76話「崩壊の足音5」
よく見る冒険者ギルドの場面。
1:弱いとみられて絡まれる。
2:大物持って行って一目置かれる。
3:特に無し
さあ、この作品ではどうでしょうか...
レイジ達が目にした光景は人、家、人、人、家だった。
建ち並ぶ家々は木造の物もあれば煉瓦で造られた物もある。住宅が多く目立つが民泊、花屋、雑貨屋など散乱的にだが店も目に入る。
民泊を紹介する少女、花屋で呼びかける女性、ガラス越しに見える雑貨屋の男性店員、行き交う荷馬車を引く男性など様々な人が レイジ達 を通り過ぎ、見送っている。
だが、その誰もが“人間”とは限らなかった。
花屋の女性は耳が比べるまでもなく長い。
男性店員は背中に翼を生やしている。
荷馬車を引く男性は逞しい筋肉に頭部には大きな三角の耳。
誰もがその特徴を気にすることなく笑顔で過ごしている。
「ゼーレ...ここは...」
「うん、お兄ちゃんが思っている通り異種族が集っているよ。花屋の女の人は 精人族、雑貨屋の男の人は 魔人族、荷馬車の人は 獣人族だね」
「そうか...ここはいろんな種族が集まってるんだな。これなら俺たちも目立たないってことか?」
「うん!で、どうする?」
「取り敢えずどこかのギルドに所属して身分証を作らないとな。ギルドは何があるんだ?」
「えーとね....冒険者ギルド、商業ギルド、魔導士ギルドの三つだね」
「冒険者ギルドと魔導士ギルドは別なのか?」
「うんとね...魔導士ギルドは魔法の研究機関らしいの。だから主にやるのは戦闘じゃないから別口になったんだって」
「へぇ...それなら一択か」
そう言って レイジ 達は目的地の、あるギルドへ辿り着いた。
だがこの時、レイジ は自らが大いなる過ちを犯し続けていることに気付かなかった。
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「ここが...冒険者ギルドか」
レイジ達 の眼前には大きな木造建築物が建っていた。
3階建てのその建物は木造の柔らかい雰囲気をかき消した殺伐とした空気で建っている。
そして、頭頂部にはシンボルである剣と盾と杖のマークが堂々と飾られている。
「それじゃあ、行きますか」
「うん!」
中に入れば広々とした空間にいくつもの長机に沢山の椅子。
そして、大きな声で笑い、叫び、荒れる筋骨隆々の男達や露出の高い女達。
受付には美しい女性が並び、紙切れを持った人達に笑顔を向けている。
視線を奥へ向かせれば大きなボードがあり隙間なく紙が貼り付けられている。
「イメージ通りといえばそんな感じもする」
「お兄ちゃんの世界にある架空の話?」
「そうそう、結構的を射てるんだな。案外地球に転生者とか転移者とか居たりしてな」
「あはは、それこそ“まさか”だよ」
「それじゃあ、受付に行くか」
「はーい!」
レイジ達が受付に並ぶ列の最後尾に並んだ時ある人物と目があった。
「....殺すッ!」
「お、お前は!?」
「え?誰?」
そこには...
「ダンジョンマスタァー!!」
短く切りそろえられた赤髪、金目の少女...ロート・ヴァオレット が居た。
レイジ達と最後に死闘を繰り広げ唯一生き残った彼女が レイジ に殺意の眼差しを向け叫んだ。
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冒険者ギルド最上階にて大男と女性が向き合って居た。
「ダンさん からの連絡は『色白白髪の兄妹に注意しろ』だそうです」
「色白白髪? なんでまたそんな特徴的な奴を?」
「理由を聞くに『どうにもきな臭い』と『どこか変な感じがする』と言った直感的なものばかりでした」
「...まあ、何かあってからじゃあ遅いから伝えたってぐらいだろうな」
大男と女性が簡単な連絡をしていると突然ドアが開いた。
入ってきたのは受付で働いて居た女性の一人だった。
「た、大変です!」
「何ですか! ノックもなしに!」
「そ、それどころじゃないんです!」
女性は焦る気持ちを無理矢理に押し付け必要最低限の報告を口にした。
「だ、ダンジョンマスターがこのギルドにやって来ました!」
突拍子もない発言に大男も女性も唖然とするだけだった。
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「ダンジョンマスタァー!!」
「お、落ち着け!」
「鬼妹を抑えろ!」
「誰か手ェ貸せ!」
「ちょっ!コイツ力こんな強かったか!?」
武器である大金棒を振り暴れる ロート を必死に押さえつける冒険者達。
その暴れっぷりはまさに鬼そのもの。
どうにか床に押し付けるものの ロート の怪力によって引き剥がされるのは時間の問題だろう。
「おい!兄ちゃん! お前は本当にダンジョンマスターなのか!?」
押さえつけている男性の一人が レイジ に向かって叫んだ。
「答えろ!」
「殺す!コロスころす殺すブッコロすっ!!」
「....」
(逃げるなら...今しかないか)
レイジ は咄嗟の判断に従った。
ゼーレ の手を取り、すぐさまギルドの出口に向かった。
「ッ! 止めろ!」
声をかけた男性の叫びによって ロート の押さえつけに参加して居なかった冒険者が何人も レイジ の目の前に立ちふさがった。
「...邪魔だ!」
レイジ は腰に備えて居た妖刀の代わりに購入した蛇腹の剣を抜いた。
抜刀と同時に伸びた蛇腹の刃は次々に冒険者達の首を刈り取った。
「な!?」
誰の驚愕だろうか。そんな驚きの声が様々な場所で上がった。
「か、回復魔法を急げ! 奴を逃がすな!」
「離せッ!」
「お前はダメだ! 今のお前が暴れればこの街がタダじゃ済まないだろうがっ!」
「私が! 私がアイツを殺すんだッ! お姉ちゃんの仇を取るんだッ!」
ロート の狂気の叫びが振動する。
怒りが、憎悪が、殺意が、ロートに力を与える。
「ッ! マズイ! ゼーレ急ぐぞ!」
「う、うん!」
「殺す!殺す殺す殺すっっっっっっっ!!!」
レイジ達の一人の少女の殺意を背中に冒険者ギルドから逃げ出した。
答えは4:指名手配される でした!
これからレイジ達の逃亡劇が始まります。




