恋は盲目ではいけない
ソプラノ歌手の歌が終わり、しっとりしたバラード曲が流れている。
私はさらに言葉を重ねる。
「結局、恋愛の先にある結婚。それはいかに許し合えるか――だと思うのです。交際している最中から、気に食わない点があっては、うまくいかないと思います。よって欠点も含め、好きであると伝えるこのセリフをチョイスされたのは……いい傾向です。きっと良い恋愛ができるでしょう」
「そのローズベリー伯爵令嬢の考えに、僕も賛同します。欠点さえ、愛おしく思えるなんて……。究極だと思いました。ただ、甘やかすだけではダメですよね? 誰かに迷惑をかけるものであれば、直すようよう伝え、サポートする。よりよい二人になっていけると、いいですよね?」
そう、まさにその通り!
恋は盲目ではいけないのだ。
浪費する妻に目をつむり、買い与え続けてはいけない!
そうしないと次の世代にしわ寄せがくる。私のように。
先代伯爵が妻の浪費を許し、その借金のせいで、私は意に沿わぬ結婚をすることになったのだから……。
こうしてこの後もイーサンは、紙にメモしたセリフを私に沢山聞かせてくれた。過去の恋愛レッスンと違い、的外れはない。実に的を射たチョイスばかりで、私は何度も感動することになった。
なんだかんだで恋愛レッスンも、約束の一ヵ月まで残り半分。
つまり、折り返しが近づいていた。
◇
三冊のロマンス小説での恋愛レッスンを終えると、より具体的な恋愛テクを学ぶということで、オペラや演劇を鑑賞することにした。
昼間の公演は、軽快なコメディ作品の上演が多かった。対して夜の公演では、よりドラマチックで重厚な演目が多い。ただ上演される作品は、圧倒的に悲劇が多かった。
悲劇は、その重さの度合いによるが、観客の印象に残る。
さらに道徳的な教訓が含まれることで、観客に納得と共感を持たせることができた。この世界の脚本家は皆、せっせせっせと悲劇を生み出していた。
イーサンには当然だが、ハッピーエンドになってほしい。そこで見つけてきたハッピーエンドのオペラを今晩。観に行くことになった。
事前にリブレットを入手し、ティータイムで待ち合わせし、その内容を確認。小腹を満たし、劇場へ向かうことになった。
待ち合わせたのは、劇場に近いホテルのカフェ。
ここは、オペラの観客が夜公演の前に利用することが多かった。よって三段スタンドのティーセットを提供した後、丁度いい量のサンドイッチの盛り合わせも出してくれるのだ。これが好評で、このカフェはオペラの公演に合わせ、連日満席だった。
当然だがカフェの席は予約をしているので、十五時に席にて待ち合わせ。
午後屋敷に出て、そのまま夜まで外出することになるので、ドレスは何を着るか迷ったが……。














