50話「這い寄る影、蠢く破滅、その先に4」
ーダンジョン前ー
「着いたー!」
ダンジョン付近に着くとロートが喜びの声をあげた。
「結構長かったか?」
「そうだな。ま、こんなもんだろ」
四人がついた場所にはいくつかのテントが張ってあり、ダンジョンの入り口には簡易受付所があり、その近くには衛兵が数人立っている。
四人の到着に気がついた一人の衛兵が走り、近ずいて来た。
「あなた方がこのダンジョンの依頼を受けた冒険者ですか?」
「ああ、そうだ」
「依頼受注書はお持ちですね?」
「持っているぞ」
「では、あちらの受付で処理をお願いします」
「ああ、わかった」
「では」
そう言い残し、やって来た衛兵は持ち場へ戻って行った。
四人は衛兵に言われた通り受付まで行くと一人の受付嬢がいた。
「あ、連絡があった冒険者様ですか? 依頼受注書を確認してもよろしいですか?」
「ああ」
四人は受付嬢に催促された依頼受注書を出した。
「...はい。確認いたしました。はあ、やっとこれで解放されるんですね」
「ほう、お嬢さんそんなにここは大変なのかい?」
「大変ですよ! ここ辺鄙な場所ですし、あまり生活する分には向いていないですし。それに、さっき階層が増えたんですよ」
受付嬢は営業の言葉遣いを忘れ一息に溜めていたものを捲し立てた。
一方で、さっき階層が増えた、その一言にマーダ達は静まった。
「...階層が増えた? 俺の聞き間違えじゃなければそう聞こえたんだが?」
「あ、そうでした! 緊急で連絡を入れたのですが皆様は受注したのが数日前でしたので...」
「そんなことはいい! それで、階層が増えたというにはどういうことだ!?」
「え、えっと、先程定期の確認をした時一階層が変化していたのです」
「何!?」
「その階層は...一言で言えば砂漠。かなり劣悪の環境下だと推定されます」
それから四人は受付嬢から新たな一階層の概要が伝えられた。
「砂漠か...」
「それもかなり広いときたか」
「これは...面倒ですね」
「暑いのは嫌だー!」
四者四様の気持ちが溢れた。
「一応、皆様が受ける場合には今ある水で可能な限りを渡すように指示を受けています」
「それってどのくらいですか?」
「四人ですとおよそ...一週間でしょうか」
「一週間もあれば攻略できる...か?」
「どうだかな。その後に光源のない階層もあるんだろ? かなり厳しくねえか?」
「むむむ...」
「...わかりました」
マーダ、ラルカの意見を聞いていたブラウが何かを決めた様に口を開いた。
「何か思いついたのか?」
「ここ砂漠の階層...私とロートでいきましょう」
「げ!? お姉ちゃんどうして!?」
「まだ提案しただけでしょうに...。話を聞きなさい」
「えぇー」
「まず私が砂漠を切り裂きます」
「砂漠を切り裂く!?」
「...そんなことができるのか?」
「全部...とは言いませんがおそらく半分はできるでしょう。そして次に、ロートを使います」
「ま、ましゃか...」
ブラウの提案に何かを察したのかロートの顔が青ざめていく。
「ええ、そのまさかです。ロートにはその切り裂いた場所に沿って走ってもらいます」
「ええ!? 私だけ暑い思いするのぉ!? 嫌だよ!」
「そして、二回層への階段を探してもらいます。大丈夫、ちゃんと腰には紐を巻いておきます」
「それでも嫌!」
「帰ってきたらアイスクリームを作りましょう」
「嫌!」
「それに加えてかき氷、冷麺、果物を用意しましょう」
「...」
「オマケにパフェも作ろうかしら」
「............ぃく」
「はい?」
「行く!行くって言ったの! 行くから作って! ...絶対だよ!」
「ええ、いいでしょう」
ブラウは少し得意げに、ロートは悔しそうな表情をしながらもどこか待ち遠しいそうな雰囲気を出している。
「それでは、行きましょうか」
ブラウの一言を始めに一度目の侵入が実行された。




