57話「湧き立つ希望、溢れる光、その後に5」
「ど、どうして受け止められる!?」
ラルカ の表情は驚愕に彩られていた。
自己最強にして、世界屈指の技だと自負しているが故である。
「ハッ! 確かに受け止めてるだけで結構ヤバイよ」
「なら...ッ!」
この時 ラルカ はある異変に気付いた。
自分の剣に付与されている魔法が、魔力が レイジ の持つ妖刀に流れていくことに。
「くッ!」
気づいてからの行動は早かった。
ラルカ は即座に鍔迫り合いの中止を決断し、距離を取った。
「私の魔力が...吸収された?」
「...チッ、気づくのが早すぎんだろ」
「...それが貴様の能力か?」
「さぁてね、答えてやれるほど時間がないんだな」
レイジ は何処か焦った様子でそう答えた。
「...ならば早急に終わらせてやろう」
そして、二人は各々の構えをとった。
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レイジ が パンドラ の元に駆けつける少し前。
戦況は侵入者側に傾いていた。
(何だあの姿!?)
レイジ は ロート の変化、更に続いた ブラウ の変化に焦りを感じていた。
(ッ! 旦那、紫の姉ちゃんも危ないで!)
(...どうする)
(アカン、あのままやと直ぐに紫の姉ちゃんは負けるで...)
(...妖刀、直ぐに刃を戻せ!)
(了解や!)
妖刀は レイジ からの命令を即座に受け入れ地中、壁に散乱した自身の刃を元に戻した。
だが、次の瞬間には パンドラ の『厄災』が意味を無くしていた。
(ッ! 早くしろ!)
(ま、待つんや! もう少し!)
その次には、 ハクレイ の鎖の球体が真っ二つに割かれた。
(アカン! 鎖の嬢ちゃんが...)
(妖刀! 早く戻せ!)
(わかっとる! せやけど鎖の嬢ちゃんが...)
(いやよく見ろ! 死体も、血痕もない)
(ほ、ホンマや...)
(恐らく、上手い具合に逃げたんだろう)
(さ、さよか)
レイジ と妖刀がそうこうしている内に パンドラ の闇魔法が詠唱を中断させられるようになった。
(おい!)
(待つんや...もう少し...終わったで!)
そして、パンドラ の頭上に恐怖をばら撒く光の剣が振り上げられた。
その姿はさながら罪深き者を断罪するギロチンの様に。
(ダンジョン内転移ッ! 間に合え!)
そしてこの時、レイジ は僅かな変化を感じ取った。
(エイナの魔力が...消えた?)
唐突に起きた予想外の出来事。
しかし、その疑問を吟味する暇もなく レイジ は パンドラ の元へ転移された。
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レイジ とラルカ の剣のぶつかり合いは均衡した。
(流石、騎士団副団長と言ったところか)
しかし、レイジ と ラルカ の剣術には大きな差があった。
それでも均衡していられるのは一重に レイジ の技能と妖刀の意思の力だった。
「チッ、面倒な技能だ」
ラルカ が魔力が吸収されることを理解してから剣に、鎧に魔力を纏わせることをやめていた。
「これはどうだ!」
そう言って放たれたのは雷魔法。
飛び出した雷電が レイジ に不規則に向かい、襲った。
(妖刀!)
(任せな!)
妖刀は意思の操作により剣を一つのベールの様に変化させ レイジ を包んだ。
そして、変化した妖刀に衝突した雷電は妖刀に吸収されていった。
「魔法...と言うより、魔力そのものを吸うか」
「...」
互いに決定打が思いつかず、見合っていた。
(恐らく、吸収の技能はあの刀にある...。アレをどうにかするのが先か)
(さぁて、どうしたものか。多分、アイツは妖刀が魔力を吸収してると考えるか?)
(それなら、その隙をついて一気に決めるんやな)
(ああ、魔力も十分充電し終わった。アイツ一人ならいけるだろ)
両者の中で次なる戦いの光景が浮かび上がっていた。
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影の中の戦闘はすでに決着が着いていた。
「う、うぅ...」
「悪いな嬢ちゃん。お前たちがいくら小細工を仕掛けようと本職の俺からすればわかるもんだわ」
この戦い、始まった直後から マーダ は レイジ の妖刀による吸収に気づいていた。
そして、それを逆手に取り位置を変え、魔力の波長を狂わせ レイジ を誤認させていた。
結果、エイナ は持続的に魔力を吸われる形になり早急に魔力切れ。
立つこともままならず決着は着いた。
「お、お兄様ぁ...」
「さて、嬢ちゃんお別れだ」
そう言って マーダ が腰から取り出したのは一本のナイフ。
そのナイフは答申に奇妙な波紋を描き、何処か禍々しい雰囲気を醸し出している。
「う...いや..ぁ...」
「ふんっ」
マーダ はナイフを振りかぶり エイナ の背中に突き刺した。
「うっ....」
ナイフが突き刺さった場所からは一滴の血も流れなかった。
しかし、代わりに蠢く闇が エイナ の中に潜り込んで行った。
「さて、これで仕事も完璧だろう...」
ナイフは役割を果たしたのか粉々に砕け散ってしまった。
そこに残ったのは傷一つ見当たらない眠っている エイナ の姿のみ。
「元勇者パーティー斥候担当にして歴代最強の暗殺者...か。...はぁ、昔は良かったな」
誰に言うわけでもなく マーダ は遠い目をし、今起きている戦いを眺めた。
戦闘も終盤が近づいてきました。
エイナちゃんの今後が気になる方!
よろしかったら評価の方もお願いします!
あ、気にならない方もお願いします!
...一回も書いた事がなかったので書いてみようと思ったのがキッカケです。




