49話「這い寄る影、蠢く破滅、その先に3」
ー異世界某所ー
二人の少女、ブラウとロートは都市の門の前に来た。
そして、門の前には既に一組の男女の影があった。
「あー! ラル姉!」
ロートは二人の内の一人の元へ駆け寄った。
ラル姉、そう呼ばれた女性は薄い金髪を長く伸ばし、少しキツめの碧眼。
顔以外の全身に白銀の鎧を着込み、腰には一振りの西洋剣が携えている。
「久しぶりだな、ロート」
「うん! 久しぶり!」
「お久しぶりです、ラルカさん」
「ああ、ブラウも久しぶりだな」
少女達が再会を喜んで居ると先に来ていた男が遠慮がちに声をかけた。
その男はボサボサの黒髪に黒目、無精髭を生やした中年男性。
ローブを羽織り、ローブの下には黒の長袖で長ズボン、黒色の皮を装備している。
「お嬢さん達、再会を喜ぶのはいいが先に自己紹介からでいいかい? 俺の名前は マーダ だ。今回はよろしく頼むよ」
「これは済まなかった。私はこの都市の騎士団の副団長を務める ラルカ・フェリウス だ」
「ほう、噂には聞いていたが本当に女性が副団長に就いたのか」
「あまり過大評価してくれるな。私がこの座に就いたのは偶々だ」
「偶々、ねぇ。で、そちらのお嬢さん達は?」
「私は ロート だよ!」
「私は ブラウ・ヴァオレット。この子の姉です」
「ロートちゃんにブラウちゃんね。君達『鬼姉妹』は有名だよ、俺が覚えるほどにね」
「...あなたも有名じゃないですか。這い寄る影」
「何?」
「あらら、なんだ俺のこと知ってるのか」
マーダはおちゃらけた雰囲気で両手を軽くあげおどけた態度を取った。
そして、次の瞬間...
「フッ!」
ラルカが腰の西洋剣を抜き、マーダの首元へ振り抜いた。
「おっと」
マーダはその剣筋を見切り半歩後方へ下がることでラルカの一閃を躱した。
「...私の剣を躱すか」
「おいおい、いきなり何すんだよ」
「貴様の首を落とす、当然だろう? ...暗殺ギルド幹部這い寄る影!」
「...ったく、だから嫌だったんだよ。大体、ブラウちゃんはどうして俺の身元を知ってのかね?」
「はぁ、申し訳ありません。私はギルドマスターの方から知らされていたにです。てっきりラルカさんも知ってるものだと思っていました」
「な、何!? 団長はそのような事一言も言っていなかったぞ」
「...こうなることがわかってたんだろうな」
「...そのようですね」
「純粋無垢の正義は伊達じゃないな...」
「む、その呼ばれ方はあまり好かない。そして...」
ラルカはしばらく逡巡する。
そして、考えがまとまったのかマーダを見た。
「...いくら緊急であっても暗殺ギルドの力を借りることに納得はできない。だが、貴様の動きを見て今殺し合うのは得策ではない」
「俺も同意見だ。一応依頼を受けた身だからな」
「はぁ、納得はしないが妥協はする必要がありそうだな」
そして、ラルカは抜いていた剣を鞘に収めた。
「では、行きましょうか」
纏まった様子を見たブラウが声をかけてた。
そして、周囲を見渡すと...
「あら?...ロートがいない?」
そして、ブラウが周囲を見て居ると手に幾つもの食べ物を抱えたロートが歩いて来た。
「あ、終わった?」
「...それは?」
「これ? ラル姉の話が長くなるなー、って思ったから買って来た」
「はぁ、あまりに静かだったのはそういう訳でしたか」
「で、もう行ける?」
「ええ、行きますよ」
「ロートちゃん、悪かったな」
「すまない...」
「いいよいいよ。じゃ、行こっか」
ロートの掛け声を先頭に四人は目的地であるダンジョンへ向かった。




