きこむと、ユーリは口から血反吐を吐きながら嬉しそうな顔を受けていた。
「ははっ、これまでか……。まぁ、だけれども……これで歴史にこのユーリ・フェンリーという名前が刻み込めたと思えば……嬉しい限りだ……。
あぁ、最後に……お前の……生き様を描いた物語のタイトルを……付けさせて……貰おう」
そう最後の言葉を残したユーリはその場に崩れる。
「胸に……サビがある……ことから……『サビ付き英雄譚』とでも……名付けさせて……いただこう……」
そう言ってガックリと、その場に倒れるユーリ・フェンリー。
ユーリ・フェンリーが倒れると共に、インヴィディアを囲んでいた檻が消えていた。
「……なんだよ、そのタイトルは」
そしてユーリが倒れた場所には、1冊の古びた本が現れていた。そしてその本には『ユーリ・フェンリー』の名前が刻まれていたのであった。
こうして俺達はユーリ・フェンリーを倒し、ラースの友人であるインヴィディアを助け出す事が出来たのであった。
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