52話「這い寄る影、蠢く破滅、その先に6」
「侵入者か...」
「...今回は何人なの?」
何者かの侵入を感知したレイジにゼーレは問うた。
「一、二、三...四人か」
「四人なら...」
「いや待て、これは...?」
「どうしたの?」
「三人が出た?」
レイジは侵入者の動向が気になりマップ機能での確認を急いだ。
「何だこいつ!」
「どうしたの?」
「侵入して来た四人の内の一人がもの凄い速さで移動してやがる!」
「ただ闇雲に走り回ってるんじゃないの?」
「いや、どういう理屈かわからんが一直線に...まるで何か目印があるかの様に走ってるな」
「ええ!? それじゃあ....」
レイジは画面を見つめながら考えた。
今できる最善の一手を。
「どうするのお兄ちゃん?」
悩むレイジにゼーレが心配そうな目を向けながら聞いた。
「....『暗黒』で迎え撃とう」
「え? 奇襲はしないの?」
「ああ、正直今から奇襲に迎えるのがレイスだけだ。だが、そこにレイス単体でいかせて返り討ちにあった場合...最悪だ」
「なら、全員で万全な状態で迎え撃ったほうがいい、ってこと?」
「そういうことだ。それにこの様子からしておそらくこいつは偵察の可能性が高い。偵察なら戦闘を必須としないから上手くおびき寄せられるかも知れない。そうなればレイスは四人とやり合う事も考えられるからな」
考えがまとまったレイジは画面を閉じた。
そして、周囲にいる魔物達に視線を向けた。
「という訳だ。これから『暗黒』で侵入者どもを返り討ちにする。皆んな戦闘の準備をしてくれ」
「わか...った...」
「準備万端ですわお兄様ぁ」
「貴方様、私はいつでも行けます」
「初戦闘っすね! 気合い入れてくっすよ!」
(やっとワイも活躍できるな)
見渡した魔物達は次々にそう言った。
「お兄ちゃん...気をつけてね」
「ああ。...よし行くぞ!」
レイジの掛け声と共に魔物達は『暗黒』の階層に足を踏み入れた。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
レイジ達が『暗黒』層円形広場に到着する頃、ブラウ達四人は『暗黒』層に足を踏み入れていた。
「あの砂漠も種がわかれば大したことありませんね」
ブラウは少し得意顔でそう言った。
「にしても、よくブラウちゃんは知ってたな。あの階層が方向感覚を狂わせる類の物だって」
「過去に似たような階層に入ったことがあるだけよ」
「いやはや、恐れいったよ」
「それはそうと、ココからは貴方の出番よ。任せて良いのですよね?」
「ああ、依頼通りしっかり働かせて貰うぜ」
そう言ってマーダは自らの影を伸ばした。
その影はどこまでも遠く、広くに渡っていった。
「...ふむ、こっちだな」
マーダは暗闇の中を見えているかのように歩き始めた。
「おっと、そうだ。これもやらないとな」
そう言ってマーダは腰につけている袋の底に小さな穴を開けた。
開けた小さな穴からは光り輝く粉が舞い落ちた。
その光は暗闇の中を照らすことはない。しかし、しっかりと道しるべの役をしていた。
「それじゃあ、見失わないようについて来てくれよ」
そう言ってマーダは改めて先行して暗闇の中を歩いて行った。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
休憩を挟むことなく、最短経路を足早に踏破した四人は『暗黒』階層の円形広場の入り口まで来ていた。
「どうやらココがボス部屋みたいだな」
暗闇の中何故か認識できる色合いを持つ大きな扉が四人の前に立っている。
「ふむ、道中の魔物も大したことがなかったな」
「そりゃあ、出来たばっかだからだろ? あんまり経験値とかも期待しないほうがいいぜ」
「二人ともあまり油断しないように。実際、中級冒険者が二名行方不明になっているダンジョンです。...特にロート」
「な!? 何でさお姉ちゃん!」
「あなた、ココに来るまでに何回か影狼に背後を取られていたわよね?」
「うっ...それは...。でも! ちゃんと殺したじゃん!」
「はぁ、いいですか? そういう油断が危険を招くのですよ。十分気をつけるように」
「はぁい」
そう言ってブラウはロートに注意しながら門の前に立ち、手を掛けた。
「では、開けましょう。皆さん、油断しないでくださいね」
ブラウの言葉に全員が頷く。
そして、それらを確認したブラウは扉を開けた。
そしてその瞬間、ブラウ達四人の視界が黒に染まった。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
「侵入者どもは扉前に来た。...手筈通り行くぞ」
レイジ達は先に到着し戦闘の準備を進めていた。
そして、これがその一つ、扉を開けた瞬間の奇襲。
前回の侵入者でエイナが自発的に行った奇襲。
今回はそれを他の魔物達と同時に行うことをレイジは考えた。
そして...
「や、やったすか...?」
今回、扉が開けられた瞬間エイナの影の槍、パンドラの闇の槍、ハクレイの鎖が侵入者を襲った。
そして、ほぼ同時の奇襲に手応えを感じたハクレイが呟く。
だが...
「中々に、手厚い訪問ではないか! 魔物達!」
「ひゅー、危ないなあ」
土煙が落ち着き、月光が照らした先に居たのは四人。
前側に鎧を着た女傑ラルカとローブを羽織った暗殺者マーダが魔法を展開して居た。
ラルカの前には光り輝く盾。
マーダの前には深く暗い影。
その二つが奇襲を完全に防いでいた。
その光景を見たレイジは
「やっぱ、一筋縄じゃ行かねえか」
そう独り言るのだった。
化け物共にはダンジョンの壁罠足止めなど通用しない...。
次回から戦闘回。
多分長い...短くすべきかどうか悩みどころですね。




