悶絶し過ぎて、おかしくなる
「君の喜びが、私の喜びです。君の悲しみは、私の悲しみ。いついかなる時も、あなたと共に。永遠の愛を誓います」
「うわーーーーっ!」と叫びたくなるのを堪える。これは絶対にロマンス小説のセリフだと分かっていた。分かっているのに悶絶し過ぎて、おかしくなっている。
なんとか理性を保つため、言葉を発することにした。
「クラエス副団長、今のセリフ! クライマックスで、ヒロインに想いを寄せる騎士が言う告白のセリフですよね!」
「ええ、その通りです。……ローズベリー伯爵令嬢は、ちゃんと覚えているのですね。ではこれはどうですか?」
そう言ったイーサンが、今度は私の頬を自身の両手で包み込む。
いきなりのキス寸前の状態になり、「はうっ」と私は声をあげてしまった。だがイーサンは聞こえていないのか、そのまま甘々なセリフを口にする。
「今、ここでキスをしなかったら、私は一生後悔するでしょう。どうかお許しください。あなたの唇を奪うことを」
もう泣きたくなっていた。
だってこんなにとろけそうな言葉を言われているのに、これはロマンス小説のセリフなのだ! ここで目を閉じていても、いつまで経ってもイーサンはキスをすることがない。
ち、違う!
キスを望んでいるわけではない。
「ローズベリー伯爵令嬢、今のセリフはどうですか?」
イーサンの顔は離れたが、まだ両方の頬を、彼の手で包まれた状態で、私はジャッジをすることになる。どんな苦行なのかと思いながら、心の中で号泣しながら答えた。
「は、はい……これは、中盤の騎士がヒロインへの想いを自覚し、キスをしようとするシーンですね。はい、すごくいいと思います。た、ただ、やはり、正式に告白する前に、キ、キ、キスッはダメだと思います!」
「……なるほど。そうなのですね。キスは告白してからですか」
「厳密に言えば、婚約してから、だと思います」
イーサンは「でも確かにそうですよね……」と呟き、ようやく私の頬から手を離した。
恋愛レッスンは私がしているはずだが、もはや自分がうまく機能できているのか、自信がなかった。
だがイーサンは私の心配をよそに、もう次のセリフへ進んでいる。














