73話「崩壊の足音2」
「じゃあ、行ってくるぞ」
レイジ と ゼーレ は今ダンジョンの出口に居た。
テトラ が配下に加わってから早五ヶ月。レイジ は遂に妖刀無しで ミサキ の攻撃を受けることだけならできるようになるまでに至った。
これなら マーダ を見つければ殺せる、そう考えた レイジ は外に探しに行くことを決意した。
そんな レイジ の決意を ゼーレ は強く賛成し、ミサキ達は渋々と言った様子であったが賛成してくれた。
だが...
「やあああああああぁぁっ! パパ行っちゃやああああああ!!」
大粒の涙を流し、大きな声で泣く テトラ だけは行かせてくれなかった。
「テトも...テトも行ぐううううっ!!」
「お、おい、テトラ...」
ここ五ヶ月で急激に成長し今では五歳位にまで成長した テトラ は レイジ の服の裾を掴み、決して離そうとしなかった。
「て、テトラちゃんお兄さんが困ってるっすよ」
「やあ! パパがいくなら テト も行く!」
「テトラ...」
「うううっ!」
ハクレイ と ミサキ が詰め寄りながら優しく説得するも テトラ は一向に レイジ を送り出す気配を出さず、それどころか レイジ の足にしがみついてしまった。
「こ、これは...」
「ますたー...どうする...?」
「うぅむ...」
「や! テト も行く!」
一層強くしがみついた テトラ に ゼーレ が詰め寄り、説得を試みようとした。
しかし...
「ねえ、テトラちゃん...」
「びゃああああああああああああっ!!」
より悲惨な状況に悪化した。
「なんで!? 今のは泣かれる状況じゃないよね!?」
「お前なぁ...」
「ゼーレ先輩、いい加減自覚してくださいっす...多分嫌われてるっすから」
ハクレイ の言葉通り ゼーレ は テトラ に嫌がられていた。
それは テトラ が配下に加わったその日から今まで近づけば泣かれていた。
例え テトラ が起きたばっかであろうと、食事の後であろうと、運動の後であろうと、お昼寝中であろうと、お風呂の最中であろうと、眠っっている時であろうと。
どんな状況、どれほど上機嫌であっても ゼーレ が近づけば必ず テトラ は大泣きしていた。
「な、何で ゼーレ ばっかり...」
五ヶ月経っても解消されないこの現実に遂に ゼーレ の心が折れたのか隅で三角座りをしている。
「ううぅ...ぱぱぁ...」
余程怖かったのか テトラ は両手を上げ抱っこのポーズを取る。
「...はぁ、ほれ」
「ううぅ...」
レイジ もため息をつきながらも テトラ を抱き上げた。
すると テトラ は安心したのか目尻の涙は引っ込み、少しだけだが上機嫌になった様にも見える。
「おい、ゼーレ」
「ゼーレなんか...ゼーレなんか...」
「コイツ...」
「余程溜まってたみたいっすね」
「お姉ちゃん...」
「それで、貴方様どうするのですか?」
「どうするって言ってもなあ」
ゼーレ の言った通りなら魔物がダンジョンから出れば自我を失い破壊行為のためだけに動き続けてしまうらしい。
故に、レイジ は テトラ を外に出すわけにはいかなかった。
「どうしたもんかな」
「...ん?どうしたんっすか? ふんふん...わかったっす」
ハクレイ が突如独り言をボヤいた。それは事情を知らなければ危険な香りがするが ハクレイ の腰には妖刀が携えられて居る。
「なんか妖刀が自分を テトラちゃんに渡せって言ってるっす」
「妖刀が?」
「ほいっす」
そう言って ハクレイ は腰に携えて居た妖刀を テトラ に手渡した。
「オジちゃん? うん...や! ...え? うん...うん.....でも.....うぅ....」
それから テトラ が何度も声を上げたり、唸ったりした結果...
「.....パパ、はやく帰ってきて」
「お、おう」
テトラ が送り出してくれた。その目は若干赤く充血しており、目尻にはいあっも涙が溜まっている。
(妖刀...お前は一体何を言ったんだ...?)
レイジ は疑問を浮かべながらも難航していた テトラ の説得を上手くしてくれたことに感謝した。
「それじゃあ、行ってくか」
「ゼーレなんか...どうせ恐怖の存在ですよお...どうせ...どうせ...ぐすっ...」
「ゼーレいつまでそうしてるんだ! 早く行くぞ!」
「ぐすっ...はぁい」
そう言って ゼーレ は溜まる涙を拭いながらヨロヨロと立ち上がった。
こうして、レイジ と ゼーレ は エイナ を救うべく マーダ を探すためにダンジョンの外へ出た。
その背中をが見えなくなるまで魔物達は手を振っていた。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
「行っちゃったっすね...」
「二人っきりの旅...羨ましいですわ...!」
「ますたー...しんぱい...お姉ちゃんに...おそわれなければ...いいけど...」
「そこっすよね。絶対 ゼーレ先輩襲うっすよね。これじゃあ不公平なんで帰ってきたらお兄さんを奪っちゃうっすか?」
「そ、それは...! そ、そんなこといけませんわ!」
「パンドラ....め..かがやきすぎ....せっとくりょく....ゼロ...」
「そ、そんなことありませんわ!」
パンドラ は ミサキ に指摘され赤くなった顔を両手で覆い見えない様にして ミサキ に張り合っている。
「はぁ...早く帰ってきて欲しいっすね。それはそうと、妖刀は テトラちゃんに何を言ったんすか?」
パンドラ と ミサキ が言い合う様子を微笑ましく思った ハクレイ は帰ってきた妖刀に質問した。
(ん? それはやなあ...)
「オジちゃん! テト とお話しして!」
「あ、ちょ! テトラちゃん!?」
突如現れた テトラ は ハクレイ から妖刀を引ったくると ハクレイ の制止も聞かずそのまま奥に走って行ってしまった。
「....何だったんすか?」
残された ハクレイ は呆然とするだけだった。
結局飛びました。苦悩の果てに飛びました。
飛ばなかったらほのぼの回が続き過ぎるか、ネタバレイベントが発生するかしか思いつかなかったんです...
さて、次回から異世界を旅する レイジ と ゼーレ。イベントは...まあ盛り沢山でしょうね。




