58話「湧き立つ希望、溢れる光、その後に6」
パンドラ は レイジ に助けられた時歓喜に震えていた。
しかし、レイジ と ラルカ の斬り合いが続けば続くほど、それは薄れ、次第に後悔に染まっていった。
(なにを...私は喜んでいるのですか...? 私は配下、ですのにダンジョンマスターである貴方様が代わりに戦っておられる?)
いつの間にか震えは止まっていた。
しかし、切られた左腕も、太腿も血が止まらない。痛みが止まらない。動くことができない。
(私は何をしているの? 動かなくては、戦わなくては)
無理に動かそうとするが一度抜けた力が戻ることはなく反応が無い。
(動いて、動いて下さい!)
残る右手で切られた右足を殴りつけるも結果は変わらなかった。
「うぅ...どうして...私はこんなにも弱いのですか...」
溢れ出した言葉は普段の彼女からは見られないほどか細く、弱々しかった。
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レイジ と ラルカ は互いに脳内での戦闘シミュレーションが終わり、構えをとった。
「ハッ!」
先に動いたのは ラルカ だった。
その一足で離れていた距離を縮め レイジ に差し迫った。
「うらっ!」
それを レイジ は妖刀の蛇腹を伸ばすことで中断させ、さらに自身が下がることで距離を戻した。
「...面倒な剣だ」
「応用が効く便利な剣と言って欲しいね」
「フン、そんな物剣ではなく鞭ではないか」
そう言って、ラルカ は再度構えを取り同じように レイジ に迫った。
レイジ も先ほどと同様に蛇腹を伸ばす。
しかし、
「何度も通じると思うな!」
ラルカ は光魔法で片足分の足場を作り、それを蹴り妖刀を躱しつつ、レイジ に更に迫った。
「マジかよ!?」
ラルカ は何度も見たその動きに対応し始めた。
その突然の対応に レイジ は狙った様に妖刀を手元に戻した。
「そに動き、先ほど見たぞ!」
レイジ が妖刀を手元に戻した事で妖刀は レイジ を守るベールの様な形になろうとしていた。
それを見た ラルカ は合間に自身の剣を差し込み妖刀の回る方に沿う様に高速で剣先を回し、振り抜いた。
「ハッ!」
巻き技。
力に沿った ラルカ の巻き技は伸びた妖刀を自身の剣に巻き取り レイジ から妖刀を奪った。
「これで私の勝ち...」
「いいや、お前の負けだ」
振り抜き無防備となった ラルカ に レイジ は急接近していた。
その距離は目と鼻の先ほどに。
「喰らえ」
レイジ の口元からは ラルカ が見せた恐怖の剣の光。
「そ、その光は...」
ラルカ が光の正体に気づき驚愕する。
それを嘲笑うかのように レイジ は口を開いた。
一閃。
不協和音と共に放たれた一条の光。
その光は ラルカ の腹部を消失させ、広場の壁を抉った。
光によってまった砂が収まればそこには、
「ア...ァ...」
声という声も出せず倒れ伏した ラルカ の姿があった。
「はぁ...はぁ...」
レイジ の口元には先程の魔力はかけらも残っておらず、ただ、疲労による荒い呼吸が通り抜けるだけだった。
「なんとか...倒せた...」
レイジ は ラルカ を一瞥し、その姿を確認し安堵した。
そして、ラルカ の剣に巻き取られている妖刀に近づき、解いた。
(上手く行ったみたいやな、旦那)
「ああ、お陰でこっちは疲労困憊だ」
レイジ は僅かな安心をした。
そして、
「貴方様後ろですッ!」
その安心は大いなる隙を孕んでいた。
「え?」
パンドラ の叫びにも似た消えが響き渡った。
レイジ は反射的に振り向いた。
その先にあった光景は、
「アヒャヒャヒャぁ!」
狂気的な笑い声をあげる一人の少女が大きな金棒を振りかぶっていた。




