はにかむ姿も愛らしい!
ロマンス小説を教材に選んだのは、正解だろう。
続けよう!
「クラエス副団長、他にはいかがでしたか?」
フルーツケーキをパクリと食べると、イーサンはロマンス小説をめくる。
なんだか付箋いっぱいの辞書をめくる受験生みたいに見え、微笑ましい。
「はい。後は『狩りの付き合い程、退屈なものはない。結局、男達は森の中へ入り、女子供は森の外の天幕で男達の帰りを待つ。女同士でおしゃべりしてスイーツを食べて……。屋敷と変わらない。デートで狩りは止めて欲しい』これですね。僕は狩りには弓の訓練も兼ね、よく出かけていたので、とても衝撃でした」
「あ、でもこれはケースバイケースです。乗馬が好きな令嬢もいますし、鷹狩りをやるご令嬢もいますから。ですがデートでは恋人や婚約者となるべく二人きりになれたら……と思う気持ちもあるでしょうから。そこは確認すれば問題ないですよ」
しばらくはこんな感じで、ロマンス小説を読んでイーサンが驚いたことや、女性がこんな風に思っていたのかという所について話を聞くことになった。一冊のロマンス小説でこれだけ気づきを得たことは大きいと思う。
今回のロマンス小説では、イーサンが乙女心を知るいい機会になっただろう。
だがロマンス小説からは具体的な恋愛テクニックも学べる。
次の一冊は、そこに焦点を当ててもらおう。
「クラエス副団長。二冊目は、女性主人公のお相手となる男性にフォーカスしてみてください。彼がとる言動で、恋愛に役立つと思う所を、今回と同じように見つけていただけませんか?」
「分かりました。それが終わり次第、今日のように報告ですね?」
「そうです」
するとイーサンは笑顔で答える。
「では明日、今日と同じ時間でいかがでしょうか。この後、帰宅したらすぐに読みます」
「え、だ、大丈夫ですか? いろいろお忙しいのでは?」
「夕方、軽く体は動かします。ロマンス小説は、いつも読む専門書より、読みやすいです。独特の専門用語、意味を知らなければ理解できない――そんなこともないので、明日のティータイムまでお時間をいただければ、読み終えることができると思います」
なるほど。でもロマンス小説は平民の女性も読む。平民では読み書きが完璧にできるわけではないので、分かりやすい言葉が選ばれているのだろう。
「ちなみに気分を変えるため、明日は我が家の庭園の東屋でいかがですか?」
イーサンから思いがけず提案され、私がその意図を探るように、彼の目を見ると。
ぽうっと頬を赤らめながら、イーサンが言葉を紡ぐ。
「実は母親が庭師に頼み、東方の固有種と言われるウィステリアを入手し、育てているのです。今年も綺麗に咲いています。……それを……お見せしたいと思い……」
最後ははにかむように言う姿が、もう愛らしくてたまらない!
ウィステリア……。
前世で言う所の藤の花ね。この世界では、藤はまだ希少。
藤棚があるなんて確かに珍しかった。
「それは素敵ですね。では明日は、クラエス副団長のお屋敷にお邪魔させていただきます」














