51話「這い寄る影、蠢く破滅、その先に5」
「では、もう一度手順を確認しましょう。まず、私が入り口から直線状に砂漠を裂きます」
「で、お姉ちゃんが付けた攻撃に沿って私が出口を見つけてくればいいんだよね?」
「ええ。見つけられても、見つけられなくても必ず戻ってくるのですよ?」
「はいはーい」
「戦闘は必要ありませんからね? 最悪、見つけることを断念しても構いません」
「わかってるって」
「そうですか。では、参りましょう」
そして、四人はダンジョンの中に一歩踏み出した。
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ダンジョンに入るとそこは少し変わった砂漠だった。
大地は乾き全て砂と化し、生える植物は緑をつけることなく痩せ細り、空は赤黒く染まり、頂点には赤い太陽が強く照っていた。
「これは...」
「あまり、気分のいい場所ではないな...」
「...では、早速始めましょう。もうダンジョンマスターは感づいているでしょうし」
「ああ」
「うむ」
そう言ってブラウは背中に背負っていた大鎌を降ろした。
そして、腰を落とし半身を出し鎌を後ろに構えた。
「ふぅ.........ハアァッ!」
一度溜まっていたものを吐き出し、気合いと共にブラウは鎌を下から上に振り抜いた。
一閃。
振り抜いた鎌は風の刃を作り出し、それは暴風を撒き散らしながら砂漠を割った。
「うお!?」
「くっ!」
「あー」
暴風にマーダとラルカは吹き飛ばされそうになるのを耐えていた。
唯一、長い付き合いのロートは瞬時に背中の金棒を盾に暴風を防いでいた。
そして、暴風によって撒き散らされた砂埃が収まると...
「マジか...」
「これは...」
砂漠が左右に割れていた。
割れた先はどこまでも遠く、その端を視界が捉えることができない程に。
「ロートッ!」
「はーい!」
ブラウに呼ばれたロートはすぐに金棒を背負い、割れた砂漠に沿って走り出した。
その走り姿はまるでつむじ風。
筋力にものを言わせた走りは一歩毎に砂場を抉りちょっとした爆発を起こしていた。
「....これはまあ、何というか...流石『鬼姉妹』ってところか?」
「ああ。私もここまで派手なことはできんな...」
「では皆さん、ロートが帰ってくるまで休憩としましょうか」
「いいのかそれで...」
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ブラウ達が休憩を始めて一時間ほどにロートが帰って来た。
「ただいまーお姉ちゃ....何やってるの?」
「おかえり」
帰ってきたロートが目にしたのは華やかに休憩をしている三人の姿だった。
全員がお茶の入ったティーカップを片手にお茶菓子を摘んでいる。
「お、おお。早かったな...」
「そ、そうだな...」
その現場を見られたマーダとラルカは居心地が悪そうにそう言った。
「...お姉ちゃん?」
ロートは振り返り、主犯であると察した姉のブラウへ目を向けた。
その目はさながら鬼を彷彿させるほどに殺意を宿しながら。
「ロートもお疲れ様。こっちへ来てどうだったか教えて」
「そうじゃないでしょお姉ちゃん! 私が頑張っている間に何してるのよ!」
「何って休憩以外に何が見えるの?」
「休憩!? そうじゃなくてアイスは!? 果物は!? かき氷は!?」
「パフェはいらないのかしら?」
「いるよ! どこにあるの!」
「ないわよ」
「ないの!? なんで!?」
「帰ったら作るって約束でしょ?」
「帰って来たじゃん!」
「家に、帰ったらよ」
「ええ!? だ、騙したな!」
「騙してないわよ。大体、こんな機材も、材料もない場所で作れるわけがないでしょ?」
「グヌヌ...」
ブラウは何処吹く風の態度でロートを言葉巧みに操った。
一方、ロートは言い返しができず最後には喉元を鳴らすだけに終わってしまった。
「で、出口は見つかったの?」
「................ぁった」
「ロート?」
「...あったの! あったって言ってるでしょ!」
「そう」
ロートはいい様に使われたことを根に持ちながらもブラウの問いに答えた。
「...なあ、この姉妹っていつもこうなのか?」
「あ、ああ。私が知ってる限りではこの様な現場は度々見たぞ」
「...苦労してるな妹ちゃん」
マーダは以前から交流があったであろうラルカに姉妹の様子を聞きながら、妹のロートに憐憫の眼差しを送っていた。
「それでは、行きましょうか。ロート、案内して」
「...はぁい」
ブラウの言葉にロートは不貞腐れながら、渋々と答えた。
そして、四人は再度ダンジョンに足を踏み入れた。
はよ主人公視点に行けよ、って声がする...




