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手紙  作者: ひいらぎ 梢
9/11

帰り道

 CM発表会を異世界課の用意したハイヤーで後にした主人公夫妻。疲れのせいか隣の座席で寝息をたてる妻を横目に喜八郎はあの日の出来事を思い出す。

舞台裏の控室で面会をすませた2人はそのまま先方の用意したハイヤーでイベントの終了前に帰路につくことになった。これも2人がメディアのターゲットにされないようとの配慮かららしい。


クッションの効いたハイヤーの後部座席に沈み込むように座る。CM発表会などという慣れない体験のせいで存外と疲れていたことに彼は気付く。


「でもあの人たち何かいい感じで良かったわね」

「ん、ああ、異世界課のお二人かい」

「あなた、部長さんとずいぶん話が弾んでたみたい(笑)」

「お互い古臭い名前で苦労してるって話から、つい意気投合しちまったな(苦笑)」


特殊保険部の部長は桐島平九郎という同年代の飄々とした男だった。もとは国家一種(キャリア)の官僚だったが異世界課の新設に伴い天下ってきたという。


本人の言では

「やぁ、体よく厄介払いされちゃって。ま、部下たちが良くできてるもんですから何とかなってます。あっはっは」

ということだそうだ。


「あの主任さんも若いけどしっかりしてて、頼りになりそうね。市子ちゃんといいコンビみたいだし」

「二人でちょくちょく飲みに行くみたいだけど、彼女は乱れなそうだな」


主任の十四代(じゅうよんだい)咲良(さくら)は東都大学出身の才媛で文化人類学の研究者として嘱望されていたが、恩師の薦めで異世界課に来たらしい。頭脳明晰だが人当たりの柔らかい長身の大和撫子然とした佇まいの女性だった。


と、ふと思い出したようにみどりがこう切り出した。


「そう言えば、やっぱりあのこと皆さんに話さなくて良かったのかしら?」


喜八郎は一呼吸おいて答える。


「話さんほうがいいだろう。あの人たちは信頼出来るが、万が一テレビにでももれたらワイドショー辺りで面白おかしくいじり倒されるに決まってる」

「そうね…」

「それに何よりあれは俺たち家族だけの秘密だからな」

「そうよね」


みどりは嬉しそうに微笑むと彼の右手に左手を重ねた。喜八郎は手のひらを返して優しく握りかえす。


「何か眠くなっちゃった…」


そういうとみどりは彼の肩に頭をあずけて目を閉じる。


「ああ、着いたら起こすよ。おやすみ」


 右肩に妻の体温(ぬくもり)を感じながら喜八郎は「あの時」のことを思い出していた。


〈続〉

と言うわけで手紙 第9話お届けしました。


今回も第8話に続き「ファンタジー保険」本編…まだ手をつけてませんが(汗)…登場人物紹介編になってしまいました。


次回第10話でこの作品のエンディングが始まる感じてす。あともう少しお付き合い下さい。


ではっ!

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